ろくわめ ー 「集会とハムスター」
ここは体育館。全校生徒が定期的に集められる場所だ。
ガヤガヤ
「……」
ガヤガヤ
「……」
ガヤガヤ
「……ピキっ」
ガヤガヤ
「あのですね。」
体育館に低い声が響く。その一言で全校生徒からの音が消えた。
「皆さん。校長が前に出たら、というよりも、こういう場では、静かにしていなさい。それが、人の話を聞く、態度でしょう。」
「私は、皆さんに、敬意を持って、人と接してもらいたい。」
クスクス
「平清盛や、薩長同盟のように、自分が1番偉くなろうと、思うことをやめなさい。野心は、時に、人を傷つけますから。」
クスクス
耐えきれずに誰かが吹き出した。
それにつられて、全校生徒が一斉に笑い出す。
だって、片手にハムスター、もう片手に台本持ってるんだもの。というか、この状況用の台本をさっきゴソゴソと出していたから、余計に面白い。ハムスターはずっと校長の手を噛んでなんか顔ひきつってるし。
「今学期は、皆さんの自制の学期に、して欲しいものですね。」
さっきはうるさくて耐えかねたみたいな反応した癖に、この笑い声は意に介してない。その事実がさらに笑い声を大きくさせる。
「以上で、簡単ですが、挨拶とさせていただきます。」
あの、校長先生。スタートよりも大分騒がしくなってます。
「教頭先生、頂いた台本通りにしてきましたよ。」
「私の台本にハムスターは出てこないのですが。」
「いやー、噛みつかれて指が痛かったです。」
「あと、騒がしくなったら咎めてくださいよ。」
「いいじゃないですか。楽しそうで。」
(無能校長め。いつかその座を奪ってやる。)