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「終わっちゃった……。」
「痩せ我慢して…行かないでってすがればよかったのに……」
「そういうとこだけは見せたくなかったんだもん……
それが怖くてずっと素直になれなかった。」
光太郎は吸っていたタバコを私の口に持ってきて
「特別だぞ。できればタバコは吸うな。
体に悪いからな~」
私は少し戸惑ったけど さっきまで光太郎がすっていたフィルターに口をつける。
「フーーー」臭い煙を吐いた。
「美味しくない……どうしてタバコなんて好きになるんだろ。」
私はせき込みながら言った。
「なくてはならない…かけがえのないものなんだな~」
光太郎はそのタバコをまた吸った。
「なくてはならない…かけがえのないもの……か……」
私は秋杜を想っていた。
「明日 ドライブにでも行くか?
いっちゃんファミリーと日帰り温泉予定してたんだ。
春湖も行こう。」
「うん!!」
光太郎は優しく笑った。
「ずっと会いたかったの……。また光太郎に救ってもらった……。」
「いいタイミングで現れたってことか~」
「CMめっちゃカッコよくて ちょうどそのころ落ちこんでたから
画面に抱きつきたくなった。」
「よかった春湖には好評だったんだ。
姉貴たちには かっこつけんなよとかメール来てたんだけど。」
「あはは・・・厳しいね~~
光太郎はこんなに優しくてかっこいいのに~~」
「だろ~~あいつらわかってないんだ~」
「よかった…ここに来て……
大好きな一世さんに聞いてもらって…それに光太郎にも会えた……。
クリスマスからついてる?」
「ついてるっていうのか?」
「言わない言わない~~」
おかしくて笑った。
窓の外を見る。
雪はやんだけど また外が銀世界になっていた。
「春にならないね……寒い~~~」
慌ててストーブの前に座った。
私の体を後から挟むようにして光太郎が毛布を二人にかけた。
「うふふ……あったか~い~」
私は体を光太郎に預けて目を閉じた。
涙がスーッと流れ落ちる………。
「素直にならんと……春湖の人生なんだぞ……
格好つけて取り繕ったって……本当にそれでいいのか?
泣いてすがってほしいって…思うことだってあるんだ……
そこで自分への愛情を計ったりするもんだぞ。
男ってバカだからさ~」
耳元で低く囁く甘い声にまた涙が出た。
「男って面倒くさいね……。」
「春湖の彼はまだ高校生だしな~~勉強あるのみだな……」
あたたかかった……
「また救世主に救われた……」
「俺も会えてよかったよ……こんなに泣いてる奴一人にしてなくて~
明日中には…元気になれよ…救世主は帰るからな~」
「はい努力します。」
光太郎が強く抱きしめてくれた……。




