015
「秋杜~」ドアを細く開けると部屋は街路灯の灯りが窓から見えた。
「生きてるの?」
近づいて額を触るとさっきよりは 熱くなかった。
「秋杜く~~ん 生きてますか?大丈夫ですか?」
耳元で少し大きな声で言った。
「…っせなー……ってか おまえ何しに来たのよ?」
布団をかぶりなおして秋杜が背中を向けた。
「見舞だよ。」
「いらねーよ… ただの風邪なんだから……。
おまえどっかに泊まるんじゃなかったのか?」
「さっきから…おまえってさ……私はおねえさんだよ?
あんたより 5年も早くいろんな経験をつんでる お、ね、え、さ、ん、わかる?」
わざとにゆっくり言ってやった。
「好きで遅くうまれたんじゃねーや……。」
口を返せるようになっているということは
だいぶ元気になったと 少し安心した。
「アイス買ってきたの。
傲慢ちき王子が大好きな 高~~くてちっこい濃厚なバニラアイス~~」
秋杜はしばらくおとなしくしていたが
突然 手を伸ばした。
「食べるの?」
「せっかく買ってきてくれたんだから…もらう……。」
私はスプーンを袋から出せてアイスを秋杜の額に乗せた。
「つめ・・・てぇ・・・」
秋杜は 体を起こして頭をボサボサとかいた。
「ごはん用意してあるみたいだけど食べる?
もってくるけど…?」
「いらねーアイスでいい~~」
秋杜はアイスを 口に入れて思わず笑顔になった。
「まだまだお子ちゃまだね~~秋杜は~~。」
なんだか癒されて言葉が出た。
「うっせーしゃべんな。」秋杜に睨みつけられて ドキン と音が鳴った。
ほら…ほら…やっぱ私の中にあるんだ……
お子ちゃま秋杜を男として意識してるとこ……
私は異常なのかな……
本気で暗くなった。
秋杜の冷たい目が好き……
クソ生意気で 小憎らしくて 許せないんだけど……
秋杜が私を睨みつける目に ちょっと興奮するのは……
私~~~大丈夫なの?????
アイスを食べ終わって 秋杜はゴミを私に投げてよこした。
「ゴミ箱 あるでしょう?
そういうとこがいつまでも甘えっ子のマザコンって言われんだから~
私は由美ちゃんじゃないし~~あんたのそう言うとこ付き合えません~~」
カップをまた手に握らせた。
「ケチくせーよな~~」
秋杜はゴミ箱にカップを投げて またベットのもぐりこんだ。
「おまえ出かけないの?」秋杜が背中を向けていった。
私は濃厚なイチゴ味に舌鼓していたのに さっきの
まーくんの不審さを思い出して ちょっと暗くなった。
「あんたが心配だから帰って来たのよ。」
「恩着せがましいな~。俺は一人でいいって言っただろ?」
小学生とは思えない大人びた顔で 秋杜は私を見た。
春湖 ガキ相手に ときめくなよ~~~ぉ~~
「ま…まったく……可愛くない王子さまだこと~~」
アイスは私の口の中を通って ちょっと鼓動の激しくなった胸を
心地よく冷やしてくれた。