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黎明の誓い  作者:
28/46

娯楽の時間

馬車の車輪がゴトゴトと揺れる。小さな砂埃が舞い上がり、風が顔を撫でる。


森を抜け、小川沿いの細い道を進む馬車。枝や葉がかすめ、木漏れ日が水面にきらめく。水面のさざめきに、冒険者たちは嵐庭の騒ぎから別世界に迷い込んだ気分になった。


やがて橋が見える。澄んだ池に木々が映り、馬車はゆっくりと進む。石畳の道を抜けると、高くそびえる城壁と街の活気が目に入り、12人の冒険者は思わず息をのむ。

「うわ…本当に立派な王国だ…!」

「これがアウレア王国か…!」


守衛は警戒の目を向けるでもなく、あっさりと馬車を通してくれた。

「……こんなにすんなり入れるなんて、拍子抜けだな」ヴァリオンは苦笑し、ルミナも肩の力を抜く。


王都の通りは活気に溢れ、屋台や露店、色とりどりの看板が並ぶ。大道芸人のショーや子供たちの拍手、ギャンブル台の音やコインの響き、歓声やため息が入り混じる。ルミナの目は好奇心でキラキラ輝き、ヴァリオンもつい見入ってしまった。


街の中心に近づくと、広場に設けられたイベントステージが目に入った。光を反射する金色の額縁に飾られた写真──伝説の歌姫、哀麗の姿だ。


「わぁ……キレイ……」ルミナの目が輝く。華やかで美しく、可憐な笑顔が弾けている。


ヴァリオンも息を飲む。「哀……麗……」

写真の中の哀麗は笑顔が弾けていて眩しいくらい輝いている。

リュミールで見た哀麗は美しく可憐だがどこか哀しげで儚げな雰囲気を纏っていた...。


君に何があってハラス・ヴォルトと共に行動しているのか...。胸にトゲが刺さったように痛い。


二人は夜まで王都を見て回る。

屋台で輪投げを見つけたルミナは目を輝かせ、金貨を手に挑戦する。最初は外れたものの、次々と的中させ小さな勝利金が積み上がる。

「わあ…すごいな、ルミナ!」

「ついてるな!!!」ヴァリオンも思わず声をあげる。周囲の子供たちや見物人も拍手し、ルミナは少し照れながらも嬉しそうに笑った。


最後の勝負を終えると、広場の端から黒いローブの女性が歩み寄る。弓や矢も持たず、観光客のような格好だ。

「やあ、楽しんでるね」

ルミナは立ち止まり、見覚えのある笑みに目を見張る。

「マナさん!? トライデル港以来ですね!」

ヴァリオンも深々と頭を下げる。「本当に助かりました…」

「いやいや、大したことはしてないさ。それより随分儲かってるみたいだな」マナは謙遜しながらも、二人を王都案内に誘う。


「わあーいいんですか!?」ルミナの目はキラキラ。

「もちろん、ショーまで一緒に回ろう」


香辛料の匂いや焼き魚の香ばしい香りが漂う。

「わぁ…!すごい人ですね!」ルミナは目を輝かせ、店頭に並ぶ果物や珍しい魔法道具を指差す。

「本当に……こんな楽しい娯楽に場所は初めてです」ヴァリオンも感心したように周囲を見渡した。


「ここが王都の市場だよ。スパイスピザは絶品だから、試してみな」

とマナがにこやかに案内する。軽装で弓も持っていない、普段とは違う自然な姿だった。

ルミナが小さなピザを頬張ると、マナはそっと二人の様子を見ながら微笑む。


道を進むと、王都の運河に架かる橋に出た。水面に反射する夕日がキラキラと輝き、風に揺れる水面が美しい。

「この橋の下の水路は、昔密輸の取り締まりに使われたんだ」マナが説明する。

ヴァリオンは「なるほど……歴史を感じるな」と小声で感心。ルミナは魔法で瞬間的に景色を記録して楽しんでいる。

読者には見えないが、マナは二人の反応を注意深く観察していた。


さらに進むと、小さな娯楽施設が立ち並ぶ通りに出る。射的やカードゲーム、サイコロ賭けなどがあり、観光客たちが楽しそうに挑戦している。

「腕試しにちょうどいいんじゃない?」とマナ。

ルミナは得意げにサイコロを振り、勝利すると大金を手に入れた。周囲からの視線が一気に集まる。

「おおっ、ルミナまた勝ったのか!!すごい!」ヴァリオンは笑いながらも少し慌てる。

マナは冷静に、しかし微かに笑みを浮かべて二人の様子を眺めていた。


夕方になり、マナは「そろそろショー会場の方へ案内するね」と言い、賑やかな通りを抜ける。


ショー会場で、ルミナとヴァリオンは馬車で同行した冒険者仲間たちと再会した。

「見ろよ!!こんなに儲けちゃってさ」

「こっちもルミナが大当たりしちゃって!!!」

みんな笑い合いながら、王都の賑やかな雰囲気を楽しんでいる。


「ふふ……っ!!!楽しい国ですね、マナさ……あれ?マナさん……?」

ふとルミナが視線を向けると、マナの姿がどこにもない。


さっきまでいたはずのマナが、まるで風に溶けるように消えてしまった。


“娯楽”って、楽しいはずなのに、どこか不思議な響きがありますね。

夢中になるほど、現実が遠くなる。

でも、だからこそ人はそのひとときを求めてしまうのかもしれませんね。


アウレア王国での“娯楽の時間”。

彼らにとって、それが本当に“幸せな時間”だったのか――

もう少しだけ、この物語を見届けてください。

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