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秋杜の話しが終わって私は大きく息を吐いた。
「ごめん春湖……。俺が全部悪いんだ。」
秋杜の目から涙が零れ落ちた。
「やっと春湖と両想いになれたのに……これからもずっと一緒だって思ってたのに
俺のせいで…ごめん春湖に悲しい思いをさせて……
嘘重ねて……ごめん……。」
言葉が見つからない
なんて言ったらいいのか………。
でも正直に話してくれたことはうれしかった。
これ以上 嘘を言ったらもうダメだと思っていたから
秋杜に絶望しなくてよかった……。
秋杜は立ち上がって キッチンに向かって
食事の準備を始めた。
私はそのまま部屋に戻ってパジャマに着替える。
私が秋杜と距離を置くためにここを出て行った時
秋杜が傷ついていたのは予想できたことで
そんな秋杜を救ってくれた 萌には感謝しないといけない……
俺様すぎて回りから浮いてしまっているのではないかと心配していたから
秋杜の学校生活が楽しいと思えているなら
それはとても素敵なことだった。
私にとって萌は 許せない子だけど
秋杜にとっての萌は 大切な存在なのは……よくわかった。
そして何よりそんな萌をほっとけない 秋杜の優しさも嫌いじゃないけど……
それを認めてしまうときっと
秋杜が 私から離れて行ってしまうのは辛い……。
でも救われたのは 昨日の光太郎との出来事だった。
きっと昨日のことがなかったら私は かなり取り乱していたんじゃないだろうか
昨日のことで少し冷静にいられる自分にホッとしてる。
秋杜を裏切ったのかもしれない
だけど…こんなに秋杜を愛してて胸が一杯な自分を感じている。
昨日きっと一人で秋杜を待っていたら いつものように
いらないことを言って秋杜を傷つけて
そして取り返しのつかない結末を迎えたような気がするけど
光太郎のおかげで…心がちょっとだけ優しくなれた……。
後ろめたさのない行為は……私への薬だったのかもしれない。
「春湖 メシ食おう。」階段の下で秋杜の声
私は鏡を見て頬に気合いを入れた。
私は秋杜を愛してるから……
鏡の中の私は 悲しそうに笑っている。