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秋杜が萌のそばにいることで
私と秋杜の間に距離ができた。
秋杜がそうしてる気がして 秋杜の辛さを感じて私も辛くなった。
愛し合ってるのに……
今は 秋杜にとって愛は邪魔なのかもしれない。
お正月を過ごすのに 何もしらない両親がやってきて 家は一気に明るくなった。
私の両親もひさしぶりに帰ってきて
いつもの正月がやってきた。
「秋杜~~ちゃんとやってるか?」尚ちゃんが言った。
秋杜は少しうつむきながら
「やってるよ。」と言った。
「春湖に迷惑かけてないでしょうね」由美ちゃん
「……それは…わかんない……」秋杜とひさしぶりに目があった。
「この様子なら二人の間に進展ななさそうだな~」みんなが爆笑して
私もどんな顔をしていいのか困惑気味だった。
「じゃあ俺ちょっと出てくるから~」
秋杜がジャンバーをはおった。
「あら こんな一家団欒にあんたどこに行くの?
昨日も遅かったわよね。」由美ちゃんが怒ったように言った。
「ごめん~ちょっと出てくるよ。」
秋杜は足早に家を出て行った。
「何なのあの子……
春湖も扱いづらいでしょう……ああいう性格だから……」
「そんなことないよ……」
私は必死の笑顔で答える。
いってらっしゃい……早く帰ってきてね…
そう語りかける。
萌に会いに行く背中にしがみつきたい衝動にかられる。
冬休みになって 多分一日二回は こうして秋杜は出て行っている。
萌に会いに行けば行くほど 秋杜は無口になって
距離を広げて行く。
信じよう……私を愛してるっていった……
悲しいけど…そしてその期限の終わりは萌の命の期限
そう考えると複雑だった。
正月が終わって 両親たちが帰ったことで一気に寂しくて孤独な空間に変わった。
そんな日々が続いている頃だった。
何気にかけていたテレビのCMに ルイトが写っていた。
あ……光太郎……
テレビの画面一杯に映し出された ルイトは
「泣くなよ……」と囁いていた。
私はその言葉に想いが爆発して
涙が出てきた。
「俺んとこ……来いよ……。」ルイトが手を差し伸べる。
男性用のコロンのCMで最後にルイトが女性を抱きしめてセクシーに笑う。
「いいタイミングで……また助けられるのね……。」
私はそのCMが頻繁に流れるたび 光太郎に救われるような気がした。
幸せ?光太郎・・・・・・
画面のルイトに語りかける……
私…?ちょっとキツイかな……
でもあの日の出来事は間違いなく私を しっかりさせてくれている。
ありがとう…お互い頑張ろうね……。
画面の光太郎に語りかけては 孤独感に押しつぶされそうになっていった。
学校が始まって秋杜は学校帰りまっすぐ 病院に行って
帰ってくるのは9時を過ぎていた。
それから勉強を始めて……秋杜の疲労もピークに達していた。
だけど私はそれを見守るしかない……。
多分 今 秋杜にとっての私は辛いだけの存在だから……
夜中 目を覚ますとリビングに明かりがついていた。
恐る恐る入っていくとダイニングでうたた寝してる秋杜がいた。
私は二階から毛布を持ってきて
秋杜の背中にかけようとしたけど
静かに背中から自分が抱きついた。
ひさしぶりに感じる秋杜の体温……。
「疲れてるのね……何もしてあげられなくて…ごめんね……。
大好きよ秋杜……。自分がもどかしい……。
萌ちゃんは…秋杜のためにいろんなことしてあげれたのに
私は…秋杜のために何もしてあげられないから……私の存在自体が
秋杜を苦しめてるようで……ごめんね……秋杜……。」
秋杜の頬に唇が触れる。
愛おしくて…可愛くて……このまま食べてしまいたいと思った。
「ん・・・・・・」秋杜が唸って慌てて体を離して毛布をかけた。
そして悲しくなった。
「こんなことしか…できなくてごめんね……」
情けなくて涙が溢れた。