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季節は過ぎてゆき 俺は受験生としての冬休みも終わり
あっという間に過ぎていく。
成績は落ちることなく なんとかとどまっている。
「今日の夜食はどうする?」
かあさんが言った。
「いいよ。俺 最近少し太った気がするからいらねー」
「なんかしないと…落ち着かないの。」
母はそう言うと キッチンのストッカーの中をのぞいた。
「頑張れよ。もう少しだ。」
「うん~」
「そうそう~春湖も部屋決めたらしいわよ。」
「え?春湖家帰ってこないのか?」
「一人で暮らすらしいわ。
勝手に決めちゃったって寂しそうだった。
春湖は なんか…昔から大人っぽかったけど…やっぱりさ…
自立してるって言うか……でも親としてはちょっと寂しいわね~」
「ほんとだな~
春湖は男より男らしいとこあるからな~
秋杜も負けてらんないぞ~
春湖をゲットするには…春湖以上に男らしくならないとな~」
父が新聞を読みながら言った。
「そうよ。浮気なんてしてらんないわよ。
秋杜のまっすぐさがいつか春湖の心に響くはずなんだから
よそ見したら恋の神様に見離されるぞ~~」
「ウザイ…しつこいから…
萌とは何もないし…それ以上にあいつにだって
そんな気はこれっぽっちもないんだから。」
「そう?秋杜みたいな子がいたら絶対好きになるけど?
それもできないなら…秋杜のオーラーが足りないってことで
ちょっと複雑だったりするかな~」
「何が言いたいんだ~かあちゃん~」
萌とは いい友達として付き合っている。
萌も俺と志望校は同じだから 勉強を教え合ったり
放課後 図書室に寄ったりしながら
時間を過ごしている。
萌とは不思議に気が合った。
笑顔を見てると癒された。
元気に救われた。
不思議な感覚だったけど……女と見てるわけじゃない。
親友?
性別を超えた友情だと俺は思っていた。
「とうとう来週だね~~~。
なんとかなんとか~合格しちゃいたね。
倍率も高いしさ~競争相手は手ごわいんだろうね。」
「萌らしくないな。
俺は自信たっぷりだけどな。」
「秋杜はいいよ~だって私よりランクいいんだからさ~
でも…絶対行きたい秋杜と一緒に
また三年間 勉強したいな。」
「仕方ないから付き合ってやるよ。」
萌はニッコリ微笑んで
「頑張るわ~」とガッツポーズを可愛くきめた。