表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/19

18

 月に照らされたいつもの海をいつもの皆で眺める。

 波の音が、沈黙を許してくれている気がした。

「大人になってもこうやって四人で遊べるのかな?」

 大斗が、静けさを破る。

 目を閉じれば、三人との思い出が蘇ってくる。

「未来のことは分からない。だけど、みんなとなら会いたいときに会えると思うよ。私は」

 大斗の問いに晴香が答える。

「俺もそう思うよ」

 晴香の意見に心から賛成する。

 そして、どこか心地の良い沈黙が訪れた。俺たちは、見えない水平線に思いを馳せる。


 十月も入り、ようやく暑さも落ち着いてきた。

「いらっしゃいませ」

 入り口が開き、客が入店した。

「一名様ですか?」

「はい。ってえ??」

 突然驚きの声をあげられた。

「飯島君?」

 名前を呼ばれて声の主にようやく気づく。

「石野先生?」

 石野先生は。軽く頷く。

「ここでアルバイトしているの?」

「そうです。先生は学校の帰りですか?」

「うん。そろそろ席に案内してくれる?」

「はい。こちらです」


「ゆっくり食べていってくださいね」

「ありがとう」

「ねぇ、ここで働いているのって飯島君だけ?」

「大斗も、いや武山も一緒にバイトしています」

「飯島君と武山君とても仲良さそうだよね」

「幼稚園からの仲ですから」

「そうなんだ」

「若永と諸里もですけどね」

「ねぇねぇ、もしかして武山さんと諸里さんって付き合っているの?」

「やっぱり分かりやすいですか?」

「分かりやすいね」

 先生が、水の入ったコップに手を伸ばす。

「飯島君と若永さんはどんな仲なの?」

「晴香ともただの幼馴染ですよ」

「ただのねー」

「はい。そうです」

 石野先生は、何か勘違いしている。

「先生、ニヤニヤしすぎですよ」

「ごめんごめん」

 先生はそう言いながら、水を喉に流し込んだ。

「美味しかったよ。また来るよ」

「お待ちしています」


 十一月に入り、学校は文化祭一色に染まっていた。

「精が出るね」

 教室の扉が開き、石野先生が入ってきた。

「でも、遅くなるから切りの良いところで帰りなよ」

 先生に言われ、窓を見ると外はすっかり暗くなっていた。

「はーい」

 愛菜が元気よく返事していた。

「そろそろ帰る?」

「そうだね。みんなで作業したからだいぶ進んだね」

 時計に目をやると、短針が七時を差していた。

「海人も遅くまで残ってくれてありがと」

「全然いいよ。俺のクラスでもあるから」

 大斗が見せた笑顔で、放課後残って良かったなって思えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