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黎明の誓い  作者:
23/46

混乱の轟音

宿を出た瞬間、ヴァリオンとルミナの前を、甲冑に身を包んだ兵士たちが列を組んで駆け抜けた。

鎧の金属が光を反射し、重い足音が石畳を震わせる。振動が地面を伝い、二人の胸に跳ね返った。


旗や槍が揺れ、兵士たちの表情は厳しく、声は低く統制されている。

「な、何事でしょう……」ルミナが小さく呟く。

遠くで響く号令が、日常の平穏を突き破り、耳に刺さった。


街の空気まで緊張に染まり、通行人は足早に去っていく。

ルミナの指先が小刻みに震える。ヴァリオンは背筋を伸ばし、視線を左右に走らせた。

「……ただ事じゃないな」ヴァリオンの声が静かに漏れる。


通りを歩く二人の耳に、小さな声が飛び込んできた。

「カイン!家から出ないで!」

怯えた顔の男の子を、母親がしっかりと抱きしめている。

母親の声は強いが、どこか不安げだ。子供の目には、光る涙。


周囲の人々も、いつもより早足で家や店に駆け込む。

兵士たちは通りを横切り、慌ただしい声や警告が飛び交った。

広場は、いつもの笑い声を失い、張り詰めた空気に包まれている。


ヴァリオンは小さく息を呑む。

「……都市全体が、落ち着かないな」

ルミナも視線を巡らせ、わずかに眉をひそめる。


ヴァリオンは足を止め、通りの慌ただしい光景をぼんやりと眺めた。

胸の奥で、あの日の記憶がふと蘇る――リュミールにハラス・ヴォルトが現れた日。

あの時も街全体が緊張に包まれ、行き交う人々の表情は硬く、空気は張り詰めていた。


「……あの時と、似ているな」

思わず小さく呟くヴァリオン。

胸の奥がざわつき、手のひらに微かな汗を感じる。


街は日常の喧騒を装っているが、どこか異様な気配が漂い、ヴァリオンの感覚を鋭く刺していた。



広場に足を踏み入れると、冒険者たちの様子もどこか不穏な空気を漂わせていた。

商人は慌ただしく品物を片付け、子供たちは母親にぎゅっと抱き寄せられ、足早に家路を急ぐ。

街角では兵士が声を張り上げて通行人を制し、遠くでは甲冑を着た軍団が駆け抜けていく。


ヴァリオンとルミナは、その中で二人組の冒険者に声をかけた。

「何かあったんですか?」

屈強な戦士は険しい表情で答える。

「神隠しが起きてるみたいなんだ……子供や大人まで忽然と消えるらしい」


「神隠し…!?」

二人は声を揃えて驚いた。


「気をつけた方がいいわよお」

魔法使いのお姉さんが眉をひそめ、短く忠告する。


二人が広場を歩くと、冒険者向けの掲示板に一枚の紙が貼られているのを見つけた。

「……あれ、何でしょう?」ルミナが指をさす。

ヴァリオンも近づき、紙に目を落とす。


そこには、行方不明者の捜索願が書かれていた。


ライオネル・バルディ

報酬:一千ゴールド――


思わず二人は目を見開いた。

「え、一千ゴールド…!?」

「えええっ!?」


その金額に、周囲の冒険者達の目がギラリと光る。

「こ、これは…逃す手はない!」

「俺たちが行くしかねえな!」


広場の空気は一気にざわつき、金に目を眩ませた冒険者たちが掲示板の前に群がる。

ざわめく声、紙が風に揺れる音、武器を握る手に力が入る様子——。


ヴァリオンは掲示板の貼り紙を見つめ、眉を潜めた。

胸の奥で、不安な予感がざわつく。

「神隠しか……」


ルミナは小さく目を輝かせ、ヴァリオンの肩に手を添える。

「私達も行きましょうよ!強くて、心優しいお仲間さんが見つかるかもしれませんし」


ヴァリオンは少し考え、頷く。

