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うちでも大きな事が起きた。
「じいちゃんが倒れた!?」俺は朝電話で 叩き起こされて
祖父の家に向かった。
途中何度も電話をかけて 祖父の状況を聞いていた。
祖父は会社をやっていていずれは父もそこを継ぐことにはなってたけど
祖父がまだ若いことと どうしても都会で暮らしたいという父との間で
いろいろあって実家を飛び出して 先に就職が決まっていた
春父のところに転がりこんだらしい。
しばらくして 同業の仕事を見つけて
お互いの彼女を呼んで 俺んちと春湖のうちと仲良く暮らしていたと……。
病院につくと思ったより 祖父は元気そうだったが
マヒが残ってるようで仕事の復帰は時間がかかりそうだった。
それからあっという間に 父は家業を継ぐ決心をして
「秋杜はどうする?」と聞いた。
「俺はここに残りたい。」やっと春湖に近づいたから離れたくなかったし
必死で入った高校で三年間なんとかやっていきたかった。
「かあちゃん…経理の仕事してもらいたいんだ。
連れて行っていいか……?」
「かあちゃんはダメだ。」俺は母だけは譲れない。
しばらくいろいろ話合って そしたら母が立ちあがった。
「春湖!!春湖がいるじゃん!!」
「春湖?」父が目を丸くした。
「ここに春湖を住まわせるのよ。あの子も一人で大変そうだし
ここで秋杜といればお互い健康管理もできるし……
秋杜だって……ホラ…嬉しいでしょう~~」
母がにやにやと俺を覗き込む。
「春湖が来るわけないっしょ~」平静をたもつ俺もさすがににやけた。
「そうだな!!春湖に頼もう。」
そんな簡単に行くわけないだろ~
次の日 学校から帰ってくると母が
「春湖には少し大げさに嘘ついたから あんたもそれに合わせなさいよ。
秋杜は自分のことはちゃんとできるんだから とりあえず春湖をここに
連れてこれたら負担かけないように助け合うのよ。」
「なんの嘘ついたんだよ。」
「秋杜が朝 起きれないって大げさに言ったの。」
「マジで?ありえないだろ~~」
「大げさに言いすぎたから…来てくれるみたい。
なんだかんだ言ったって春湖もあんたをほっとけないからね。」
「俺 しらねーよ……」
「ここに呼びつける口実なんだからうまく合わせてよ。
引越してきたら 春湖に負担かけないでよ。」
夢みたいだった。
春湖がここに住んで 一緒の時間を共有し合える……。
母の嘘つきに感謝した。
「もしも…もしも…願いが叶っても…節度を持ってよ。
……秋杜を応援はしてるけど……難しいとは思うけどね……。」
母は俺の背中を思いっきり叩いて
「いつまでも優柔不断なことしてんじゃないよ!!
あんたが生まれた時から 春湖を好きだったってこんな長い片想いを
おかあさん応援してきたんだからね。しっかりしなさいよ。」
わかってるって…感謝してるって…
「うっせーよ。」素直に慣れないけど…素直に笑えた。