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春湖のいない毎日が 俺にとっては地獄だった。
顔を合わさない日が続いても
春湖の部屋のあかりがつけば ホッとしたし……
春湖の母親から 近況が聞ければ
スル―してるように装っては しっかり聞いていた。
だけど…今は部屋の明かりもずい分ついていない……。
俺の生きる希望も 今ここにない……。
「秋杜は どんだけ 春湖好きなのかしらね~
見てると切なくなるわ……。」
母の声に足を止めた。
「五年の差が悔やまれるよな~~
俺らも腹の中にいる時から 洗脳し続けたな~~」
「だって春湖だったらいつでも 秋杜に会えるのに~
春湖は美人だし…子供だって家の秋杜とだったら
素晴らしい孫に恵まれそうだわ。」
「あはは~~」父の高笑い
「秋杜の想いが叶うようにしてやりたいな…」
父の言葉が痛かった。
春湖にしか心がときめかない
俺の想いはいつか 春湖に届くのだろうか………
きっといつか
この想いが本物だったら…春湖を腕に抱きしめることだって
きっとあるかもしれない……。
春湖に会えない時間を俺は自分磨きの時間として
春湖が戻って来た時
何か違う事を知ってほしい。
そこらへんにいる男とは
愛し方や愛の量が違うんだ。
春湖がいなくなって空虚感にさいなまれていたけど
やっと・・・顔をあげることができた思春期……。
俺は今まで絶対に目を向けなかった クラスの中で浮きはじめていた。
「ね…あんた…掃除当番さぼんないでよ。」
そう話しかけてきたのは 勝気な目をした 萌だった。