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冷え切った部屋の暖房を慌てて入れて
私は昨日の朝の食器を洗った。
それからバスタブにお湯を入れて
昨日たくさん愛された体を湯に沈めた。
自分の体が愛おしいって初めて思った。
自信を持って……
うん…自信を持って胸を張ってあるくわ……。
そして私はまた…秋杜色に戻っていく。
秋杜の好みのシャンプーとコンディショナー……
そしてボディーソープの香りに包まれて
これから起こるかもしれない…史上最悪なことに
立ち向かう勇気の注入をする。
一時間以上 お風呂で体を磨きあげた。
不思議と今までの私と違う気がするのはやっぱり
光太郎の言葉が私をキレイにかえてくれた気がしてならなかった。
どっちかというと自分にコンプレックスがたくさんあった。
初めての相手に嘘つかれて…
結局その相手は私じゃない人を選んだし…
あの時 しばらくもう恋はしないって誓って
ついさっきまで男の一人もなくて 男を遠ざけるために
必死にバイトして わざとに女らしくすることをやめた。
それから少しづつ秋杜に対しての周り道な恋心に気づいて
踏み込めなくて悩んで…悩んで
やっと俺様王子と心が一つになったんだっけ……
でも不安でやっぱりこの年の差が私には辛くて…
やっぱ…ムリなのかなとか思っちゃったりしてる……。
私だけが気をもんでるような気がして…
辛かったけど
光太郎と出会って 先の自分を好きになれそうな気がする。
大切にしてあげようって…そう思える。
バスタオルを巻いて 出ていくと
キッチンに秋杜が立っていて 思わず声をあげた。
「ビックリしたわ……」
そして深呼吸して
「おかえりなさい。」と笑顔で言えた。
「うん…ただいま…」秋杜は少し顔が引きつってるように思えたけど
笑顔を私に向けてくれた。
「何してんの?」
「昨日作る約束してたから……俺も買いものしてきたんだ。
今日俺たちのクリスマスしよう。」
「マジ?嬉しいわ~何つくってくれるのか楽しみだわ。」
私は多分きっといい笑顔でそう言ってるって思っている。
「風邪ひくぞ。部屋冷えてたから……座れ~」
そう言うと私をダイニングのイスに座らせて
いつものようにドライし始めた。
いつも通りの秋杜に少しホッとしてた。
でも二日間の嘘をこれから付く秋杜は 正直見たくないなって思った。
しばらく無言の時間が続いた。
心地よい温風が私を温かくしてくれた。
目を閉じてその気持ちよさの中にいると
「ごめんな…約束破って…」秋杜が話だした。
私は緊張してきた。
「楽しかった?」一応騙されてみる……。
「実はさ…友達のとこなんて言ったのは…ごめん嘘なんだ。
ごめん…嘘ついてた…二日間めっちゃ心が痛かった…。
イブの日 快く送り出してくれたのが…辛かった。
昨日もきっと楽しみにしてたんだろうってわかってて
メールで嘘ついたから…自分がずっと卑怯でイヤだった……。
返信こないことに少しホッとする自分を嫌いになりそうだった……。」
とうとう秋杜が本当のこと語り始めた。
私は秋杜が嘘をつきとおさないでくれて嬉しかった。
「どうしたの?秋杜……。」
「ごめん…俺…実は……二日間……
萌と一緒にいたんだ……。」
苦しそうに言う秋杜が きっと辛いんだろうって思えて
愛おしいと思った。
もし秋杜が嘘をつきとおしたら
私はもう秋杜を信用できなくなるって…思ってたから……。
「春湖には…やっぱり嘘つきたくなかった。
ちゃんと話せばよかったって…ずっとずっと二日間後悔してた。」
「萌ちゃんと…何かあるの?」
私は言葉を選びながら 秋杜と会話する。
「…萌のそばにいてやろうと思う…。」
心臓がキュー―って音をたてた。
史上最悪な結果なの?
「俺に…俺を信じて…時間くれない?」
「信じて?」
秋杜が後から私を抱きしめた。
「ちゃんと…話して…秋杜……。
それは萌ちゃんが好きってこと?
私より…萌ちゃんを…とるって言う事?」
その答えの確認する質問に声が震えた。
「違うよ……。
俺の愛してんのは…生れた時から一人だけ…
ずっとずっと片想いしてきて…やっとこんなに近づけた…
春湖しかいないよ……」
「じゃあ…どうして萌ちゃんのそばにいてあげたいの?」
「…萌は病気なんだ……。
俺にそばにいてほしいって…泣くんだ……。
萌は…めっちゃいい子で……いつもそばにいた……。
俺のこと好きだなんてついこの間まで…知らなかったんだ……。」
落ち着いて聞こうって必死に
自分を勇気づけている。
昨日の光太郎との出来事が力を貸してくれていた。
「聞くよ…秋杜……。
ちゃんと聞くよ……。
嘘つかないで話してくれたんだもん……
秋杜の話 信じて聞くから……」
私は秋杜を自分の向かいに座らせて 静かに両手をとった。
「大好きだよ。秋杜……。
嘘つかない秋杜が…めっちゃ大好き……。」
いつも強き気の秋杜の目が潤んでいた。
「ごめんね…春湖……。
二日間…嘘ついて……ちゃんと話すから…俺……。」
秋杜の冷たい手を私の温かさで包んであげようって思った。