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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛と死を乞う

作者: 嶼船井

本書はChat GPTによって日本語に翻訳されていますが、一部に誤りが含まれている可能性があります。ご了承ください。

  “墓守”

  

  墓守はいつもと変わらず、遠くの都市を眺めていた。

  「ここで何をしているの?」

  それは、彼がこの場所で聞いた最も澄んだ声だった。

  「誰かを待っているんだ。」

  墓守が振り向くと、背後には小柄な少女が彼を見つめていた。少女の不思議そうな視線を感じながら、墓守は力なく微笑みを浮かべた。

  この墓地は荒れ果て、黄褐色の土地には十字架が立ち並んでいた。地面の下には、静寂と不安、諦念と憎しみが深く埋もれている。それは、氷のようなベッドから這い出し、怒りに身を任せたくなるほどのものだった。

  墓守は穏やかに立ち尽くし、いくつもの墓の前で、オフィスビルに沈む夕日を見つめていた。

  いつもと違うのは、普段は車が通らない道に、今日は騒がしいクラクションの音が響いたことだ。車から降りた男たちは、少女のそばで不満を口にしていた。

  「お嬢様、こんなところに来るなんて、何度も無理しちゃいけないって言ったじゃないか。」

  墓守はその騒々しい声と足音に耳を傾け、少女が去っていくのを見送った。

  彼はいつも通りだった。

  ——

  少女の澄んだ声が、墓守の耳元でその足音と共に響いた。

  「あなたの名前は?」

  「忘れた。」

  「どうして自分の名前を忘れるの?」

  「忘れたから忘れたんだ。」

  少女は頬を膨らませ、不満げに彼を見つめた。

  「嘘つき!」

  墓守は子供と接するのが苦手だった。それどころか、彼は誰とも接することが苦手だった。彼は忘れっぽい男で、喜びも悲しみもすぐに忘れてしまう。

  だが、自分の名前を忘れても、死者を見送る役目だけは、彼の記憶に深く刻まれていた。

  この貧しい墓地は静かで、時折、世を厭う富豪や隠遁者が目をつけることもあった。だから彼は毎日、ここに新しい墓碑や花束、名前が増えていないかを確認していた。

  墓守はいつも通りだった。

  ただ、遠くを見つめる。薄暗い夕日と林立するビルの間に。

  ——

  「ねぇ、遊んでよ!」

  「忙しい。」

  いつの間にか、少女の抜け出しは日常になっていた。その澄んだ声は、毎朝の林の中で鳴き続ける鳥のように響いていた。

  だが、墓守はそれを喜んでいなかった。少女は彼の変わらない日常に入り込んできた異物で、細い体ながらも若さから溢れる活力を持っていた。彼には、なぜ少女がここに来るのかも、どこから来るのかも分からない。ただ、もう二度と平穏な生活は戻らないと感じていた。

  「つまんないよ……大人はみんな、ぼーっとしてて退屈じゃないの?」

  少女の訪れは、すぐにやってくる不快な車の音やクラクションが、この静寂を引き裂き、彼の耳をかきむしる前触れでもあった。それは、突然入り込んできた野獣のようだった。

  墓守は眉をひそめたが、彼はいつも通りだった。

  ——

  雨が降っていた。

  墓守は雨の中で、灰色の空が悲しみを降らせるのを見上げていた。

  傘を持ってくるのを忘れていたが、彼はいつも通りだった。雨粒が彼の髪を濡らし、服を浸していく。竹と土の匂いが墓地に漂い、新しい生命を探していた。

  しかし、彼にはその生命はなく、冷たいベッドに眠る者たちと同様に、生気は一切感じられなかった。まるで彼もすでにその一員となっているかのように。

  「どうして傘を差してないの?」

  不意に聞こえたその声。振り向くと、少女が透明な傘を持って立っていた。その重さに、彼女はよろめいていた。

  「忘れたんだ。」

  「また忘れたの?変わった大人ね。」

  少女は傘を高く持ち上げ、墓守の乱れた髪を覆おうとした。しかし、傘の重さや、彼女のか弱い体が耐えきれず、少女は後ろに倒れそうになった。墓守は手を伸ばし、彼女の腰を抱き上げ、まるで人形を扱うように丁寧に立たせた。

