いちわめ ー 「ドッキリと靴」
開いたばかりの校門を1台の自転車が過ぎ去る。駐輪場に自転車を停め、靴を履き替える。白い息を吐きながら、職員室に向かって鍵を貰う。
まだ誰もいない学校。鼻歌と共に階段を上る。一番乗りの男、結城 海斗はテンション高く教室の鍵を開ける。
「いっちばんのりぃ!ガチャ」
しかし、奴は息を飲んだ。
「掛かったな。うつけが。」
なぜなら!校門の時からずっとナレーションをしていたこの俺が、すでに教室にいたからさ!
「いや、鍵……かかってたんですけど。」
「いや窓から入ったが?」
そう!この驚き顔を拝む為だけに、昨日のうちに窓の鍵を開けておき、こいつより早く学校に来て教室忍び込み、電気もつけずに待っていーー
「ヴェクションッ!」
「暖房つけないから。」
「そんなことしたらバレますやん。」
「風邪でもひいてろバカ。」
……ん?バカなら風邪をひかないし、バカじゃなかったら風邪をひいていないのでは?
そんなじゃれ合いしていると、徐々に登校してくる人も増えてくる。
「おはよーって、今日も2人が先にいる訳?あんたら暇なの?」
この人は「月島 紅葉」。このクラスの学級委員だ。"くれは"なのか"もみじ"なのかは諸説ある。男子は主に"もみじ"派だ。
「朝に登校以外をする方が変だろ。」
「そーだそーだ!」
「うーん。そういう訳じゃないのだけど。あ、暇なら私の学級委員の仕事を手伝ってくれてもいいのよ?」
ええ、喜んで!
「誰がやるかよチビ。」
やべ。心と口の声間違えた。
「あ゛?」
「ハイ!ヤリマス!やらせて頂きます!」
「へえ!私とっても嬉しいわ。」
うーん。笑うなら目までにっこりした方が可愛いぞ?という言葉は流石に胸にしまっておこう。怒ってる人と違って、しまう胸が俺にはあるから。
……ん?さらに目付きが悪くなったぞ?
あ、そういえば。コホン。人の心の声を読んでいる読者の皆様。ご機嫌よう。俺の名前は「咲良 根」。天才的な高校生だ。この学年の1位で、俺の上に立てる者はいなーー
スパーン!
「痛ってぇ!おい!テメ海斗ゴラァ!何靴でしばいてくれてんねん!」
「いや、お前の愉悦の雰囲気を感じたから。まぁ、不慮の事故よ。」
「故意じゃん。思いっきり故意じゃん。1位に嫉妬するのはわかるけーー」
スパーン!
「2度も……2度もぶったな!親父のこともぶったことないのに!」
「お前と父親のことは知らん。愉悦してるお前が悪い。」
「いーや?ずっと2位のお前がわるーー」
スパーン!
いや何回靴アタックを仕掛けてくるんだよ。ハゲるて。
「助けて♡紅葉いいんちょ♡」
「……」
え、無視ですか。
「……やっと止まったか。紅葉の手伝いも終わったし、これで僕は予習の続きができる。」
「ヒィン……」
この乱暴男は「結城 海斗」。至って真面目ちゃんで、頑張って頑張って勉強してる。でも、俺には未だ勝ったことがない。つまり学年2位から俺を羨望の目で見てーー
スパーン!
ああ、もう嫌。あの、はい。大人しくしときますから。
「にしてもいい音鳴ったね。あの太鼓。」
「僕もそう思う。こんどはバチで叩こうかな。」
「あの、お2人さん?私の人権は……?」
「「ない。」」
「This is Japan!」