「うーん……じゃあ、俺たちも捜索してみるか」


「はいっ!」ルミナは元気よく応え、二人は掲示板から視線を離して、ノクスティア市の周辺の森を捜索する。


しかし広場に戻ると、ノクスティア地方の捜索はすでに終わっていた。

掲示板には「本日分の捜索完了」の文字が並び、勇ましく帰路につく冒険者たちの姿がちらほら。


ヴァリオンとルミナは、空になった広場を見つめ、足を止める。

「……もう、誰も残っていませんね、皆さんどこまで捜索に当たっているんでしょうね…」

ルミナの声は少し落ち込み気味で、手元の地図をぼんやりと見つめる。

「はぁ……出遅れたか……」ヴァリオンもため息混じりに肩を落とした。


二人は互いに視線を交わし、途方に暮れたように立ち尽くす。

かつて賑やかだった街の音も、今はどこか遠く、心なしか寂しさを帯びて耳に届いた。


今日は各自で、2部屋隣同士になるように宿を取っていた。

ヴァリオンは昨日の睡眠不足を補うため、自分の部屋でウトウトしている。


1時間ほど仮眠した後…

窓際に置いたカップが、微かにカタカタと音を立てた。

「……ん?」

ヴァリオンはまぶたを重く開け、眠気まなこで外を見やる。


「地震か……?」

窓際に立ち、外の様子を確認する。


その瞬間、遠くの海上から低く唸るような轟音が響いた。

水面が波打ち、都市の灯りが微かに瞬く。


「…………!!大きそうだな……」

手で壁を確かめるが、建物はまだ揺れ続けている。


次の瞬間、衝撃波のような爆発音が轟き、波しぶきが都市の端まで伝わった。


「っっっっ……!」

ヴァリオンが息を呑む間もなく、街全体に衝撃が走る。

建物の窓ガラスがガタガタと激しく振動した。


隣の部屋のルミナも飛び起き、髪を掻き上げながらヴァリオンの部屋に駆け込む。

「ヴァリオンさん!なんですか、この音……!」


波のように揺れるカップ、壁や床に伝わる振動。

部屋全体が不気味にざわめく。


海底トンネルから立ち上る黒煙と火花が夜空を赤く染める。

衝撃波が港町を包み込み、海面が波立つ。港の船が揺れ、地面も微かに振動、瓦礫が落ちる。


爆発でトンネルの先端がゆっくり海に沈む。

水柱は立ち上がるが、ノクスティア市までは届かず、かろうじて難を逃れる。


「ル……ルミナ!!窓から離れて!!」

「ヴァ……ヴァリオンさん……っっ」

ルミナの声は震えている。


ヴァリオンは咄嗟にルミナに覆いかぶさり、頭を抱えてうずくまる。

ガラス戸のミシミシという音が部屋に響き、割れる瞬間の冷たい空気が漂う。


外では遠く海底トンネルの爆発で揺れる波が窓に反射し、建物全体が押し潰されそうな衝撃を伝える。

揺れは長く続き、二人の体は床に押し付けられるように揺さぶられる。


「……大丈夫、か……」

ヴァリオンの声は震えていたが、必死にルミナを守ろうとする意志を含んでいる。


「は……はい……」

ルミナは顔色を真っ青にして手を震わせた。


激しい揺れがやっと収まり、静寂が部屋を包む。




読んでくださった皆さん、ありがとうございます!

今回は、都市の混乱や爆発、地震…と、二人が巻き込まれる緊迫のシーンを一気に描いてみました。

書いている間は、ヴァリオンとルミナの恐怖や守ろうとする気持ちをどう表現するかに集中して、とても楽しかったです。

皆さんは、今回の急展開、緊迫感を少しでも感じてもらえましたか?

次回は、更に楽しんでいただけるように準備しています。良ければ次回も見に来て下さいm(_ _)m


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