  「ほら、あなたがしゃがまないと、この傘じゃ届かないよ。」

  その誘いに、墓守は少し戸惑いながらも、しばらくしてからしゃがみ込んだ。彼の暗く無表情な瞳は、ただ地面を見つめていた。

  「変わった大人だね。」再び少女の声が耳に届いた。「どこへ行っても、大人たちは私を病院に連れ戻そうとするの。でも、あなたは何も言わない。おかしいね。」

  少女が微笑むのを見て、墓守は何か懐かしいものを思い出した。

  「ねえ、私と遊んでよ。私にはあなたしかいないんだ。お願い、私と遊んでよ。」

  墓守は顔を上げて、少女の切なそうな瞳を見つめた。

  「あなたの名前は?」

  ——

  この新しい存在は、墓守の生活の一部になった。

  毎日午後になると、その澄んだ声が彼の耳元に響く。墓守が振り向くと、少女はいつも満面の笑みを浮かべていた。

  「今日は何して遊ぼうかな……」

  少女の細い体とは裏腹に、彼女は意外と活発で、毎日遊ぶ方法を変えたがった。じゃんけんや花を見たり、草を引き抜いたり、時には本やガラス玉、手作りのおもちゃを持ってきたりした。

  墓守はその小さな時間の中で、彼女のことを少しずつ知っていった。

  ——

  少女は、生まれつき病に蝕まれていた。

  彼女の体は、同世代の子供たちのようには育たず、力もなかった。

  彼女の子供時代は、白い天井に覆われ、夕日さえも窓越しにしか見られなかった。

  彼女は手術を受け、点滴を打たれ、それでも病は彼女を離さなかった。

  彼女は冷たいベッドに眠ることを嫌い、死さえも恐れないほどに生き延びることに抗っていた。

  しかし、その儚い体は何度も病に打ち負かされ、彼女を阻む鉄壁となった。

  墓守は静かにその話を聞いていた。

  「ねえ、私、ずっと探している花があるの……見て!」

  少女は百科事典を広げ、白い小さな花を指さした。

  「綺麗でしょ?四月から六月が花の季節で、乾燥した場所に咲くって書いてあるんだけど、この辺には見当たらないの。」

  墓守は静かにそのページを見つめた。

  「私、髪にその花を飾りたいな……だって私、こんなに可愛いんだから、きっとすごく似合うよね!もしその花を見つけたら、私に教えてね……一番にあなたに見せてあげるから。」

  少女の瞳には、かすかな星の光が宿っていたが、それは次第に薄れていった。

  「私……その時まで生きられるかな……」

  ——

  墓守はいつも通りだった。

  彼は箒を取り、墓の前で埃を舞い上げた。

  彼は目を閉じ、昨日の生者に向かって手を合わせた。

  彼は冷たいベッドの前に立ち、その中に眠る自分の死んだ魂を見つめた。

  それは、彼が自ら掘った墓だった。

  その冷たいベッドの中には、一輪の純白な花が咲いていた。その花は、まるで自分の存在を主張するかのように、土の中で強く立っていた。

  墓守はそっとその花を摘み取り、大切にコートのポケットにしまった。

  墓守はいつも通りだった。彼は遠くの都市を見つめた。

  しかし、いつの間にか、彼は振り向くようになり、あの澄んだ声が耳に戻ってくるのを期待していた。

  だが、少女は来なかった。

  ——

  少女は来なかった。

  墓守のポケットに入れた白い花は、次第に黄色くなり、枯れていった。それはかつて生命に満ちていたが、今や干からびた死体のように捻じれていた。

  そしてある日、墓守はついに少女が来るのを待った。

  彼女と共に来たのは、無言の大人たち、涙を流す大人たちだった。

  彼らは少女を冷たいベッドに横たえ、貧しい土で彼女の頬を撫でた。彼らは彼女に花束を捧げたが、その豪華な装飾が彼女の魂を穢しているかのようだった。

  墓守は静かにその光景を見ていた。彼らの言う「惜しみない哀悼の意」は、去ってしまえばすぐに霧散してしまった。

  墓守は少女の前に立ち、枯れた花を取り出し、そっと彼女のそばに置いた。

  「これは葬花だ。君の魂はその美しさを求めていたんだ。」

  墓守はそう囁くと、その花も命を失い、少女と共に眠りについた。

  ——

  墓守はいつも通りだった。

  彼は遠くの都市を見つめた。

  彼は箒を取り、墓の前で埃を舞い上げた。

  彼は目を閉じ、昨日の生者に向かって手を合わせた。

  彼は夕日に照らされたビルの窓を見つめ、その光が眩しく輝いていた。

  彼は待ち続けた。

  待ち続けていた。

  

