きゅうわめ ー 「マニアと布教」
カラカラカラ。
「来年度の生徒会予算案です。ご査収ください。」
カラカラカラ。
「はい。しっかりといただきました。お返事はまた後ほどします。」
カラカラ、ピタッ。
「お願いします。……あの、校長先生?なんでここにハムスターが居るんですか?」
ゴクゴク、プハーッ。
「ハムスターって愛らしいだろ?この子を眺めているだけで勤務時間が終わるんだよ。ハハッ。」
会長は渋い顔をした。この学校、大丈夫なのだろうかと。
カラカラカラ。
「ほら、また走り出したよ。一生懸命に走ってて可愛いよねぇ。」
「……そうですね。そう思います。では、私たちはこれに……何してるのよ。」
呆れた会長の視界には、ハムスターを愛でる2人の男が写った。1人は校長。もう1人は……ウチの副会長。
「ハムスター眺めてるんですよ。ほら、頑張って走ってて可愛いじゃないですか。」
校長はまだ自分の椅子から、部屋の隅のケージを眺めていたが、副会長はもう、齧り付くように近づいていた。
「君、なかなか見る目あるね。家で飼ってたりするのかい?」
「いえ、そういう訳ではないです。ただ……心惹かれて。」
私は呆れた。しかし、自分も同類であるために、それを口には出せなかった。
その後、2人の会話は下校時刻まで続いたらしい。というのも、私は機を見てとっとと帰ったからだ。だが、次の日の生徒会では、やけに満足気な副会長がいた。
コンコン。「失礼します。」
「いやーやっぱりね?種をあげた時の顔がーあっ教頭先生。すみませんこれをお願いします。」
「これは?」
「来年度の生徒会の予算案です。お願いしました。ーでね、種もさ、ひまわりだけじゃなくて色んな種をあげたらさー」
副会長の子は目を輝かせて聞いているけど……
はぁ、この無能校長め。仕事押し付けるだけ押し付けやがって。
はぁ……