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「あ~きと~~」
向こう側から ギャルがやってきて俺に声をかけた。
「え?」なんで俺の名前知ってんだ?
「どちらさま?」俺は無表情で聞いた。
「キャハハ~~」甲高い声で笑うと
「私~~萌だよん~~」と言った。
「萌!?」
萌とは思えない目の周りは真っ黒で つけまつげが怖いくらいバサバサしてる。
「時間かかった~~ずっと前から練習してたの~~
雑誌買ったりして…絶対合格したらはじけたいなって思って~
私ってわかんないでしょ?」
「全然わかんねーって言うか…違う人……」
「でしょ?もう最高~~」
「これがお祝い?」
「うふふ~~違う私とデートしてほしかったの~
一人でこの格好で歩いたってたのしくないじゃん?」
「そういうことか~」
「私は萌じゃないから~~」
「よくわかんねーけど…どこに行く?」
萌がプロデュースした今日の流れは ゲームセンターに行って
ボーリングして 近くのショッピングセンターでプリクラを撮る。
「俺さ~夕方せめて六時までには帰るから。
ちょっと用事があるんだ。」
「来た早々 帰る話しないでくれる?
じゃあ…行くよ~切符買って行こう~」
萌は俺の腕に手をまわした。
「え?」
「今日は萌じゃないんだからいいじゃん~」
「・・・ん・・・・」
「いいの~楽しみにしてたんだから
秋杜付き合ってくれるって言ってたでしょ?」
なんとなく…なんとなく後めたい気分だった。
萌じゃないって言ったって……
確かに隣にいる女の子は萌じゃない。
あるきづらそうな高いパンプスは いつもの位置より高い位置に
顔があって 大人に感じた。
「恋人風にしようよ~~」
大人の女に言われると なんだか反応してしまう。
萌は俺の体に自分の体を預けて歩いた。
「ヤバイって・・・俺の顔は知れてるんだぞ。」
「年上の女にいろいろ教わってるって言って……」
甘く囁く声はいつもの萌じゃなかった。
香水の匂いが萌をさらに大人の女を感じさせる。
「友達じゃん……いいじゃんおふざけに付き合ってやれば……」
萌が口を尖らせた。
確かに俺だってはじけたい気分だったりする。
やっと解放された 受験生という束縛
「わかったよ~今日は楽しもうぜ~」俺がそう言うと
萌は足をバタバタさせて喜んだ。
「じゃあ~スタ~~ト~~ぉ~」萌が俺の手をとった。