表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明の誓い  作者:
43/46

涙の結晶 ーブレイブ対哀麗

「うわぁ……やっぱり来た……!」

ヴァリオンは思わず後ずさり、膝が震える。心臓が喉を打つように速まる。


――その瞬間、通りの影から全く空気を読んでないアスティアが満面の笑みで突進してきた。


「ヴァリオンじゃねえかああああ!!!」


緊張感と再会の熱に圧され、ヴァリオンは思わず身をよじる。


「ちょ、ちょっと!? 待っ……今再会喜びあってる場合じゃな...」

抱きつかれたままもがく彼の体を、アスティアの巨躯が軽々と押さえつける。


「ヴァリオンさんーー!! 何してるんですかあああ!?」

ルミナの声が、恐怖と慌てが入り混じって響く。


三人の背筋に――ブレイブの足音が近づく重低音と、迫り来る圧が染み渡る。

影が伸び、街の空気が一瞬で張り詰める。



「ご、ごめん……ルミナ…アスティア…なんでブレイブと一緒に……?」

ヴァリオンは声を震わせ、思わず後ずさる。

その背後では、ブレイブの殺気が空気を裂くように漂い、胸の奥からぞくりと冷たい感覚が走る――。


「哀麗…」

ブレイブがゆっくりと手を伸ばすと、その威圧感に息を飲む。


「嫌よ!!」

哀麗は必死に手を振り払う。その瞬間、ヴァリオンの心臓がぎゅっと締め付けられた。


背筋に凍るような恐怖を感じながらも、守らなければという意志が胸を焦がす。



「おのれ…小僧!!」

ブレイブの瞳に赤い炎が宿り、嫉妬の熱が全身からほとばしる。

剣に赤い闘気をまとわせ――


「次はないと言っただろ!!」

振りかざされた剣がヴァリオンめがけて迫る。


「皆下がって!!」

哀麗の声が響き、頬に伝った一粒の涙が淡く光る。


――パリン!!!


数滴の涙が結晶のきらめきに変わり、膨張した透明の結界がヴァリオンとルミナ、小麦くんの盾になるように展開された。


ブレイブ「なっっっ!?」


剣先は哀麗の結晶に弾かれ、赤い闘気は宙に散った火花となって路地裏に煌めく。


ルミナ「きゃっ!?」

ヴァリオン「これは……!?」


ブレイブは剣を構え、額に赤い血管が浮かぶほどに瞳を燃やした。

「哀麗……俺と戦うというのか……」


哀麗は背筋を伸ばし、揺るぎない眼差しで応える。

「今のあなたは聞く耳なんか持ってないもの……力で対抗させて貰うわよ!」


その強気な姿勢に、ヴァリオンもルミナも息を飲む。


アスティアはぽかんと口を開け、目を丸くした。

「すっげえ……ブレイブのおっさんの闘気を弾いた……」


普段の特訓で鍛えられた身体でも、ブレイブの圧倒的な力と迫力に圧倒されていた。



「でも……こんな城下町で、私たちが争うわけにはいかないわね……」

哀麗は視線を周囲に巡らせ、人だかりに囲まれていることを確認した。

「ましてや、ここはアウレア王国……」


周囲のざわめきと視線が、戦闘を制限するように静かにプレッシャーをかける。



魔法警備の人達も現れ、騒動は瞬く間に街の注目を集めていく。


「逃げるわよ!!!」

哀麗の声が響いた瞬間、頬を伝った一粒の涙が空気中で淡く光を放った。


――パリン。


透明な結晶が轟音とともに膨張し、3人と1匹を包み込む。

ルミナ「きゃっ!?」

ヴァリオン「これは……!?」


結晶の中は淡い光に満ち、周囲のざわめきも押し返すかのように静まり返る。

まるで空気そのものが柔らかな布のように3人と1匹を守り、ふわっと上空に浮かび上がった。



個々の結晶に包まれて、3人は宙に浮かぶ。

ヴァリオンと小麦くんは一緒に、哀麗は自分の結晶の上にしっかりと乗っていた。


下を見れば、アウレア王国の屋根が豆粒のように遠ざかっていく。


「うわあ……っ」

ルミナの目がまんまるになり、頬が光に照らされてきらめく。

「すごい……空の上……!」


ヴァリオンは小麦くんをぎゅっと抱きしめる。

ふわふわの毛並みが指先をくすぐり、小麦くんは「きゅる…」と小さく鳴いた。


ヴァリオンはその光景を見つめ、胸の奥がじんわり温かくなる。

「……すごいな」

思わずこぼれたその声は、風に溶けて消えていった。


結晶の外では、風が白い尾を描き、3人と1匹の周囲をゆるやかに流れる。

哀麗はその中心で静かに目を閉じ、魔力の流れを制御していた。

その横顔はどこまでも穏やかで、涙のような輝きが頬を滑り落ちる。


空に浮かぶ三人と小麦くんは、まるで時間さえも止まったかのような一瞬を過ごしていた――。


――だが、その平穏は一瞬で破られた。


「おのれ……哀麗!!!なぜその小僧を庇う!!!」


ブレイブの怒声が空気を裂く。赤い闘気が剣を覆い、鋭く光った。

ヴァリオンの胸が一瞬ひゅっと冷え、心臓が早鐘のように打つ。

「次はないと言っただろ!!」


その刹那、ヴァリオン目掛けて、赤い闘気を纏った剣が猛スピードで飛んでくる。

「うわっ……!?」

宙に浮かぶ結晶の中、ヴァリオンの全身に緊張が走る。腕を上げて受け止めようとした――その時、哀麗が結晶を膨らませ、光の壁で闘気を華麗にはじき返した。


結晶の光に包まれ、ヴァリオンの心臓はまだ早鐘を打ち続ける。空中に浮かぶ感覚と、哀麗の守る力を目の当たりにして、胸の奥がぎゅっと締め付けられるようだった。



ブレイブが下の方で何やら叫んでいるが、その声はもう届かない。

哀麗は結晶の上に立ち、「大丈夫だった?」と微笑んだ。


結晶が陽の光を反射して、哀麗の髪を金色に染める。その姿はまるで光に包まれた女神のようで──


「ほわあ……哀麗さん、かっこいいです…」

ルミナが息をのむように呟く。


太陽の光が結晶を透かし、哀麗の横顔をやわらかく照らす。風に揺れる髪がきらめき、光そのものが彼女を包んでいるようだ。


ヴァリオンは哀麗の美しくも強い姿にまた惚れ直す。しかし同時に、自分の不甲斐なさに少し背中を丸めるのだった...。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