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「キャハハ~~マジ~~!?」
甲高い声で萌が爆笑した。
「なんだよ。」その笑い方にかなりプライドが傷ついた。
「だって~~秋杜ってそんなタイプだと思わなくて~~
好きとか・・・どっちかと言えば自分以外好きじゃないとか
そ~いうタイプだと思ってたから~~アハハ~~めっちゃウケる~~」
「お…おまえな・・・
失礼な奴だな~~おまえになんか言わなきゃよかった。」
「ごめん~ごめん~~だって~~
あんまり意外だったの~~で どんな人なの?」
「やだね~絶対教えない。」
「いいじゃん~ここまでいったんだから教えてよ。
誰にも絶対に言わないから。だってさ…友達じゃん~
もしかして私だってその人とのこと相談に乗れるかもしれないし~」
萌はニコニコ顔だった。
なんか・・・・
拍子抜けした。
俺のこと…好きになられたら…なんて思ってた自分が
すごく恥ずかしくなった。
変な行動してなかったよな…恥ずかしすぎだし……
自分の思い込みが恥ずかしくて仕方がない。
俺にもやましいことがないという意味も込めて
話してもいいか……。
「誰にも言うなよ。おまえにしか言わないからな。」
「うん!!うん!!」
萌は飼い犬のポメチコのような顔をして
俺のことを見ている。
「めっちゃ…好きなんだ…ずっと…
きっと俺とそいつは…絶対に結ばれる運命なのに
まだ…そいつは全然気がついてない……。」
「それって?私の知ってる子?
同じ中学?それとも小学校の時一緒だったの?」
「違うよ。俺んちの隣の子。」
「じゃあ同じ学校じゃん!!」
「違うよ。今…短大生~ここにはいないんだ。」
「は?短大?って……めっちゃ年上じゃん~~~
あははは~~~」
萌はまた笑いだした。
「もうおまえには話さないから。
俺は真剣なんだ おまえに笑われる筋合いない。
帰るわ。」
急にバカバカしくなった。
こいつに言うんじゃなかった。
「ごめんって~~~だって~~あんまり意外なことばっかで……」
「うっせーとにかくさ…もう入院しなくていいように
ちゃんと腹かくして寝ろよ。」
「いや~ぁ~寝てるから~ぁ~」
階段を降りていくと 萌の母親が
「送って行くわよ。自転車乗せて行くから。」と言った。
「いいです。大丈夫です。
どうもごちそうさまでした。」
「大丈夫?車気をつけてね。」
心配そうに言った。
「おじゃましました。」大きな声で言ったら
「またおいで~」と萌の父親の声がした。
俺が外に出て行くと 萌が自転車の前に立っていた。
「じゃあな。」
「今日はありがとう。また…遊びにおいでね。」
萌はそう言うとニッコリ笑った。
「今度会いたいな~秋杜の好きな人に……」
「会ったらぶっ飛ぶぞ。
めっちゃいい女だから……じゃあな~~」
勢いよく自転車をこいだ。
なんだか…俺少し自惚れすぎだよな~~
下手なこと言わなくてよかった。
萌は少なくても 俺にはなんの感情もない顔をして
話を聞いていたから……
ほっとしたような
ガッカリしたような……
何とも言えず…とにかく俺にとっては初めての感情の交差だった。