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黎明の誓い  作者:
17/46

国家魔法顧問会議

――国家魔法顧問会議。


会議室。長テーブルの周囲には、上層部の重鎮たちが揃っていた。


ハラス・ヴォルト

洗脳や結界魔法などを扱う闇魔導士。リュミールに拠点を構えている。


サイラス

冷ややかな目つきにメガネをかける若き医師。手には常に小さなメスや薬の小瓶を転がしており、その指先の動きは軽やかでありながら、どこか危険な予感を漂わせる。人体実験や魔族化への興味を隠さず、目の奥に異様な好奇心と狂気の輝きを宿す。時折小瓶をジャグリングのように弾ませながら、誰も気付かぬうちに微細な毒や薬剤の影響を測っているかのようだ。その存在は、長椅子に並ぶ他の人物たちの間にも、不穏で張り詰めた空気を撒き散らしていた。


オルヴァン

長椅子に座る4人のうち、ひときわ目を引くのはオルヴァンだった。その体躯は堂々たるマッチョ体型で、腕の筋肉は鎧の袖をぱつんぱつんに押し上げている。長椅子に座る姿はまるで王国の守護者そのもの。一見すると威圧的だが、冷静な眼差しと戦略家の佇まいが、彼の存在感をさらに際立たせていた。


ザリュード

長椅子の端に座るザリュードは、深く刻まれた皺と長く伸びた髭を持つ老魔導師だ。その髪と髭は一体化するように顎の下で束ねられ、深紅のターバンを頭に巻いている。まるで時代を超えた知識の象徴のように、目は静かに光り、魔法や禁断の儀式に没頭してきたことを物語っていた。手元には古びた魔法書や小瓶が並び、指先で軽く魔法の結界のような動きを繰り返す。その存在だけで、部屋の空気に不思議な威圧感と知性の香りを漂わせていた。




