011
「春湖 学力はビックリするほど上がってるけど……最近ちょっと
出かけすぎじゃないの?」ママがとうとう口火をきった。
「いいじゃん~勉強してんだし…とやかく言わないでよ。」
私は口を尖らせた。
「なんか……彼氏とかできたの?」
聞かれると思ってた。
「いないけど~いろいろあるのよ。友達付き合いってさ~」
ママはそれ以上は何も言わなかったけど…けっこうそれはプレッシャーになった
「それより最近秋杜と会ってないけど ママ会ってんの?」
話の方向を変えるのには秋杜にことしか
思いつかなかった。
「めずらしいわね~秋杜のこと聞きたがるなんて~」
「別に聞きたいってわけじゃないよ…ただもうずいぶん見かけてないな~って~」
あの喧嘩から秋杜とは会ってなかった。
今まで我家を自分の家同然にしてきてのに…私のいる間は
一度もこなくなった。
「秋杜は相変わらずよ~学校でも王子さまだし 家でも王子だし…
だけど少し口数が少なくなったみたいよ。
もうさ~~ますます男っぷりに磨きがかかってるんだよね。
声もいい声だし~~体もたくましくなったし……
「ママちゃん」って呼ばれたら 秋杜でもドキンとするわ~」
ママが身悶えながら言った。
秋杜は自分の両親を 「とーちゃん かーちゃん」
私の両親を 「パパちゃん ママちゃん」と呼ぶんだ。
「そっか~~今度会うのが楽しみだわ。」
「あんただって恋しちゃうかもよ~」ママの言葉にカチンと来て
「あんなガキに恋したらおかしいでしょうが~~!!
バカなことばっか言わないでよね!!」と怒鳴った。
「何よ~~ムキになって…春湖のほうがおかしいでしょ…」
ママはおたまを振りまわして私に近づいてきて
後の冷蔵庫を開けた。
失礼しちゃうわ……バカにして…
なんでこんなに腹が立つんだろう……。
絶対 絶対 私と秋杜の 歴史上あってはならないことだし
こんなに年が離れてるのに キスしたり…あんなことしたり…
それから…それから…
「あ~~~~ぁぁ!!無理無理~~」想像しただけで…ダメだ……。
「そうそう~今度の連休温泉いこうとおもってんだけど
いくでしょう?」ママの声に 私の企みが 首をもたげた。
「連休?なんで~~だってその後 うちテストだよ~~。
行けないよ 何でもっと早く言わないの?」
「だって…ひさしぶりだし 秋杜も行くって言うしさ~」
「私は行かないよ~~テスト大事だもん。
行っておいでよ~する番できるし~なんなら友達の家に泊まってもいいし~」
これは……まーくんと夜更かしできるチャンス……
急にウキウキしてきた。
大人の階段……登る…かも………。
そんな企みも交差させながら…運命の日は近づく……。