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 空腹に耐え、待ち望んだ昼食を告げるチャイムが鳴った。

「海人、一緒に食おうぜ」

「うん」

 大斗の誘いに二つ返事を返す。

 大斗と共に弁当を広げていると、愛菜と晴香がやってきた。

「私たちも一緒に食べていい?」

「うん。いいよ」

 机を移動して、四人で机を引っ付ける。

「海人の弁当美味しそうじゃん」

 大斗が、覗き込んできた。

 俺の弁当は、いつもより色とりどりだった。

「それものぞみさんっていう人が作ったの?」

「うん。朝早くに起きて作ってくれたんだ」

 愛菜の質問に、すぐに答える。

「海人君が作るお弁当の方が負いそうだったけどな」

「ありがとう。晴香」

「う、うん」

 何故だか大斗と愛菜が見つめ合って、苦笑いを浮かべていた。


二学期が始まって、三週間が経とうとしていた。

 授業中の廊下は静かで新鮮だ。

 入学してから一度も訪れたことのない空き教室の扉を開く。

「飯島君、そこに座って」

 石野先生に促され、席に座る。

「急に担任が変わって驚いたよね」

「まぁはい」

 俺と先生の間にある机が、窓から入ってきた太陽の光に照らされ輝いていた。

「毎学期二者面談するんですか?」

「ううん。本当は一学期にするんだけど、今回は担任が変わったから特別に二学期にもしてるだけだよ」

「そうなんですね」

「高校の生活は、もう慣れた?」

「まぁまぁですかね」

 先生の話を半分聞いて、半分聞き流していた。

「これから全然変えても良いんだけど、今のところ考えている進路とかある?」

「一応就職で」

「一応?」

「進学する気はないので、就職かなって」

「無気力って感じだね」

 図星を突かれたが、

「そんなことはないですよ」

「なるほどねー」

 石野先生のことを見ていたら、とある疑問が浮かんでくる。

「先生は、何で教師になったんですか?」

「え?」

「学校の先生ってブラックなイメージしかないんですが」

 石野先生は、少し微笑んでいた。

「確かに飯島君が言うように、教師はブラックだよ。やりがいの搾取もいいところだよ」

 目の前のこの先生は、躊躇うこともなくそんなことを言った。

「ならなんで?」

「人が成長する過程を見守りたいからかな。さらに贅沢を言うなら、その成長を手助け出来たら最高かな」

 その言葉は、綺麗ごとにしか聞こえなかった。

「まぁ、時間はたくさんあるからゆっくり考えたらいいよ」

「分かりました。考えときます」

 その場しのぎの言葉を吐く。

「何かあったら相談してね」

「はい。ありがとうございます」

「じゃあ、次の人呼んできて」

 席を立って、後ろの扉から出ていく。

 廊下は、先程よりも静かだった。


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