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黎明の誓い  作者:
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執念の足音 ー仁王立つ騎士・ブレイブー

路地の奥、薄暗い木箱の影。

ヴァリオン・ルミナ・哀麗・小麦は息を殺して隠れていた。


哀麗は極限まで魔力を抑え込みながら手を小さく組む。

(たとえ一滴でも魔力が漏れたら……ブレイブ様に気づかれる……)


ルミナは緊張で手が震え、膝の上の小麦を抱きしめて耐える。

(お願い静かにしてて下さいねえ....)


その直後——。


「そこの者!!」

外に響き渡るブレイブの声。


全員がビクッと肩を跳ねさせた。


「このあたりで、茶髪で……ええと髪が長くて、美しい黒いマント服の女性を見なかったか?」


哀麗の身体がびくっと震え、口元を手で押さえる。

ヴァリオンは無意識に哀麗の肩に手を添え、静かに首を横に振った。

(大丈夫だ……見つからせない……)


「ひ、ひぃっ!? な、なんのご用で……?」

「構わん、見たかどうかだけ答えろ!」


その圧に通りの空気が凍る。


(ブレイブさん、その言い方ぁぁぁ!!)

アスティアの心の叫びが外から聞こえて来そうだった。


「すまない、俺の仲間なんだ……見つけ出したいだけだ!」

ブレイブは必死に説明するが、その必死さが逆に鬼気迫って見え、

誰もまともに答えられない。


「ひ、ひとりフードの女性なら……っ」

「どこだ!」

「ひいっ!! さ、さっき市場の方へっ!」


ヴァリオンは息を詰めたまま、外の気配を読み取ろうとする。

(頼む……ここに戻ってくるな……)


「よし! 行くぞアスティア!」

「……だから怖いって」

声のデカさ考えろよ!ブレイブのおっさん...!


足音が市場へ遠ざかる。

しかしまだ気が抜けない。


市場の方からは人々のざわめきが広がり始めた。


アスティアの疲れ切った声が遠くで響く。

「茶髪がそう、絹のように艶やかで!瞳も髪と同じ茶のそれはもう美しいとしか表わせられない程で!!

声は鈴の音のように澄み渡り――」


「お、おいブレイブさん...それもう特徴じゃなくてポエムだぞ……!」


ヴァリオンは思わず天を仰いだ。

(あれで見つけられたらもう奇跡じゃないのか……)


「違う、事実を述べているだけだ!」

ブレイブは真剣そのものの表情で、

手を胸に当て、まるで聖女を讃えるように語り続けた。


「その歩みは風、微笑みは光! ああ――麗しい……なんと麗しい……!」


「いや聞いてるこっちが恥ずかしいわ!」

アスティアは頭を抱え、通行人はそっと距離を取る。


気づけば周囲は静まり返り、残されたのはブレイブとアスティアだけ。


「……誰もいなくなったな」

アスティアは空を仰ぐ。


まるで――

彼の想いの熱が空回りして、

その残響だけが冷たい風になって通りを抜けていくようだった...。



「.....っっっ近くの町にも探しに行くぞお!」

ガッシャンガッシャン鎧の音を立ててブレイブはアスティアを引き連れて行く


ルミナ「……すごい音ですね……あんなに探してるんですね」

ヴァリオン「まるで戦にでも行くみたいだな……」


「ふぅ……やっと行ったみたいね」

哀麗が胸に手を当てて安堵の息を漏らす。

ルミナも思わず「心臓に悪いです…」と苦笑して、ヴァリオンは肩の力を抜いた。

その腕の中では、小麦くんが安心しきったように喉を鳴らしている。

「すっかり落ち着いたな」

ヴァリオンが微笑むと、哀麗も柔らかく笑って――

「あなたの腕、落ち着くのね」

なんて小麦くん目線のように言って、ヴァリオンの顔が一瞬で真っ赤になる。


小麦くんが、哀麗の頬に鼻先をちょんと近づける。

次の瞬間――ぺろっ。

「きゃっ……ふふ、くすぐったい……」

哀麗が笑い、ヴァリオンは一瞬で顔を真っ赤にして叫んだ。

「ああああああ!?」

路地裏に響く声。

その直後、

「今の声は……!?」

「近いな! すぐ向かうぞ!!」

鎧の音がガッシャンガッシャン。

――静寂。三人と一匹、固まる。

「……ヴァ、ヴァリオンさん……!」

「……ごめん……」


背後に――ピリッとした威圧感。

嫌な予感が、三人と一匹の背筋を駆け抜けた。


その直後、影が伸び――


剣を担いだまま、ブレイブはゆっくりと足を踏み出す。

そのたびに鎧が鳴る――ガッ、ガッ、ガッ。


ヴァリオンは哀麗を庇うように前へ。

ルミナは小麦を抱きしめる。

哀麗は――笑顔を失った目で、静かにブレイブを見つめ返す。


「探したぞ……哀麗……!!!」


ブレイブの目は哀麗から逸らされることなく、瞬きすら忘れているようだった。

怒りでも焦燥でもない。

「見つけた。絶対に離さない」

その一線だけが、全身から放たれている。


ルミナは息を呑み、ヴァリオンは反射的にブレイブの正面に立つ....

それでも、誰ひとりブレイブの存在を揺るがせられていない。


「……哀麗」


静かに、低く。

ほんの一語。

それだけで膝が震えるほどの威圧が落ちてきた。




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