016
雪が積もらないクリスマスを過ごすのはひさしぶりだった。
まーくんは23日から出張で26日に戻ってくると言ったから
私たちは27日の日会う事になった。
「クリスマスなのに出張とかひどいから~」
「な?そう思うだろう。」まーくんが笑った。
「正月も悪いけど実家に帰らないと……両親も年だしね。」
そっか・・・仕方ないよね……
だから会う時間はもう一日になっていた。
「俺にプレゼントはいらないから…ご両親のすねをかかじってるんだから」
「ありがとう。」
熱いキスは唇がとろけそうだった。
そして離れがたい唇を離して まーくんは出張に出かけていった。
「あ~~~~ぁぁ~~」私は天井を見ながら雄たけびをあげる。
「今年も一人のクリスマスだったわね。」ママの意地悪な言葉
「ほっといてよ~」
クリスマスは27日には会えるんだから。
まーくんからメールが届いた。
『今回は大事な会議だからメールはできなくなるから
帰ってくるまで我慢してね。』
メールもできないの?
なんかさ…そんなこと何にも言ってなかったくせして
また不信感が増えた。
まーくんのことって若い時の武勇伝とかは聞いたけど
実家は千葉にあるとか……
第一 こんな暮れにまで働かすんだからひどい塾よね……。
あり得るけど………うちの塾ならね……。
まーくんのプレゼントは手作りのマスコットにして 会えない間に集中して
作り上げようと思っていた。
これならお金もかからないし……
そして今度こそ・・・・
まーくんのお部屋に招待してもらえるんだ~~。
部屋にはまだ一度も行ったことがなかった。
「汚いんだって~~~春湖見たら ガッカリするから~」
「じゃあ片付けてあげるよ。」
「そんな…生徒でもある子にそんなことさせらんないよ。」
まーくんはそう言って笑った。
「クリスマスは部屋でやりたいな~」
私が言うと
少し困った顔で
「状況にもよるけどね……。」と言った。
少しは女らしいとこも見せてあげたいし……私はまーくんが帰ってくるのを
心待ちにして……ひとりぼっちのクリスマスを過ごしていた。
恒例の我家のクリスマスは 秋杜の家での開催だった。
毎年順番に会場を回る。
ママの料理を手伝って 秋杜の家に運ぶ。
秋杜の家を出てくる時に 数人の女の子のグループが立っていた。
出てきた私に驚いた顔で頭を下げて
「秋杜くんに…渡して下さい。」
そう言って私の目の前に キレイな色の和紙に包まれた
プレゼントを手渡そうとした。
「え?直接渡したら?」私が言うと女の子は少し困った顔をして
「きっと受け取ってくれないから…お願いします。」
その時 秋杜が玄関のドアを開けて
「春湖」と呼んだ。
女の子たちはキャ~と黄色い歓声をあげた。
「ああ…秋杜 お友達だよ。」私が言うとめっちゃめちゃ
不機嫌そうに出てきた。
その様子に私はまるで自分のことのようにハラハラした。
「あ…これ…」女の子がプレゼントを差し出した。
きっと今心臓ばくばくなんだろうな~~新鮮だわ~~
「いらない。」
「え……」一気に女の子の顔が曇った。
「学校でくれた子たちにも断ったから……もらえない。」
淡々と冷たい口調でそう言った。
「春湖 かあさんが呼んでる。」
「あ…はい……。」
今にも泣き出しそうな女の子が痛かった。
秋杜は私を玄関に押し込みドアを閉めた。
可哀そうじゃん・・・・
「秋杜…あれはないわ……」私はまだ冷たい顔をした秋杜に言った。
「もらえないよ。気持ちのはいったもん。
俺はだれも好きにならんいし・・・・悪いだろう。
もらうだけもらって……どうせゴミになるんだ。」
「うわ・・・そう言うタイプひくわ~~今頃泣いてるよ……。」
私は玄関の穴から外を見ようとした。
その時 秋杜に阻止されてドアの壁に追いやられた。
「俺が欲しいのは 春湖からのだけだから……」
真剣な目にまたいけない鼓動が早くなる。
「やらないよ…何言ってんの……」わざと動揺をかくすためにそう言った。
小学生の秋杜はもう私をはるかに越して 170センチにはなっていた。
「春湖のくれるものしかいらないから…また外に出て頼まれても
いらないって言えよ。」
ドキドキドキ……
そんな真剣な目でそんなこというの…やめてよ……
もう…ときめく自分を軽蔑してるんだから……
「恋する女の子の気持ち…わかってないのね……」
心を見透かされないように私も必死の防護をはっている。
「そんなことしらねーよ。
俺が興味あるとしたら 春湖しかいないし……。」
「あのね……秋杜……
私今 すごく好きな人がいて…その人とつき合ってるんだよ。」
思いきって…秋杜に伝えた。
秋杜にときめく自分の心にも決着をつけたくて……。