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黎明の誓い  作者:
15/46

魔犬の咆哮

バン……ッ!


視界が一瞬、真っ白に弾けた。

鈍い衝撃とともに、脳天を突き抜けるような痛みが走る……。


「……がっ……!?」


頭から血が流れたように錯覚する。

だが――落ちてこない。

指先で触れても、そこには何の傷もなかった。


「は………………っ!?」

確かに今俺は脳天を貫かれて倒れたはず……?


目の前に立つパルスは、ニヤッと笑っていた。

まるで現実の輪郭が揺らぎ、幻と現が溶け合うかのように。


「……これは効くんだぁ……」

光のない瞳が、ゆらりとアスティアを映す。


「……ま、幻……か……」

アスティアは唇の端を上げた。


「お……脅かしやがって……」



「……あは……っ!じゃあ、今度は少し……強めに試してみようか」


指先に魔力が集まり、床の石畳が波打つ。


「アスティア――君の“心”って、どこまで壊せるのかなあ……」

その声は、まるで論文を朗読するかのように淡々としていた。


パルスは静かに指先を見つめる。

その表情には怒りも焦りもない。ただ、興味だけがあった。


「……不思議なんだ……どうして君には、ボクの魔法……効かないんだろう」


低く笑いながら、彼はゆっくりと手を上げる。

魔力が凝縮し、淡い光の輪がアスティアの足元を取り囲む。




「君の“心”の形を見てみようか。どんな構造をしてるのか、ちょっと――調べたいな」


「さ、さっきから……何言ってんだ……お前」


石畳に刻まれた紋様が光り、空気が一瞬で凍りつく。

パルスの瞳が紅く揺れ、まるで人の感情ではない何かがそこに宿った。




――静寂の中、パルスの指先に力が集まる。

その先に広がるのは、闇でも記憶でもない――青白く燃える炎だった。


炎は小さな光の粒から始まり、アスティアの精神そのものを形作るように揺らめく。

どれだけ外部の魔法が触れようとしても、芯の部分はびくともしない。

まるで「ここだけは絶対に折れない」と宣言するかのように、光を放ち続けている。


パルスは息を呑んだ。

「……これは……効かないわけだ」


炎は攻撃に反応して大きく揺れることもあるが、決して消えず、むしろ光を増して周囲の闇を押しのける。


その揺れの中に、アスティアの意志と誓いが折り重なり、温かく、強く、純粋な形で存在していた。


守りたいもの、失いたくないもの、そして生き延びるための覚悟――。

すべてがこの炎に凝縮されている。



パルスの瞳がわずかに細まる。

「……壊れない。僕の魔法はこんなにも強いのに、攻撃は一切届かない……」

その顔には、恐怖と驚嘆が混ざった奇妙な笑みが浮かぶ。



「面白い……試してみようかなあ。

体を痛めつけたらどんな顔をするのかなあ……。

ますます壊したくなって来た……アスティアアア……」


パルスが片腕を上空に向けると、ねっとりとした闇が現れた。

指を動かすと、闇の渦がねじれ、冥界の裂け目が開く。


そこから魔犬の影が浮かび上がる。

毛並みは黒く、目は赤く光り、口元からは煙のような影が滲む。



パルスはにやりと笑う。


魔犬が闇の裂け目から飛び出し、上空を旋回して、アスティアに向かって吠える。


その瞬間、冥界の冷気が吹き抜けた。


「い、犬う!?で…………っか!!

お前の飼い犬か!不気味過ぎんぞ!!」


パルスの脇に佇む魔犬は、アスティアの背丈を悠に超える。


「しゅうう……」

口から煙が出続けている魔犬。


「へ、変な鳴き声だな……普通ケルベロスじゃねえか……?お前らみたいな奴が飼う犬ってよ」


「やっちゃえ……」


「グォォオ……!」

魔犬の低い唸り声が空気を震わせ、鋭い牙と爪を光らせてアスティアに飛びかかる。


「くく、来るなら来い!犬っころ!」

アスティアはそう言い切って構えた。


アスティアは素早く身をひねり、飛びかかる魔犬の前脚を腕で受け止めた。そのまま力を込めて押し返す。

床に響く爪の引っ掻き音と、魔犬の低いうなり声がこだまする。

アスティアの胸は高鳴り、心臓が跳ねるが、冷静さを失わないよう必死に自分を抑える。


魔犬の咆哮とともに床を爪でひっかく。アスティアは後ろに跳び、回転しながら魔犬の側面に蹴りを入れる。

痛みに吠えた魔犬をそのまま抱え上げ、床に叩きつける。だが、暴れ狂う力に腕が震む。


「甘く見るなよ!」

アスティアは素早く右手で顎を払い、左膝で腹を突く。魔犬は一瞬ひるむが、再び立ち上がり、低く唸りながら牙をむく。


冷気が肌を刺し、闇の裂け目から吹き出す冥界の風が髪を揺らす。

息を整えつつ、次の一撃を狙うアスティアの目は、鋭く光った。


魔犬の牙が肩をかすめる。鋭い痛みが走り、思わずうめき声が漏れそうになる瞬間、犬の唸り声が耳に響いた。


「……小麦か?」

魔犬は近くにいる小さな存在に敏感に反応していた。アスティアはその瞬間を見逃さず、素早く床に飛び降り、魔犬の前脚を巻き込み、バランスを崩させる。


そのまま背後に回り込み、両腕で抱え上げ、床に叩きつける。

魔犬は力強く暴れるが、アスティアの腕は屈強でびくともしない。


アスティアは呼吸を整えながら、心の中で誓った。

(小麦を守る……絶対に……!)


闇の裂け目から漂う冷気が身体を刺す。魔犬の赤く光る瞳が、アスティアを鋭く睨む。

爪の音、唸り声、息遣い――すべてが緊迫の波動となり、空間を震わせた。


アスティアは一瞬の隙を見逃さず、魔犬の首元を狙って踏み込み、全力で抱え上げた。

「伏せろ!」

力を込めて床に叩きつける。魔犬は呻き、砂煙と共に倒れ込むが、まだ完全には諦めない。


床の石畳が振動し、冥界の裂け目がかすかに揺れる。

その光景に、アスティアの胸の奥で、守る意志がさらに強く燃え上がった。

最後まで読んで下さった方ありがとうございます!


作者は動物全般的に大好きですが、飼うなら犬派です。ですが可愛い野良猫ちゃんがうちの庭でいつも寛いでいるのが可愛すぎて眺めていたら、目が合い逃げられます。怖いんですかね?

魔犬って何食べるんでしょうね?大きいから食べる量も多そうだし、体洗ったりするんでしょうかね。お世話とか大変そうだなと書きながらつい考えてしまいました。


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