協力討伐
床には散乱した本や紙、巻物が広がり、カップや小瓶は割れたりひっくり返ったりしている。椅子は倒れ、机の上の書類はぐちゃぐちゃに混ざり合ったまま。壁に掛かっていた額縁は斜めに傾き、窓のガラスが割れ破片が散乱していた。
ヴァリオンは息を整えながら、周囲に散らばった物をちらりと見渡す。
ルミナはその場にぺたっと座り込み、膝立ちしているヴァリオンの袖を震える手で掴んだまま呆然としていた。
小さな手に自分の手を重ね「大丈夫だ……」とルミナに声をかけた。「は....い....」
二人はまだ心臓がドクドクと早鐘のように鳴っているのを感じていた。
2人は軽く身だしなみを整え、外に出た。
外の街は、混乱の渦中にあった。人々は叫び声を上げ、手に持った荷物や子どもを必死に守りながら走り回っている。道路を埋め尽くす人々の足音、悲鳴、窓から飛び出す物音が入り混じり、街全体が大きく揺れているかのようだった。
ヴァリオンとルミナは互いの手を握り合い、押し流されぬよう注意深く進むしかなかった。
その時、ひときわ大きな声が二人に届いた。
「君たち冒険者か!! 海底トンネルに魔族が現れたんだ!! 手を貸してくれないか!!」
振り向くと、甲冑姿の冒険者たちが必死な表情でこちらを見ていた。混乱の中でも、手を差し伸べるその姿に、ヴァリオンとルミナは自然と身構える。
こくりと頷き合い、二人は「もちろんです!」と答え、冒険者たちの後に続いた。
瓦礫や倒れた街灯、あちこちに水たまりが広がる海底トンネルへの道。
「これは……かなり危険だ」ヴァリオンは息を呑む。
先陣を切っていた魔法使い2人が声を張る。
「こっちから渡って!!」
空中に淡い光の橋が現れ、瓦礫を飛び越えられる道ができる。
もう一人は水たまりや泥濘の上に透明な魔法の床を敷き、二人の足元を安定させた。
ヴァリオンとルミナは互いにうなずく。
「すごい……これなら安全に行けますね!」
光の橋と魔法の床の上を滑るように進み、二人は瓦礫だらけのトンネルへ足を踏み入れた。
海底トンネルの半分は崩れ落ち、瓦礫が散乱している。水が裂け目から勢いよく流れ込み、暗い水面が揺らめく。歩ける場所はわずかで、足を踏み外せば濁流に飲まれる危険があった。
「気をつけて…!」
他の冒険者たちの声に、ヴァリオンとルミナは頷く。魔法で足元を安定させてもらい、慎重に進む。背後では、他の魔法使いたちも光の結界を展開し、瓦礫や水流を安定させながら進路を確保していた。
「魔族はどこに……?」
ヴァリオンが尋ねると、「この奥にいるらしい……」と声が返ってきた。
ゴクリと息を飲み進むと、トンネルの奥、瓦礫の隙間に魔族が見えた。
宙に浮かび、両手で淡く赤く光る魔法の球体を操っている。その光は暗い水面に反射し、揺らめく影が二人に迫る。
ヴァリオンとルミナは互いに視線を交わし、戦闘態勢に入った。
魔族が不気味に光る魔法の玉を手に構えた。
「うわっ……来るぞ!」
次の瞬間、巨大な衝撃波が瓦礫ごと、二人を含む冒険者たちの軍勢に押し寄せる。砂や水滴、崩れた石片が舞い上がり、視界が一瞬真っ白になる。
「こっちに任せて!」
前方で光が弾ける。二人の魔法使いが同時に結界を展開し、眩い光の壁が魔法の玉と衝撃波を阻んだ。衝撃の反動で瓦礫が跳ね返り、かろうじて一同を直撃から守る。
ヴァリオンは膝をつきながら息を整え、目の前の光景に目を見張る。
「す、すごい……!」
ルミナも肩で息をしながら、結界の魔法に守られた安心感と、迫りくる危険の両方に心を揺さぶられる。
魔族はなおも不気味な光を放ち、次の攻撃を準備している。
「魔力をこっちに!結界をもう一度展開するぞ!」
魔法使いたちが声を張る。ルミナも魔力をロッドに集中させ、エネルギーを流し込む。青白い光が結界に流れ込むと、光の壁が再び弾けるように広がり、魔族の魔法を跳ね返した。
「よし!今だ、武器を持っている者は攻撃開始だ――」
「任せろ!」
ヴァリオンも剣を構えた。
「うわっ…!」
目の前で熟練の冒険者たちが魔族の一撃で倒れていく光景に、ヴァリオンは思わず体が硬直する。
「く……っっ!!」
あんな強そうな人たちがあんなあっさりと倒れるとは……胸の奥がドクドクと高鳴り、恐怖と焦りで手元がぶれる。ルミナが心配そうにヴァリオンを見つめる。
ヴァリオンが前に踏み出した瞬間、魔族の一撃が迫る。
「ヴァリオンさん!!」ルミナの声が鋭く響く。
次の瞬間、ルミナの手から眩い光が弾け、爆発が魔族めがけて炸裂する。
衝撃波が巻き上がり、砂や水煙が舞う。魔族は一瞬怯み、空中に高く舞い上がった。
「ル、ルミナ……!」驚きと感謝が入り混じった声が漏れる。
ルミナは息を切らしながらも、「大丈夫ですか!?」と駆け寄る。
「総攻撃――!!!」
「は、はい!」
空を飛び回る魔族に向けて、ルミナだけでなく他の魔法使いたちも総攻撃を開始する。
「魔力を集中!皆の力を――!」
光の奔流が空中の魔族を包み込み、炎や氷、雷の結界が一斉に炸裂する。
弓や投擲武器も総動員され、矢や魔法の玉が雨のように降り注ぐ。
ヴァリオンは剣を握り、下から空中の魔族の動きを見据え、攻撃の隙を探す。
空中で暴れる魔族が徐々に高度を下げてきた。
「今だ!」ヴァリオンは剣を構え、魔族の隙を見極め一気に踏み込む。
「いくぞ…!」心臓の鼓動が耳に響く中、鋭い斬撃が魔族の腕に命中。
火花が散り、魔族は苦悶の声を上げ、バランスを崩してさらに落下する。
「捕らえろーー!」
戦士たちが一斉に魔族を取り囲む。
煙が舞い上がり、戦士や魔法使いの攻撃で魔族の体は揺れる。
ヴァリオンとルミナが息をのむ中、魔族はみるみる縮み、小さな塊のようになっていく。
煙が収まると、その中心には──見覚えのある姿があった。
「あ……広場に捜索願出されてた……ライオネルさん」
ルミナがそう指を指すと戦場の空気が一変した。
ボロボロになったライオネルが、目を瞑り静かにうずくまっていた。
一同は息をのむ。戦いの余韻と共に、彼の無事を確認する瞬間が、胸に重く響く。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございます!
皆さんはライオネルの魔族化どう感じましたか?
今後もヴァリオンやルミナの活躍を楽しみにいてくださいね!




