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「どうしたの!?こんな雪だらけになって何かあったの!?」
一世さんが大声をあげた。
「一世さん……私…私……」
私は一世さんの胸に飛び込んだ。
「ちょっと…春湖ちゃん!?どうしたの!?」
しばらく一世さんの胸の中で泣いて……そしてやっと落ち着いた。
「ごめんなさい…突然来て…どうしても…一人でいたくなくて……。」
「あがりなさい…ゆっくりしていけるでしょ?」
「ごめんなさい…一世さんに会いたくなったの……。」
「わかったわかった…もう子供たちは寝たし…今日はね…
明日はパパもお休みだし…お客さんも来てるけど
話しはゆっくり聞くよ~」
一世さんはニッコリ笑った。
「こんなに冷えて…ほら…中で心配してるから……
春湖ちゃんの泣き声に…何度も出たり入ったりして……」
「でも…お客様って…ごめんなさい突然に……」
「いいの~たいした客じゃないから~~
家の鍵忘れて泊まるとこなくて…まったくいつまでも手がやけるヤツだから~」
一世さんがハンカチで涙を拭いてくれた。
「春湖ちゃんがとことん飲みたい気分だったら飲むよ~~
やっとおっぱいも解放されたし~~パパも客も結構できあがってるし~」
一世さんが私の手を引いて家の中にひっぱってくれた。
「課長~~すみません…私ったら…本当に…
図々しくて…ヒック…」思わずしゃくりあげてしまった。
「春湖ちゃん……可哀そうに……何があったんだ?
そんなに泣いて……。」
私はソファーに座らせられた。
「ほら~まだ~~?」一世さんの声
キッチンから現れたのは…会いたいって思っていた光太郎だった。
「あ・・・・・・」
「あ…って…目が落ちそうだぞ……。
ほら…まずはあったかいココア飲みなさい……。」
ピンク色のマグカップが眩しかった。
光太郎を見上げて また涙が零れ落ちた。
「ちょ・・・あんた…まさか春湖ちゃんに何かした?」
「してないよ……」光太郎が慌てた。
「違うんです…CMを思い出して……
あの優しい台詞にいつも話しかけてたから…感動しちゃって…」
私も慌てた。
「いいだろ?あの台詞~」
「私たちはあんたの顔が出てきたらテレビ消しちゃうの。
だって本物を知ってるから…笑っちゃうんだもん~」
「ひどくね?」
三人が笑ったから私もつられて大笑いした。
涙だけは流れているけど……。
課長と一世さんがキッチンで何かを始めた。
「春湖ちゃん お腹すいてないの?」
さっき食べそこなった……
「すいてます……。」
「ちょっと待っててね~今 簡単になんか作るから
光太郎その間 春湖ちゃんよろしくね。」
すかさず光太郎の指が私の涙を拭きあげて
私は驚いた。
「また…泣いてる……。
おまえ……俺んとこ……来いよ……。」
そう言うと二人が背を向けている間に私を抱きしめた。