  “花束”

  

  私は死へと向かう旅に出た。

  ランガイスの湾岸を歩き、喧騒の街をすり抜けた。人々は歩いている、ただ歩いている。私は人波に逆らい、前を見ながらも、何を見ているのかわからなかった。

  ただ、歩いている、ただ歩いている。

  ——

  「この花束、いくらですか?」

  「12元です。」

  手を差し出し、お金を渡す。私の腕には、私に似つかわしくない花束が抱えられていた。見合いに行くのだろうか、それとも誰かの葬式に参列するのだろうか。自分でもよくわからず、私は湾岸へと向かった。

  スマホを開き、いくつかのアプリを削除した。残ったのは、数少ないSNSアプリだけだった。それを開き、母のアイコンをタップする。

  「ごめんなさい。」

  送信して、ログアウト。私は最低限の社会的つながりすら絶ってしまった。今や、私は死人同然だった。道中、腰に手をやる。冷たい感触が私を安心させ、さらに前へと歩を進める。

  私は鉄の流れの中を歩き、コンクリートでできた森の中を歩いた。人々の群れを抜け、彼らはスマホを見つめ、私は太陽を見上げる。かつて嫌悪していたその光は、今ではやさしく、私の砕け散った魂に降り注ぐ。それが皮肉でたまらず、思わず身震いした。

  それでも私は歩いている、ただ歩いている。

  やがて埃まみれの街を抜け、清々しい海風が顔に当たった。死を迎える前の自然の優しさを味わいながら。

  私は歩き続けた。

  ——

  ついに、怒涛が打ち寄せる湾岸にたどり着いた。

  ここは戦後の乱葬地で、誰もこの廃墟を開発しようとはしなかった。百年も前の海堤に、ただ波が何度も打ち寄せている。

  人影一つない、まさに私が望んでいた場所だ。

  私はついに腰に手を伸ばし、鉄の塊を取り出す。

  一丁の拳銃、一発の弾丸。

  抱えた花束は、私と共に海風を浴びていた。時に穏やかに、時に荒々しく、花びらが震え、いくつかが吹き飛んでいく。それは、既に死んだ私の思考と共に、風に舞い上がった。

  23年の命はここで終わろうとしていた。そう思うと、心の底から歓喜が湧いてきた。しかし、私がこの花束を墓に持ってきたことで、憎悪と恥が弾丸よりも先に私の頭を貫いた。

  しばらくして、私は銃を持ち上げ、円筒の銃口をこめかみに押し当てた。そして、引き金を引いた。銃声が響き、私の体は砂浜に転がり落ちた。

  私は死んだ。

  血がじわじわと砂を染め、波は何度も私の体を洗い流し、血と共に私の花びらを海へと運び去った。次の瞬間、花びらは海の中に沈み、二度と浮かび上がることはなかった。

  やがて、私は起き上がろうとした。目の前には、海辺に無様に横たわる私の死体が見えた。その手には、私と共に死んだ花束が握られている。一丁の拳銃と、散らばった血痕が海岸に残されていた。沈みゆく夕日は、私の死に目もくれなかった。

  少しして、私は悟った。私は死んだのだ。ランガイスの湾で。

  発見されても、その報道は朝の新聞に載る程度で、若者の自殺が注目されることはないだろう。まるで消音された喜劇のようだ。最終的に、私を迎えるのは小さな墓だけだ。

  これが私の望んでいたことなのかもしれない。

  私は一つのため息すらつかず、虚ろな目で自分の死体を見つめた。まるで、他人が死んだかのように。しかし、私には自分を悼む者など誰もいない。だから、私は自分に花を捧げたのだ。

