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海の香り  作者: 幸人
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 文化祭も無事終わり、息つく暇のなく冬がやってきた。

 冬の朝は、例外なく布団から出るのが至難の業となる。

「お兄ちゃん、朝ごはんできたって」

 乃愛の元気な声が、眠りの世界に戻ろうとする俺の意識を引き戻した。

「さむっ」

 冷え切った空気が、体の中へ入ってきた。布団の誘惑をまだ完全に断ち切れていなかった。

「海人君起きた?」

 キッチンの方から、のぞみさんの声が聞こえてきた。寝ぐせによってぼさぼさになっている髪をかきながら、リビングへ向かう。

「今日は、海人君が主役の日なんだからね」

 主役という言葉に、テンションが上がってくるのを感じた。

「ご飯早く食べてその髪直してね」

 窓から差し込む朝日までもが、俺の誕生日を祝福してくれている気がした。


「海人ももう16歳かー。時が経つのは早いな」

「綾音さん、おばさんみたいなこと言うのは、やめてください」

「誰がおばさんだって?」

 綾音さんの拳が、頭上から降ってきた。

「暴力反対」

「そんなことよりみんなが来るまでに用意済ませちゃうよ」

 袖をまくった綾音さんによって俺の訴えは、あっさりと受け流された。


「海人君お誕生日おめでとう」

「晴香来てくれてありがとう」

 誕生日を祝ってくれる幼馴染の存在に感謝した。

「その子が晴香ちゃん?」

 のぞみさんが、やってきた。

「はい」

「海人君、この人がのぞみさん?」

「そうだよ。晴香ちゃんよろしくね」

「よろしくお願いします」

 のぞみさんと晴香が、友好の握手を交わしていた。

 テーブルには、数々の美味しそうな料理が並んでいた。四人用のテーブルに八人で囲む。

「はい。みんな手を合わせて」

 綾音さんの合図で、一斉に手を合わせる。

「いただきます」

 目の前に広がる料理達に、食欲が促進させられる。

  

 大量にあった料理も、平らげられ食器は次々と下げられていった。

「海人君、昔から生クリーム好きだったよね」

「よく覚えてたね」

「幼馴染なら当たり前だよ」

 そう言いながら、口へとケーキを運ぶ。すると、左の方から手が伸びてきた。

「海人君、ほっぺたにクリームついてるよ」

 のぞみさんが、生クリームがついている指を舐めた。妖艶なその姿に心を奪われた。

「のぞみさんあんまり変なことしないでください」

 晴香に叱られたのぞみさんは、小さく舌を出す。いたずらっぽく笑うのぞみさんは、俺が初めて見た姿だった。


「まぁ、私は海人君と一緒に寝てるけどね」

 のぞみさんが、謎のマウントをとっていた。

「それって乃愛ちゃんもですよね?」

「だから??」

 今までに感じたことのないのぞみさんの圧を感じた。

「私は、二人でお風呂入ったことありますよ」

「でも、それって小さい時の話でしょ?」

 のぞみさんも晴香も引く様子がなかった。綾音さんに助けを求めようと視線を向けると、大斗共に笑っていた。

「綾音さん助けてくださいよ」

「海人、頑張れよ」

 綾音さんの横で笑っている大斗の声に、若干の殺意を覚える。

「大斗も助けろよ」

 俺の助けを求める声にも、大斗はただ笑っているだけだった。


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