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部屋カーテンをすっかりひいて 薄暗い部屋でどれだけジッとしてただろう。
「ガシャッ」
玄関が開く音がして私はとうとう秋杜に話さなければ行けないと思った。
「どうした?」私の様子に秋杜は思わず声をかけたようだった。
「あ…」なんて言いだそう
「仕事…行ったよな?」
「うん……しばらく休みになった。」
「は?」牛乳をマグカップに入れる手が止まった。
「……ルイトって知ってる?」
「知ってるよ 今日学校でも持ち切りだったそいつの話。」
ひさしぶりに会話してる私たち……。
「おまえも前画面に抱きついてたけど ファンか?」
あの時…そう辛くてルイトのアップに抱きついたんだ。
ファンかって言葉に絶対嫉妬してる秋杜……
それがすごく嬉しかった。
それなのに私がこれから話す言葉を秋杜はどうとるんだろう。
「あの噂の本人は……私なの……。」
「は?」
「あのね…この間秋杜を殴ったのは……ルイトなの……。」
「あ?」
私は心臓が口から出そうになった。
「ルイトって……クラスの女が言ってたただじゃおかねー女って……
おまえのこと?」
「でも嘘ばっかなの……。」
秋杜の顔付きが変わっていた。
怒ってる……
普段だったらすごくすごくヤキモチが嬉しいのに
今日はイヤな汗を背中にかいている。
「あいつ……ルイトなんだ……
っていうことは俺は芸能人に殴られたんだ?」
秋杜は止まっていた手を動かしてやっと牛乳を飲みほした。
「いいんじゃね?あいついい男だし大人だし……
春湖を幸せにしてくれるよな。
だいたい芸能人だし…夢みたいじゃん。
そ…あそ……いいじゃんいいじゃん~」
秋杜の適当な言葉にだんだんイライラしてきた。
「何よ…なんでそんなに情けないのよ!!
何で話しを聞こうとしないの?
嘘ばっかりって言ったよね。どうでもいいの?」
秋杜はしばらく黙っていたけど
「どーでもいいよ。
あいつなら俺には全く勝ち目ないし……
春湖のためにはあいつの方が絶対いいだろう。」
秋杜はカバンを持って 歩き出したから私はその後を追い掛けて
腕を捕まえた。
「それでいいの?
私が他の男のものになってもいいの?
あんたの…私への想いって…そんな簡単だったの?」
「あいつ…マジだった……。
悔しいけどめっちゃ似合いだろ…?」
私は何かを考える前に 思いっきり秋杜の頬めがけて
手を振り上げた。
「バシ~~~ン」いい音が部屋に響き渡った。
「サイテー!!あんたみたいなへたれ男
こっちからバイバイよ。
あんたなんて 早く萌のとこ行っちゃえばいいのよ!!」
私はひさしぶりに頭に来て
悔し涙でその場にあった雑誌を床にたたきつけた。
「サイテーなんで…あんたみたいなの好きなんだろう!!
情けなくて…自分が嫌いになる!!
もう絶対許さないから!!」
私の怒りは頂点になって 爆発した。