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黎明の誓い  作者:
33/46

ドタバタ移動 ーカイルの危ない運転

霧がかった朝の拠点前、地面にぽつんと置かれたそれは――

見た目は古びたバス?のような乗り物??

錆びた取っ手が飛び出している。窓枠にガラスは無く風がスースー通り抜ける。


ヴァリオンはバスの側面を指でなぞりながら苦笑。

「これで移動するのか……もしかして……」

「いやああ――何このガラクタ動くのお!?」とリィナ。


カイルは手のひらに小さな羅針盤を乗せ、魔力を流し込む。

「心配すんな。こいつがあれば、迷子になんかならねぇ」

小さな青光が羅針盤から広がり、バスの下に魔法陣が浮かぶ。


――ふわり。


「う、浮いた――――!?」


カイルは満足げに笑う。

「見ろ、完璧だろ。まあ、多少揺れるがな」

バスが「ガタガタ…キュイイイイ!」と微かに震え始める。


「ちょっと!?」リィナ。

「あれ……?おっかしいな……」と頭を搔くカイル。


バスはぐるぐる回りながら、ふわっと小刻みにジャンプしたり、時々小石を弾き飛ばしたりする。

「おっとっと……落ち着け落ち着け……!!!」

カイル再び羅針盤に魔力を込めると、暴走し出すガラクタバス。


「わあああ!?」場は大混乱!!!


そこへ、セラフィムが颯爽と現れる。

「何をしているんだ!!!魔力を注ぎ込む力が甘いぞ!!!カイル!!!」

「へ……っそんなこと言われたって」

「よこせ!!」

セラフィムが軽く手をかざすと、青白い光が羅針盤に流れ込み、「はい、これで安定するはず」とカイルに羅針盤を再び渡す。


バスはふわっと旋回を止め、落ち着きを取り戻す。

「……助かった……」とヴァリオン。

「良かったです……あのまま乗ってなくて」とルミナ。


絶賛されるセラフィムにカイルは不満げに「俺の見せ場は…?」と呟くも、皆の安心した顔を見て小さく苦笑。


バスの暴走を止めてくれたセラフィムに、ルミナは「ありがとうございます!さすがセラフィムさんですね」と礼を言う。

「頼りになりますね」とエルヴィア。

セラフィムはなんのなんのと謙遜し更に女性陣の尊敬の眼差しを向けられるセラフィム。

「セラフィムさんが送ってってよお」とリィナ。


その光景を見て、カイルはふくれっ面。

「俺の拾ってきたバスだぞ!!」

セラフィムが軽く手をかざして、カイルに向けて笑顔で

「まぁまぁ、仕方ないから着いていってやる」と言った瞬間、カイルはさらに拗ねる。


リィナはニヤニヤしながら、「ふふ、カイルってば拗ねてる」ププッと笑ってとつぶやく。

エルヴィアは「ダメよ、笑っちゃ……」とリィナの肩を叩く。


泣きべそ気味のカイルを見て、ヴァリオンはにっこり笑いながら肩を叩く。

「味があって、いいバスだと思うぞ」


「ヴァリオン……!!!」カイルの目が輝き、少し照れながらも元気を取り戻す。


「俺の味方はお前だけだあーヴァリオンーー」としがみつくカイル。

ガラクタバスを囲んで場が和んだ。



ガラクタバスの運転席にカイルが得意げに乗り込み、隣にセラフィムが指導官のような目つきを向けてゆっくりと腰を降ろす。


「本当頼むわよー」と呆れ顔のリィナに笑うルミナとエルヴィア。

「カイルなら大丈夫だ!!!」とヴァリオン。

「だろう???」すっかり気を良くしたカイルは清々しい顔でハンドルを握る。

ハンドル操作はいらないのだが...とじとっとセラフィムはカイルを横目で見やった。


カイルの瞳がキラリと光る。

「じゃあ出発しよう」


内心ルミナは緊張しロッドを握りしめる手が強まる。

カイルが勢いで羅針盤を起動。


ブオオオオォン!!

ガラクタバスがエンジン音を唸りあげた!


バスは細い山道をまるで生きた蛇のようにぐねぐねと進み、

タイヤ(?)らしきものが空回りして、機体がカタカタと傾く。


「ま、まっすぐ行ってぇぇ!!」とエルヴィアとリィナは抱き合って恐怖に怯える。

「行ってるって!!くねくね道が悪いんだよ!!」

「お前の運転技術のせいだ!!!俺に貸すんだ!!」

「やだ!!」と頑なに運転席を譲らないカイル。


騒ぎとバスがガタガタと振動する中、ヴァリオンがふと窓の外を見上げる。

朝日が差し込み、雲の隙間から光がバスを包み込んだ。


「……悪くない景色だ」

その穏やかな声に、みんな一瞬だけ静かになる。


カイルが苦笑して、「だろ?」と鼻を鳴らした。

次の瞬間――


ゴンッ!!

バスが岩にぶつかり、再びくねくねと回転を始める。


「いやいやいやいやいや!!!」

「だろ!?じゃないぃぃぃぃぃ!!」


山道を蛇行しながら、ガラクタバスは奇跡的に進み続けるのであった。


ガラクタバスはくるくると山道を抜け、最後の一段を跳ねるように飛び出した。

「ひゃあああああああーー!!」

全員の悲鳴を背に、機体は木々を掠めながら森を抜け──突如、視界が開ける。


黄金色の草原が一面に広がっていた。

羅針盤の魔力がかすかに軋み、ガタガタと不安定に揺れるバス。

けれど、それでもフラフラしながら前へ、前へと進んでいく。


「……な、なんとか……なりましたね……」

ルミナは座席にしっかりと捕まってそういった。

「バス嫌いになりそうだわ……」とリィナ。

「これ、地面に着陸したら壊れないだろうな...」とセラフィム。

ヴァリオンはそんな中、窓の外の草原を見つめて静かに呟く。

「……すごく快適だ!!!風が気持ちいい」とヴァリオンは窓からの風をそよそよと浴びる。

「お前はわかってるなー!!風を切って行くぜえ――」

「ヴァリオン!!カイルを乗せるんじゃないーー」とセラフィムは怒号をあげた!


「ねえ……ルミナ、ヴァリオンってズレてるっていうか肝が据わってるっていうか呑気っていうか……」とルミナに耳打ちするリィナ。

「あ……はは……そういう1面もあるかもしれませんね」とルミナも苦笑い。

エルヴィアはそんな様子に口元を抑え笑う。

「ふふっ……なんだかちょっとだけ楽しい……!私……きっとこのバスの事忘れない……」

エルヴィアの言葉に空気が和やかになる。

「たまにはこんなドタバタした感じもいいかもね」とリィナ。

「私も忘れません!!皆さんとこうして過ごした時間はとっても価値のある時間です」とルミナ。

男性陣3人も口元が緩む。


ヴァリオンは風に髪をそよがせながら口元に弧をえがいてこの時間を噛み締めた。


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