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一世さんのお家に入ると 幸子さんと美子さんが走って来た。
私がビックリしてると二人が
「ごめんなさい!!あのバカに自覚がないものだから
春湖ちゃんを巻き込んでしまって 仕事も休ませて…有休扱いにするから安心してね。」
かわるがわるに二人に体を揺すぶられて
私はフラフラになった。
「今日はそのお詫びといったらなんだけど 食べて!!
食べてたくさん!!」
テーブルに並べられた豪華な食事に私は驚いた。
「ほら 食べなさい!!」双子の息の合った言葉の掛け具合がすごかった。
「ありがとうございます~」
私は遠慮なくいただくことにした。
その間も幸子さんと美子さんと一世さんは 光太郎の話に盛り上がっていた。
「あの子ならほんと…心配でたまらないわ……。」
三人が声を揃えて言うけど
「そうなんですか?私には大人にしか見えないですけど?」
「それはね~春湖ちゃんの前ではカッコつけてんのよ。
大事な人に愛想つかれるくらいだもん……。あの子も少しは懲りたかと思ったけど
やっぱり自覚がないのよね……。あんなイケメンとかもてはやされてるけど
ホントのあの子を知ってたら笑っちゃうわよ。」
幸子さんが言った。
「光太郎さんの恋人ってどんな人だったんですか?」
とても興味があった。
光太郎は多くは語らずに 自分の傷と私の傷を癒したあの夜を思い出した。
「香澄ちゃんのこと?」
美子さんが言った。
「香澄ちゃんってね…私この前からずっと思ってたんだけどね……」
三人が口を揃えて言った。
「春湖ちゃんに似てる!!!」
そして口ぐちに
「やっぱり~~」とか「そうでしょう~」とか
三人のチームワークの良さを感じてしまう。
「あの子がもしも…春湖ちゃんによからぬことしたらヤキ入れないとね。」
「もしかしてもう……されてないわよね?」
三人に顔を覗き込まれて私は動揺した。
「そんなこと…ないですよ……。」
「あ~それにね~あの子ったら春湖ちゃんの好きな人に暴力振るったのよ!!」
双子は同時に
「うっそ~~~!?」と叫んだ。
「やっぱり自覚ないわ……。大問題になるでしょ普通……。
あの子にはやっぱり香澄ちゃんがいないとダメね。安心できないもの……。」
「三人とも…光太郎さんが可愛くて仕方ないんですね。」
私にはきょうだいがいないからうらやましくなった。
「心配なのよ~~いい年して~~~」
三人はそう言いながらも微笑んでいた。