「マナとシオンはどうした」

ザリュードが髭を撫でながら問いかける。


「シオンは魔法陣の前に待機しております」とオルヴァン。

「マ、マナはもうすぐ到着予定です……」

ハラス・ヴォルトは普段の威圧的な雰囲気とは打って変わって、ヘコヘコと愛想笑いを浮かべる。


「では、良い、始めよう。まず報告からだな。ハラス・ヴォルト」

オルヴァンは視線を向けず書類に目を落とし、ハラス丸に指示を出した。



ハラス丸は少し腰を折って口を開いた。

「は!はい……!リュミールにて、対象者三名――哀麗、ブレイブ、パルス――を隔離しております。施設と警備は万全です」


「そうか……頼んだぞ。お前の管理のもとで全て、厳重に注意しつつ、問題なく進めるんだ、いいな!」

「は……っ、はい!」

その声は、リュミールでは見せない、どこかおどおどした響き。テーブルの向こうに座るサイラスやザリュードの鋭い視線に、背筋を伸ばすハラス・ヴォルト。


「し、施設内の警備は最優先で配置しており、対象者の行動範囲も完全に制限済みです。万一の異常時には即時対処可能です」


サイラスは興味深そうに報告書に目を落とし、手元で指先をもぞもぞ動かす。

「ふむ……なるほど。では……安全性は確保されている、と」


オルヴァンは書類を静かに置き、冷静に評価する。

「それでは、この三名の動向を引き続き監視し、異常があればすぐに報告するように」


重苦しい沈黙がしばらく広がる。ハラス丸は深く息をつき、机に手を置きながら小声で「承知しました……」と繰り返した。


会議室の扉がバタンと開き、慌てた足音とともに遅れて到着したのは、ショートカットの女性だ。

「失礼しました、遅れて…!」


深く一礼をし、少し息を整えてから自己紹介を始める。

「通称マナです。変装や会話術で相手の懐に入り、情報屋として活動していました。以後よろしくお願いします。」


その背中には弓矢と人形が2体背負われ、整った容姿と今にも動き出しそうな雰囲気が、会議室に不思議な緊張感を漂わせた。



冷静なオルヴァンが手元の書類を指しながら言う。

「次の魔族化のターゲットはこいつだ――」


その指示に他のメンバーも頷き、会議室の空気は一瞬、張り詰める。


「魔法陣に確保してあります……こちらの部屋に……」とザリュードが先陣を切り、5人は移動を始める。


オルヴァンは移動中に資料に目を落とし、冷静な声で指示する。

「次の魔族化のターゲットはノクスティア市のライオネル・バルディだ……闇組織から高額でスパイを雇い動き回る目障りな小鼠だ」


サイラスは薄笑いを浮かべ、興味津々で尋ねる。

「ライオネルですか……いいですねえ?やはり人体実験と魔法融合の対象に最適ですね……。魔族化の反応を観察するには最高の素材かもしれません」


ザリュードは深くうなずきながら呟く。

「禁断魔法陣を用いるなら、対象の意思と精神構造も詳細に調べる必要がある……準備を怠るな」


「ところでマナ……リアン・アーヴェリア王子の行方はどうなっている?」

「はい……王子らしき者はいませんでした……」


「そうか……トライデル港でピラニクスを放とう……そこに現すやもしれん」

「はっ!!」


部屋の中は青く光る不思議な幾何学的空間。

壁も天井も床も、微かに揺れながら光を放ち、異世界に迷い込んだような錯覚を覚える。


その中心には大きな魔法陣が描かれ、囚われたライオネルが座る。

魔法陣の光が彼の体を包み込み、意志とは関係なく力強く固定しているかのようだ。

微かな振動が壁面に反射し、部屋全体が生き物のようにうねっている。静寂の中、ライオネルの動揺と魔法陣の力強さが混ざり、異様な緊張感を漂わせていた。


魔法陣の近くには、胡座をかいた人物が静かに座する。

深緑の鎧に身を包み、肩や腕には裁きの象徴の刻印を刻んだシオンだ。

青い光に照らされ、瞑目したまま威圧的な気配を放つ。周囲の空間はその存在感で引き締まり、部屋全体に不穏な緊張が漂っていた。


シオンは動かず、微かに呼吸する音だけが部屋に響く。

まるで「ここで裁かれるべき者は誰か」と問いかけるかのように、青い光と魔法陣の振動が彼の存在を際立たせていた。


重苦しくも整然とした上層部の面々。

会議室の空気から、計画の緊迫感、そしてそれぞれの野望や狂気が、ひしひしと伝わってくる。

その視線は、囚われたライオネル、そしてこれから動かされる世界へ向けられていた――




ヴァリオンが魔力の渦を抜けると、視界がぱっと開け、透き通る青の海が眼前に広がっていた。

光を受けて水面がきらきらと瞬き、潮の香りが鼻腔をくすぐる。


「うわ……すごいな、ここは島みたいだが、どこなんだ?」

ヴァリオンはキョロキョロと辺りを見回す。足先に波飛沫がかかる。

「あ、ヴァリオンさん気を……」


バシャアー!!

潮風に混ざる水しぶきがヴァリオンの顔を打つ。

目の前に飛び出してきたのは、海から這い上がった魚系の魔族。背中の鱗が青白く光り、尾びれで砂を巻き上げる。光に反射した目が不気味に光り、鋭い爪をヴァリオンに向けて振り下ろす。


「ええー!?」

「ヴァリオンさん!」

ルミナの声で、ヴァリオンの身体が反応し、掠っただけの爪をわずかに避ける。

水の飛沫と尾の風圧が耳を打つ。


ルミナが呪文を唱えると、淡い光のバリアが魔族の爪を阻み、跳ねる砂と水の飛沫が光に揺れる。光の揺らめきに目がくらみそうになりながらも、ヴァリオンは深く頷き、再び間合いを詰める。


魔族が尾びれを振り上げ、砂と水の渦を巻きながら跳躍して襲いかかる。砂が光に反射して一瞬視界を奪われ、飛び散る水滴が肌を叩く。ヴァリオンは咄嗟に横に飛び、爪を掠められながらも反撃の一撃を斬りつけた。


同時にルミナの魔力が魔族を弱体化させ、二人の呼吸がぴたりと合う。光に包まれた水面が揺れ、砂と波がきらめく中、ついに魚系魔族は海の中へ倒れ伏した。


海辺に静けさが戻り、濡れた砂と水滴が二人の足元で煌めく。ヴァリオンが息を整えながら小さく笑うと、ルミナもほっとしたように笑みを返した。



「ヴァリオンさん!初めて闘ったとは思えない程センスがありますよ!」


ルミナに褒められ、ヴァリオンは剣の柄をぎゅっと握りしめたまま、しばらく立ち尽くす。胸の奥で戦いの昂ぶりがまだ静まらず、頭はぼーっと遠くを漂っている。

倒れた魔族を見下ろし、まだ信じられないように小さく呟いた。

「……倒したんだ……」

心臓の高鳴りと、手に残る振動が、初めて自分の力で倒した実感を確かに刻んでいた。


今回も最後までお読み下さりありがとうございます!!


アスティア君は少しお休みでヴァリオン編に再び戻ってきました!

濃いキャラ揃いの中にヘコヘコしているハラス丸。不穏な幕開けになりましたが色々と絡ませて行こうと思ってます!!!

今後の展開を楽しみにして下さると嬉しいです!!

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