014
後ろ髪を引かれる思いだった正直なとこ……。
まーくんの車に乗り込み 大好きなまーくんといても……
秋杜のことが気になっていた。
私がいたって熱なんか下がんないし
そう何度となく言い聞かせても 今頃どうしているかなって
頭の中でよぎってしまう。
食事の後の 車の中でまーくんが口を開いた。
「なんかあったのか?浮かない顔してるよ。」
「あ…ああごめんなさい。ちょっと知りあいの子が熱だしていて
実はそこの家の親に頼まれてたから……だけど…めっちゃ生意気だから…
かなり熱があったんだけど…置いてきたの。」
思わず正直に言ってしまった。
「そうなんだ……。あれじゃあ…帰ろうか?」
まーくんの言葉に動揺する。
「やだ…帰りたくないのに……だって今日は二人で朝を…迎える…」
そう言いかけて頬をおさえた。
「何も…今日しかないってこともないし…またきっとあるよ……」
「だって……」
どうしていいかわからずに動揺する私は
思わず泣いてしまった。
「今日…ヒック…たのし…ヒックにしてたのに……
お風呂入って…ヒック…たくさん洗って……ヒック……」
「今日はめっちゃいい匂いするから…シャンプーかな?」
そう言うと私のイスを倒した。
「キャ……」突然イスが倒れて私は驚いたけど まーくんが覆いかぶさってきて
心臓が破裂しそうになった。
「めっちゃ…可愛いよ……」そう言うといつもより甘いキスが私を酔わす……。
「ン~……」思わず声が出てしまった。
「春湖…めっちゃ可愛い……」まーくんはそう言いながら私の耳たぶを噛んだ。
「シャンプーの香り…いい……」体中が心臓のようになっていた。
しばらく熱くて甘いキスをしてたら今度は大好きな
キレイな指が動きだして私のブラウスのボタンを外しだした。
キスしながら外せるんだ……
おかしな感心をしている私……
「今夜はここまで進んだら……送っていくから…」少し荒い息をしながら……
まーくんの指は私のブラを外そうとしていた。
バクン…バクン…胸が鳴る……心臓が飛び出しそうだった。
その時だった まーくんの携帯電話が鳴りだした。
まーくんの大好きなアーティストの曲
一瞬 手がとまってまーくんが体を離した。
「ちょっと…悪い……」そう言うと携帯を持って車から離れてしまった。
私はボーっとしながら……呆気にとられていたけど
電話が長いから イスを起こして身支度を整えた。
バックミラーから見えたのはちょっと向こう側の横顔
少し窓を開けてみた。
「あはは・・・」いつもの笑顔で笑うまーくん
なんだ…友達だったら…今 流せばいいのに……
これから起きようとしていた期待が崩れてしまって私はとてもガッカリしてしまった。
時折 聞こえてくるまーくんの笑い声や言葉のはしを聞きながら
秋杜…今頃どうしてるかな……
と考えていた。
気持ちも時間とともに冷めてしまって…とりあえずコンビニでアイスでも
買って 仕方ないから 秋杜にも買ってやろう……。
しばらくして神妙な顔つきでまーくんが戻ってきた。
「ごめん…ごめん…本部のお偉いさんから電話でさ……明日の打ち合わせだった……
こんな時にかけてこなくていいのにさ…
だけど俺…社会人だからさ……ごめんな……?」
いつもの優しい顔でそう言った。
本部?打ち合わせ?
そんな電話であんな風に笑うの?
横顔が優しそうだったけど……?
その時 初めて芽生えた不信感が胸をよぎった。
「じゃあ…帰ろうか……。」
やけにあっさり車を動かした。
さっきまであんなに 甘くて熱かったのに……
いつものまーくんに戻っていた。
ムカつく………
コンビニで買いものをして 家の近くの公園で車を停めた。
「また時間作るから・・・・。
クリスマスは悪いけど…出張って言ったよな。
帰って来てからゆっくり会おう。
プレゼント楽しみにしておいて……」
そう言うと私の頬にキスをしてドアを開けた。
ほっぺだけ?
別れ際には 熱いキスしてくれるのに……
ドアまで丁寧に開けられたら すぐに降りるしかないじゃん……
私が歩き出したら 車はすーっと走り出した。
まるで急いで帰るように……
「何よ・・・・。」
車は少し進んだところで停まっていた。
何してるんだろ……
しばらく影から見てると また まーくんが出てきて
タバコを吸いながら 携帯で話をしていた。
タバコ…吸うんだ……
雪がちらついてきた・・・・。
「寒い……」私は家に飛び込んだ。
靴を脱ぎながら なんかいや~な気持ちになっていた。