王子Side 105
きっと俺は……多分生れてくる時期を間違えたんだ。
春湖と一緒に生れてくるはずだったのに 神様に渡す生命許可書が
ちゃんと届かなくて…そのうちに俺は神様に忘れられて
五年後…その用紙を見つけた神様が
慌てて俺を生れさせた。
春湖と一緒に生れてくるはずだったのに……
「手違いで…待たせてしまったな…。
これが…本当はおまえがいるはずの風景だった世界だよ。
確認してみなさい。」
俺の目の前に広がる風景の中に
髪の毛をおだんごにした春湖が飛びまわっている。
ドキンドキン
胸が高鳴った。
「あの子と一緒に生れさせるはずだったのに…悪かったね。」
神様が頭をかいたから
「しっかり頼みますよ。」と神様に暴言を吐いてみたり……
よく笑う女の子で顔もめっちゃ可愛い
幼稚園の制服がよく似合っていた。
「少し遅れたけど…おまえをあの風景に送りこむからな……」
神様がそう言うと 証明書に印を押して去っていった。
次の瞬間俺は真っ暗な闇の中にいた。
助けて…ここはどこなんだ……。
俺はその闇の中でもがいてる。
「由美ちゃんの赤ちゃんここにいるの?」
その声の主があの女の子なのはわかっていた。
「春湖楽しみだな~。
弟生れるみたい~~。」
「ちがうぞ弟じゃないから…この子は春湖のダーリンになるんだから
よく覚えておけよ。」
「五年間待たせたけど
春湖よろしくね。」
「春湖…幼稚園だもん 赤ちゃんに興味なし~
弟 弟 名前は何にするの?」
「どうしようかな~春湖は春に生まれたから 春湖
うちの王子は…秋生れになりそうだから秋のつく名前かな~」
「早く会いたいな~王子さまに~」
もうすぐ会えるよ……俺の春湖……
「めっちゃ可愛がってあげるからね~」
俺も可愛がってやるよ。
暗闇の中 とうさんかあさんの声と 春湖の声を聞きながら
春湖に会う日を夢見ている。
俺はきっとそういう体験をしてきたはず。
そうじゃないと生れてすぐこんなに真剣に俺の未来を決めれるわけがない。
「春湖は俺の女だから」
そう言って春湖に群がる悪い虫を払い落してやるんだ。
早く会いたい・・・・
アクシデントさえなければ…俺は今頃春湖のそばにいれたのに……
俺の頭の中には春湖しか想像できなかった。