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黎明の誓い  作者:
34/46

黎明に交わした約束 ― 6人の絆

夕方には、ようやく街が見えてきた。

だが、ガラクタバスが止まったのは、町を目前にした小高い丘の上。

遠くに灯りがまたたき、あと少し進めば宿もある。


「……今日はここで野宿しようぜ!!」

カイルの突拍子もない提案に、ヴァリオンは即座に目を輝かせた。

「いいな!!」


「えええ――!?」

「宿は目の前なのに……」

女性陣は呆れた声を上げつつも、結局その場に腰を下ろし、草の上でのびをした。


カイルが嬉しそうにバスから鍋や串を取り出す。

「こんなに詰んであったのか!」とセラフィムが目を丸くする。

「へっへっへ、盗品じゃねぇ!拾っただけだ!!」とカイルは得意げに鼻の下をこする。

「……呆れた男だ」セラフィムは苦笑しながら手伝いを始めた。


「なあヴァリオン、せっかくだし今日は肉焼こうぜ!」

「いいな。旅の疲れも取れそうだ」

「よし決まり!オレらで買い出し行こうぜ!」

肩を組んで、二人は楽しげに町へ向かっていった。


「やれやれ……」セラフィムは小さく笑い、薪をくべて火を起こす準備をする。


やがて、袋いっぱいの肉と果物を抱えた二人が戻ってくる。空はもうオレンジ色に染まっていた。


「わぁっ!すごい量ですね!」とルミナ。

「男子ってさ……買い物センス皆無だよね」とリィナがため息をつく。

「でも……嬉しそうね、あの二人」

エルヴィアの言葉に、ルミナも微笑んだ。

「そうですね……ヴァリオン、とっても嬉しそう」

彼の表情に、どこか少年らしい無邪気さが戻っていて、ルミナの胸がほんのり温かくなる。


焚き火の火がパチパチと跳ね、叱咤するセラフィムに、ヴァリオンとカイルの笑い声が響く。

火が灯り、肉と香草の匂いが夜風に溶けていく。


ルミナが串を焦がしそうになり、ヴァリオンがそっと手を添える。

それを見たリィナがからかい、エルヴィアがきゃあっと笑う。

ルミナは頬を赤らめて否定し、再び笑いが起きた。


焚き火の炎がパチパチと音を立て、火の粉が星のように舞い上がる。

夜は深いのに、誰も「寝よう」とは言わなかった。


カイルが小石を投げながら笑う。

「なあ……魔法都市って、どんな都市なんだろうな」

ルミナがそれを追うように、少し夢見るような声で言う。

「きっと賑やかですよ。知らない香りがして、知らない音がして……偉大な魔法使いの方がたくさんいて」


セラフィムが静かに微笑んだ。

「あそこはいい都市だ……2人とも、頑張るんだぞ」

「はい……」「ええ……」2人の声が、焚き火の音に溶けていく。


沈黙。

けれど、それは気まずさではなく、心地よい間だった。



やがてヴァリオンが、ぽつりと呟く。

「……昔、こうして夜を越したのは、いつ以来だろうな」


その声に、皆が静かに耳を傾ける。


カイルが笑いながら枝をくべた。

「じゃあ、思い出してみりゃいいじゃねえか。ほら、夜は長いぜ? 聞かせろよー!」


ヴァリオンが語り、皆が耳を傾ける。

時には笑い、時には涙し、慰め合い、励まし合い……

そしてまた誰かが言葉を紡ぎ出す。


話が途切れても、風が、焚き火が、星が、続きを語る。

眠るのが惜しいほどに。


夜が、ゆっくりとほどけていく。

焚き火はいつの間にか灰になり、草の先に朝露が光る。


鳥のさえずりと風の音が、夜の終わりを知らせていた。


六人は黙って空を見上げていた。

東の空がわずかに白みはじめ、星々が消えていく。


その隣で、ルミナが小さな声で言った。

「夜、あっという間でしたね……」


ヴァリオンは目を細め、微笑む。

「楽しい時間は、そういうものだ」


眠そうなカイルが欠伸をして、

「運転大丈夫なのー?」とリィナがからかう。


「カイルの“羅針盤”次第だな?」

とセラフィムが鋭いツッコミを入れ、一同が笑いをこぼす。


カイルは「おいおい、信用がねえなあ!」と笑いながら、

バスを運転する真似をして見せた。


その姿に、皆の笑い声が重なる。


夜の名残と、朝の光が混ざる草原で、

彼らの旅が、また静かに動き出す。


東の空が淡くオレンジ色に染まり、

焚き火の灰がまだ温かく、朝露が草を光らせる。


ヴァリオンは静かに深呼吸をして、仲間たちを見渡した。


夜明けに静かに誓った約束は、

誰にも壊せない絆として、彼らの胸に刻まれた。


夜明けの風が、彼女たちの髪をそっと揺らした。


「手紙出すわねー!」

リィナが笑いながら手を振る。


エルヴィアも続いて、少し涙ぐみながらも笑顔で。

「絶対、また会おうね!」


六人の手が順に重なり、最後に固く握られる。

光が差し込むその瞬間、言葉はいらなかった。


二人の背が、街の朝靄に溶けていく。


ルミナは最後まで手を振り、姿が見えなくなるまで見送った。


ヴァリオンは名残惜しそうに、遠ざかる二人の背を見つめながら呟く。

「……なんだか、昔から一緒にいたような感じがしちゃったから……余計に寂しいな」


その言葉に、ルミナが少し微笑んでうなずく。

「きっと、心が通じ合ってたんですよ」


カイルが肩をすくめる。

「寂しいってことは、いい仲間だった証拠だ」


セラフィムが、朝の光を受けながら静かに言葉を紡ぐ。

「人の縁というのは、風のようなものだ……

離れても、同じ空の下で必ずどこかに吹いている。

再びその風が交わる時――きっと、今日の続きが始まるだろう……」


少し間を置いて、皆がその言葉に黙って頷く。

カイルがぽつりと「……難しいこと言うなぁ」と笑って、

しんみりした空気が少し和んだ。


朝の薄い光が、地平を染めていく。

リィナとエルヴィアの姿は、もう見えない。


草原の風が吹き抜け、

バスの窓を静かに揺らした。



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