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萌の視線が逸れた間に 携帯の電源を入れてみた。
「ね~秋杜~」萌に話かけられて 慌てて携帯をポケットにしまった。
店を出て 車が走り出して少ししたら
「すっかり遅くなっちゃって…
本当に家の人に連絡してあるの?私ごあいさつするよ。」
萌の母親が言ったけど
「大丈夫です。ごちそうさまでした。」俺はいった。
家の前で車が停まった。
「今日はごめんなさいね。萌が迷惑かけちゃって。
ほら…萌 秋杜くんにお礼言いなさいよ。」
「・・・・・・」
「ん?萌?」母親が声をかけると
スーー・・・・スーー・・・・と萌の寝息
「あらら~寝てるの?お礼も言わないで……ごめんなさいね……。
この子…いつもあなたのことばっかり話してるのよ。
中学の頃からだったかしら・・・・
小学校の頃は病気がちでずいぶん休んでたんだけど
中学に行ったらあの一回だけの入院で…済んだから…本当にうれしかったわ。」
「病気がちだったんですか?
たくましいから意外です。」
「そうでしょう?ほんと中学からここに来たんだけど成功だった。
秋杜くんに出会えてから ほんと生き生きしてるから 本当によかったわ。」
「今日は大丈夫だったんですか?」
「なんとかね……でも多分…あんまり調子は良くないのかもしれないわ。
最近疲れやすいみたいだし……」
母親はブツブツ言った。
「あら…ごめんなさい秋杜くん。」
「はいじゃあおやすみなさい。
萌によろしくお伝えください。」
俺はそう言って車を離れた。
萌の車は暗闇に消えて行って俺は 春湖になんて言おうかと考えて
なかなか家の中に入れなかった。
一度…萌を春湖に会わせて ちゃんと話そう……。
俺の友達だから……って………。
玄関のドアが重く感じた。