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目覚めると萌が俺の顔を見ていた。
「ん・・・?」
「おはよう……ありがとう……。」
「ん………。」
「幸せだった……秋杜が一緒にいてくれて……。」
「それならよかった……。」
「彼女きっと怒ってるね……。」
「怒ってる……かな…悲しんでるかもしれない……。」
怒ってくれてた方がずっとましだよ。
春湖を泣かせるために…思いがつながったんじゃないはずだった。
「今日は帰っていいからね。」
「うん。」
しばらくボーっとしてると
時計はもう昼を回っていた。
萌は布団の中から俺を見ていた。
「じゃあ…帰るよ……。」
「不倫してる人ってこんな気持ちなんだろうな……。
好きな人を家に帰したくないって……。」
「不倫か……。」
「ありがとう二日間一緒にいてくれて
最高の誕生日とクリスマスになったよ……。
私 秋杜を責めることばっかり言ってごめんなさい。
嫌な女で…ごめんなさい……。」
「いいよ……。またあとで病院に顔を出すよ。」
「ほんと?」
萌の目が潤んだ。
萌の家を出ると真っ白な雪が眩しかった。
春湖は何してるだろう……。
今日また…俺は春湖を泣かすんだろうな……。
不倫してる男か……
違うよ…俺は春湖を愛してる。
でも…萌をつき放せない。
かあちゃんにビンタはられるだろうな~
春湖を泣かせて
かあちゃんの忠告ちゃんと聞かなかったから……こんなことになっちまった。
嘘ばっかついてきっと神様が罰を与えてくれたのかもしれない。
どうする・・・・?
もう決めた・・・・?
春湖が行くなって言ったら・・・・?
………萌を捨てられない………
家が近くなると心臓の音も大きくなった。
今日は夕飯…俺がつくろう……
昨日できなかったクリスマスを春湖と一緒に過ごそう
春湖を…泣かせるために
キスしたんじゃなかったのに……
春湖と別れるために想いをぶつけてきたんじゃないのに……
全て俺のせい………。
萌と一緒にいる
俺はそう決めたから……
部屋に入ると 春湖がバスタオルを巻いたまま立っていた。
愛しい女……
すぐにでも抱しめてキスしたいけど……
春湖は精一杯の笑顔で俺を迎えてくれた。
胸が痛む……
きっと一杯泣いたのに俺を笑顔で見つめる春湖
もう最後かもしれない……
そう思うと胸が一杯になって
何度も何度もこの場を逃げ出したい気持ちになった。
もう…嘘はつかない………
それがこの恋の終わりだとしても……
春湖にだけは…ちゃんと話しておこう………。
「萌のそばにいてやろうと思う。」
俺はたくさんの後悔で押しつぶされそうだった。