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黎明の誓い  作者:
37/46

秩序の檻 ― ライオネルの叫び

道はどこまでも白く磨かれ、石畳ひとつにすら欠けがない。

通りには魔力を帯びた清掃装置が規則正しく動き、風に舞う埃さえ、すぐに光の粒となって消えていく。


花壇の花は整列するように咲き、

衛兵たちは同じ角度で敬礼を交わした。


──まるで“秩序そのもの”が呼吸をしているようだった。


で、ルミナが少し緊張して「きれい……でも、なんだか息苦しいですね」みたいに呟くと、

カイルが「ゴミひとつ落ちてねぇな……幻とはえらい違いだぜ」


セラフィムは穏やかな声で口を開く。

「哀麗がこの王国にいた当時は国はまだ華やかで、自由の空気が満ちていました。

王は元来気難しい方で、秩序を乱す者には容赦なく罰を与えるお方でしたが…」


小さく微笑むセラフィムの目に光が宿る。

「その娘の歌声と踊りは、王の硬い心を少しずつ溶かしていったのだ……」


そしてセラフィムは少し息をつき、遠くを見やる。

「しかし、時は流れ、秩序と規律を重んじる王国の本質が戻ってしまいました。

今の国は、王の感情を超えて、法と掟が厳格に支配する地となっているのです」


ヴァリオンが歩いていると、ふと前方で誰かがポケットからゴミが落ちた。

その瞬間、空気が鋭く振動するような音が鳴り、落とした本人の目が点になる。


「そこの者、何をしている!」

近くに立つ魔力感知官が、ピピッと光を発しながら注意。

ゴミを落とした人物は真っ青になり、慌てて拾おうとするが許されず、追い出されてしまった。


カイルは思わず口を開く。

「…なんて厳しい国だ…」と言ってポケットに手を突っ込みゴミがないかヴァリオンも探してあげる。


ルミナはくすりと笑い、セラフィムは穏やかに頭を振る。

「これが、アウレア王国の秩序というものだ」


「ライオネルさんはどうなったんでしょう……」

「ああ……それなら中央通りで閲覧できる……」

「閲覧……???」


セラフィムはヴァリオンたちを街の中央通りへと案内しながら、ふわりと手を翳すと、空中に淡く光る文字が浮かび上がった。


「ここが、王国の秩序を示す掲示板です。誰もが違反や有罪を目にすることで、規律を意識せざるを得ません」


浮かんだ文字には、有罪者の名前、罪状、処罰内容が詳細に記されている。

ヴァリオンの視線が止まったのは、そこに記された一つの名前──ライオネル。


王国機密の漏洩(高額報酬を受領)

•王国への背信

•戦場での命令違反

•魔法での暴走

•市民への軽微な虐待


ヴァリオンは文字を一つずつ追い、胸が締め付けられる思いだった。

「こんなに…全部…」ルミナも声を落とす。


ヴァリオンは言葉を失い、ルミナも小さく息を飲む。街の空気は重く、光る文字の冷たさが胸に突き刺さった。


「やっぱ……クロだったか……ライオネルさんは……」とカイルは王国機密の漏洩を指でなぞった……。

「そうみたいだな……」とセラフィム。


「見に行くか……気分のいいものでもないけど」とカイル。

「え……?」


高く透明な魔力結界に囲まれた牢の中で、ライオネルは肩をすぼめ、体を震わせていた。周囲には微細な魔力波が絶えず流れ、座っていてもじわじわと疲労感が押し寄せる。


「ううっ……やめろ……っ!」


声を上げると、結界が共鳴して音が何倍にも増幅される。周囲の通行人や守衛の耳に届くたび、ライオネルの叫びはさらに大きく、痛々しく響いた。


結界の光の紋章が触れた箇所に微かな痛みが走り、身体がぴくりと跳ねる。精神も微妙に揺さぶられ、幻覚のように薄暗い影が壁に浮かぶたび、心がざわつく。


「こんな……こんな仕打ち……!」


ライオネルは必死に抗おうとするが、魔力の束縛と疲労感に体は重く、座ったまま身動きがとれない。まるで動物園の檻に入れられたかのように、誰もが見上げられる高さの結界に隔てられ、無力感が押し寄せる。


通りかかるヴァリオンたちは、ライオネルの悲痛な姿を目の当たりにし、胸を痛めずにはいられなかった。セラフィムは小さく息をつき、「王国の秩序とは……恐ろしいものです」と呟く。


ライオネルの顔には怒りと哀しみが入り混じった表情が浮かび、絶望の中で必死に声をあげ続ける。彼が動物のように収容されている姿は、王国の厳罰を象徴する見せしめそのものだった。


「こんな……事って……」ルミナがあおざめる。

「酷い……」とヴァリオンも目を背ける。


カイルはライオネルの前に座り声をかけた。

「たす……助けてくれえええ……」と必死に出ようともがくライオネル。


「誰に魔族にされた……」とカイルが小声で囁いた……。


「し……知らん……わしは本当に知らんのじゃああ……」

魔法で記憶操作されててダメか……とカイルは項垂れた。


ライオネルの視線が彷徨う。

焦点の合わないその瞳に、かすかな恐怖の色が滲んでいた。


ライオネルの震えが止まらない。

ヴァリオンたちの誰もが、もうこれ以上は話しかけられないような空気を感じていた。

それでも、カイルだけは一歩前に出た。

彼の表情には、わずかな怒りと迷いが入り混じっている。


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