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家に帰ると秋杜はリビングのソファーで難しそうな本を読んでいた。

頑張れの声のかけ方の本だった。



「ただいま。」



「おかえり。」



いつものように短い挨拶。


シチューとお惣菜のザンギが置いてあった。



「ありがとう。」



「うん。」



しんと静まり返った家は息苦しかった。



私は萌のことを言った方がいいのか迷っていた。


もし言っても秋杜が私を選べばそれでいいし……

だけど…そうじゃなかったらという一抹の不安が私の心にはあった。




知らない振りしたらいいのよ

秋杜にちゃんと教えないと……



その二つの言葉の間で私はさまよっていた。




  これでいいの?それが秋杜のために本当にいいの?



自問自答が続いているけどまだ答えはでない。



秋杜が大きなため息をついた。



テレビにルイトのCMが写って なんとも複雑な気分だけど……



「萌ちゃん…具合どうなの?」思い切って聞いてみた。




「あ…うん頑張ってるよ……。」



「そっか…偉いね…。」



「俺のまえで多分ムリしてるのかなって思うけど…」



そうだろうね…あの子はきっと無理してる。

どっちかといえば嫌いだったけど 今日話してみて

萌はそんなに悪いこじゃないことがわかった。



  お人よしだね……



「その本って・・・・」



「あ…萌に何か言ってあげられる言葉がないかなって

少しでも前向きになってくれそうな…力の湧く言葉がないかなって思ってさ。」




「そっか……」



萌が明日いなくなるって知ったらどうなるのかな




またルイトのアップと目があった。



  光太郎はどう思う?



痛烈に会いたいって思った。

私はどうしたらいい?




「おやすみ。」秋杜が立ち上がった。



  明日目が覚めて 病院に行ったらもういないよ



  うちらを引き裂くものは何もなくなるんだよ



  そしたらたくさんキスしてくれる?



  愛してるって言ってくれるよね?





でも……心が痛かった……。

知らなきゃよかった……。



もしかしたら私に萌が先に言ったのは 謝りたいとかそれもあったけど

私がどうするのか…面白がってたりする?



こうして動揺することを予想して?



いや…そんな悪い子だって…もう思わないでおこう……

あの子には時間がないんだもん



その中で…一緒にいてほしいと願った秋杜と別れようとしてる……

私は同情してもいいはず……

同情しないと人間じゃないよ……

私はそんな鬼になりたくない……。




「秋杜・・・話しがあるの・・・。」



階段を半分登りかけた秋杜を呼びとめた。




  もうこれから先は……秋杜にまかせよう……



失いたくないから……人間らしい心を………。




秋杜が階段を降りてきて 心臓がドキドキしてきた。



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