18
月に照らされたいつもの海をいつもの皆で眺める。
波の音が、沈黙を許してくれている気がした。
「大人になってもこうやって四人で遊べるのかな?」
大斗が、静けさを破る。
目を閉じれば、三人との思い出が蘇ってくる。
「未来のことは分からない。だけど、みんなとなら会いたいときに会えると思うよ。私は」
大斗の問いに晴香が答える。
「俺もそう思うよ」
晴香の意見に心から賛成する。
そして、どこか心地の良い沈黙が訪れた。俺たちは、見えない水平線に思いを馳せる。
十月も入り、ようやく暑さも落ち着いてきた。
「いらっしゃいませ」
入り口が開き、客が入店した。
「一名様ですか?」
「はい。ってえ??」
突然驚きの声をあげられた。
「飯島君?」
名前を呼ばれて声の主にようやく気づく。
「石野先生?」
石野先生は。軽く頷く。
「ここでアルバイトしているの?」
「そうです。先生は学校の帰りですか?」
「うん。そろそろ席に案内してくれる?」
「はい。こちらです」
「ゆっくり食べていってくださいね」
「ありがとう」
「ねぇ、ここで働いているのって飯島君だけ?」
「大斗も、いや武山も一緒にバイトしています」
「飯島君と武山君とても仲良さそうだよね」
「幼稚園からの仲ですから」
「そうなんだ」
「若永と諸里もですけどね」
「ねぇねぇ、もしかして武山さんと諸里さんって付き合っているの?」
「やっぱり分かりやすいですか?」
「分かりやすいね」
先生が、水の入ったコップに手を伸ばす。
「飯島君と若永さんはどんな仲なの?」
「晴香ともただの幼馴染ですよ」
「ただのねー」
「はい。そうです」
石野先生は、何か勘違いしている。
「先生、ニヤニヤしすぎですよ」
「ごめんごめん」
先生はそう言いながら、水を喉に流し込んだ。
「美味しかったよ。また来るよ」
「お待ちしています」
十一月に入り、学校は文化祭一色に染まっていた。
「精が出るね」
教室の扉が開き、石野先生が入ってきた。
「でも、遅くなるから切りの良いところで帰りなよ」
先生に言われ、窓を見ると外はすっかり暗くなっていた。
「はーい」
愛菜が元気よく返事していた。
「そろそろ帰る?」
「そうだね。みんなで作業したからだいぶ進んだね」
時計に目をやると、短針が七時を差していた。
「海人も遅くまで残ってくれてありがと」
「全然いいよ。俺のクラスでもあるから」
大斗が見せた笑顔で、放課後残って良かったなって思えた。