  波が私の血を洗い流し、最後の一枚の花びらを運び去るまで、私はその場を立ち去ることができなかった。

  ついに、私は背を向け、歩き出した。

  死んでもなお、私はどこへ向かうべきか、わからないままだった。

  

  “小さな少女”

  

  彼は多くの場所を歩いてきた。

  都市や海を越え、雑草と花々の間を歩いてきた。彼は歩き、歩き続けた。コオロギが必死に鳴く中、群衆のざわめきと雨音の中を歩いていた。

  いや、彼はただ歩いているだけだ。彼は空虚の中を、無の中を歩いている。ただ、歩くという動作をしているにすぎない。彼の歩みに何の意味もない。もしあなたが二歩前に進み「ねえ、どこへ行くの?」と尋ねても、彼は数秒考えてから首を横に振り、再び歩き出すだろう。

  彼は自分が望んでいた自由を見つけたようだった。

  彼は歩く、ただ歩き続ける。

  ——

  そのとき、鋭い音が私の鼓膜を裂いた。

  我に返ると、その音はそれほど耳障りなものではなかった。ただ、長らく閉ざされていた耳が荒々しく、あるいはやさしく開かれただけのことだった。

  私は視線を下ろした。そこには小さな少女が私の前に立っていた。彼女はさっき質問をしていたが、私は全く反応できていなかった。私は死んだのか、それとも頭まで一緒に死んでしまったのか?

  「もしもし?おーい!」

  「……うん。」

  少女は不思議そうに私を見つめた。「歩いているのに、ぼーっとしているの?あなたも変な大人だね。」

  「ああ……ごめん、さっきは聞こえなかったんだ。」

  「あなたも死んだの?」

  私はどう答えればいいのか分からなかった。私は死んだのか?確かに、私は死んだ。ほんの少し前に……いや、それはずっと前のことだったかもしれない。私の死体と花が湾岸で死んでいるのを見た。

  「確かに、私は死んでいる。」

  「じゃあ、どうしてここで歩いているの?お墓はないの?」

  「私はそんなものは必要ない。君はどうだい?」

  小さな少女の生き生きとした細い体が、私の目の前で鮮やかに動いていた。「私も分からない。きっと未練があるんだと思うけど。」

  「未練があると死なないのか?」

  「何言ってるの、私はもう死んでいるじゃない。」

  そうだ、彼女は死んでいる。私も死んでいる。そう考えればすべて辻褄が合う。だが、さっきまでの出来事がまるで川のように流れていき、私にはまったく実感が湧かなかった。それはたぶん、私がもう死んでいるからだろう。

  思わず聞いてしまった。「君の未練って何?」

  「私は花を探しているんだ。」

  花。

  あの脆いバラが再び脳裏に浮かんだ。私は自分勝手に彼女を墓に連れて行き、海にその肌や骨を引き裂かせた。涙を流しそうになり、顔を背けて目を覆った。

  「……具合が悪いの?」

  「死んでいるのに、具合が悪いも何もないだろう。」

  私は顔を上げて、真剣に少女に尋ねた。

  「どんな花を探しているの?」

  「小さな白い花だよ。でも、今は本を持っていないから見せられないけど、ちょっと待って……」彼女は何もない空を見上げて、一生懸命に考えているようだった。「その花は茎が細くて、花びらが六枚あるの。どれもかわいい白色だったはず。葉っぱは……ほとんど忘れちゃったけど、見れば思い出せると思う!」

