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ネットの情報は恐ろしかった。
ユーザーがみんな記者のようになってルイトと熱愛してる女のことを
いろんなサイトで立ち上げていた。
嘘ばっかりだけど
そんな中
『噂の女は同棲中 相手は高校生』というのを見つけた。
俺の体はゾクゾクと悪寒が走った。
いつも見ている朝の番組の中で 新しいCMの発表会に出ている
ルイトが記者から質問攻めにあっていた。
最初はクールにだんまりを決め込んでいたけど
『お相手の女性は他にもおつきあいされてる方がいらっしゃるとか…』
レポーターが一斉にマイクをルイトに向けると
「今回のことはほとんどが嘘です。騒ぎを拡大したくないから黙ってたけど
彼女を傷つけるような報道は許せない。
俺の自覚のないせいで今回全く関係ない彼女を巻き込んでる。
関係ない人間を巻き込まないでくれ。
これ以上彼女を傷つけるなら 俺も黙っていられないから
あなたたちも俺の今言ったことちゃんと報道してください。以上!!」
颯爽と去る後ろ姿が男の俺から見てもかっこよかった。
女性アナウンサーが
「カッコいい!!!これでまたルイトさんに人気があがりますね~」と絶賛した。
勝ち目ないくらいカッコいい
あいつ春湖を好きなんだ。
あの時喧嘩になって すぐにわかった。
この男は春湖を愛してる
ガキの俺にも
ビンビンと伝わって来たから・・・・・
あれがまさに この男だなんて……
だけどそれを想像するたびに ルイトがめちゃくちゃ大人で俺に持ってないもの
たくさん持ってても……
春湖をこいつに取られるのは絶対に絶対に嫌だ。
嫉妬心は燃え上がり 自分がどれだけ春湖を愛しているのかを
これでもか!!と思い知る。
「ごめんね……秋杜にももしかしたら迷惑かけるかもしれない……」
後で春湖の声がした。
「どうしよう……。秋杜…まだ学生なのに……
ここまで踏み込んでこられたら……どうしよう……。」
春湖が泣きだした。
「俺のこと心配してんのか?」
「だって……もうきっと全部ばれてんのよ……。
ここのことも私の顔も秋杜の顔も……どうしよう……。
秋杜に何かあって…巻き込まれたら…全部私のせい……。
どうしよう……。」
俺は思わず立ち上がって 取り乱す春湖を抱きしめた。
「俺なら大丈夫だって・・・・。
ここに踏み込んできたら……俺がおまえを守ってやる。
おまえは俺のものだって……日本中に叫んでやる!!!」
「え・・・・?」
「想像しただけで頭がおかしくなる。
誰かがおまえを傷つけて泣かせるのは耐えられない。
俺だって…俺だって…
ガキだって……好きな女一人くらい
命かけて守ってやる!!!」
今まで鬱積していたものが熱く燃え上がり溶岩のように流れ出した。
「秋杜…?」
「どこにも行くな……。おまえはずっと俺のそばにいろ……。
俺が卒業したら…まだまだ養える力はないけど……
結婚してほしい……。」
「秋杜~~ぉぉ……。」
俺を見上げる春湖の目から滴が落ちて行く……。
「もう…カッコつけるのやめた……。
俺は…おまえがいて…初めて一人前になるんだ……。
おまえを失ったら……生きていけない…俺が俺でなくなるから。」
「じゃあ…ここ出て行かなくていい?」
春湖の嗚咽が可愛い
「ずっと一緒にいよう…。
俺のそばにいて……。俺だけ見てて……。」
「秋杜ぉ………」
俺は力一杯春湖を抱きしめてそしてひさしぶりに
唇を重ね合わせた。
隔てていた時間を埋めるように 俺たちのキスは熱く甘くそして
涙のしょっぱい味がした。
俺が俺でいる……春湖がいないと始まらない……
愛してる
誰に奪われたくない
それだけの思いが 俺の壁を押し破って春湖を抱きしめている。
もう絶対 離さない………。
触れ合う唇の潤った音が 部屋に響き渡る。