『同じ星を見上げて』
「……いつか、戦争なしで星を見られる日が来るのかな」
遠く離れた場所で、林偉も空を見上げた。
「……いつか、きっと。」
二人の声が届くことはなかった。
『同じ星を見上げて』
夜空には、無数の星が輝いていた。
1940年代の、とある冬の夜。
日本軍の兵士、**坂本 蓮**は、野営地の片隅に座り、静かに空を見上げていた。
昼間は、砲声が絶えなかった。
しかし夜になると、不思議なほど静かだった。
蓮は軍帽を脱ぎ、膝の上に置いた。
「……あの星は、日本でも見えるのかな」
ふと、故郷のことを思い出した。
小さな村。
田んぼの間を吹き抜ける風。
夕方になると、母が家の明かりを灯していた。
蓮はポケットから、一枚の手紙を取り出した。
母から届いた手紙だった。
«「無事に帰ってきなさい。
そして、夜に星が見えたら、空を見上げなさい。
故郷からも、同じ星が見えるから。」»
蓮は静かに手紙を折りたたんだ。
その頃。
遠く離れた場所でも、一人の兵士が夜空を見上げていた。
国民党軍の兵士、**林 偉**だった。
彼もまた、家族のことを考えていた。
故郷に残してきた父親。
そして、まだ幼い妹。
林偉は空を見ながら、小さく呟いた。
「……あの星を、今見ている人がいるのかな」
二人は、お互いの存在を知らなかった。
言葉を交わしたこともない。
それでも、その夜だけは――
同じ星を見ていた。
やがて遠くから、一発の銃声が響いた。
蓮は立ち上がり、軍帽をかぶった。
林偉もまた、静かに銃を手に取った。
二人が最後に見上げたのは、敵の姿ではなかった。
夜空だった。
無数の星が、何も言わずに輝いている。
勝ったのは誰なのか。
負けたのは誰なのか。
星には、そんなことは関係なかった。
ただ同じ夜空で、同じ光を放っていた。
蓮は小さく呟いた。
「……いつか、戦争なしで星を見られる日が来るのかな」
遠く離れた場所で、林偉も空を見上げた。
「……いつか、きっと。」
二人の声が届くことはなかった。
けれど、その夜――
二人は同じ星の下にいた。
二人の声が届くことはなかった。
けれど、その夜――
二人は同じ星の下にいた。