  その頑張っている姿は、どこか滑稽だったが、私の空っぽの心にかわいらしさがふと芽生えた。

  歩こう、続けて歩こう。私は彼女と一緒に都市や海を越え、雑草や花の中を歩く。彼女の願いが叶うまで、足を止めないでおこう。

  さあ、歩こう。

  ——

  都市。

  私は死を求めた理由を思い出し始めた。

  私は外に出るのが嫌いだ。ショッピングも嫌いだし、人混みに埋もれるのも嫌いだ。

  この目まぐるしい世界で、何度迷子になったか分からない。

  立ち並ぶビルは巨人であり、私はその巨人の足元でアリのように行き交っていた。

  他人を見ても、そこにあるのは同じような仮面ばかりだった。彼らが追い求めているのは、風のように駆け抜ける車や、鳴り続ける携帯電話、そして巨獣のような高層ビルだ。

  このまるで小学生の作文のような考えが、私に恐ろしい考えをもたらした。誰も自分の魂を追い求めていないのだ、と。

  だから私は恐怖を感じた。そして、その恐怖の先にあったのは、果てしない虚無と孤独だった。

  「名前は何ていうの?」

  「羽島。」

  考える間もなく、私は自分の名前を言っていた。

  「羽根の『羽』?小さな島の『島』?」

  「……うん。」

  少女は私を見て、少し不思議そうな感情を浮かべた。

  「外国人みたいな名前だね。」

  「そうだね、偽名だから。」

  「えっ!」

  まずは驚き、次に拗ね、最後にはまるで納得したかのように微笑んだ。彼女の表情は生きている人間のように豊かで、彼女の魂は死んだ体と共に再び生き返ったかのようだった。

  「君の名前は?」

  「どうして教えると思うの、大嘘つき。なんで偽名を使うの?」

  「その名前で生きていたからさ。」

  「本当の名前は?」

  「忘れた。」

  「またあの大人と同じだね。これ、何かの流行?」

  隣の少女は再び考え込むような表情を浮かべ、私は歩き続けた。私たちはこうして、都市を、湖を、小山を、村を越えて歩いた。でも、今では群衆を通り抜けるのが怖くなくなり、高層ビルが崩れ落ちるのではという心配も消えた。

  少なくとも、私たちはまだ生きていたときと同じだった——まるでこの世を通り過ぎる旅人のように。

  「そういえば、どうして偽名で生きていたの?」

  まさかこの話題がまだ続いているとは思わなかった。子供の好奇心というのは本当に恐ろしいものだ。

  「その名前をペンネームとして使っていたんだ。それ以外ではほとんど誰も本名を知らなかった。」

  私の存在は、インターネット上の哀れな一席に過ぎなかった。

  「へえ……それって、すごく……」

  なぜか少女は私に同情していた。でも、私自身が自分を哀れんでいないのに、どうして他人がそんなふうに感じるのだろうか?死んでから疑問が増えたばかりで、苦笑すべきか皮肉めいた笑いを浮かべるべきか、迷ってしまった。

  ——

  私たちは廃墟となった遊園地を歩いていた。ここはかつて私が憧れていた場所だが、地域的な事情で政府が経済支援をやめ、この子供時代の思い出の場所は壊されてしまった。

  「ここは都市の郊外だ。私はここで育った。」

  「素敵な場所だね。」

  「錆びついた鉄だらけの素敵な場所さ。」

  「錆びついた鉄だけじゃないよ、花が咲いてるじゃない!」

  彼女は不満げに片隅を指さし、私もその方向に目をやった。確かに、腐敗した鉄の中に、見知らぬ小さな花がぽつんと生えていた。少女はしゃがみ込み、その花びら一枚一枚をじっと観察していた。

  「これがそう?」

  「違うよ、花びらは死んだような灰色だった。」

  私は顔を上げ、この遊んで育った場所を見回した。子供時代の記憶が波のように押し寄せ、死んだ私の童年を懐かしむ気持ちが湧き上がった。

  タバコ、錆びた鉄、チョコレート。

  ——

  私たちはついに墓地にたどり着いた。

  そこには、夕日が崩れたかのような光景が広がっていた。きらめくビルの窓からは刺すような光が溢れ、わずかな暖かさだけが木々の間を抜け、乱雑に墓の上にこぼれ落ちていた。

  「ここが私の墓だよ。」

  少女は小さな墓石の前に立っていた。

  「君の墓がここにあるなら、どうしてあんな遠くにいたの?」

  彼女が振り返ると、彼女の笑顔と体が一緒に朽ち果てていた。

  ——

  「ある日、私はいつもより軽くなったことに気づいて、ベッドから飛び降りたんだ。

  鍵のかかったドアを開け、病室の前にいた使用人をすり抜けたとき、生まれて初めて自由を感じた。

  嬉しかった。本当に嬉しかった。たぶんそのとき、私はもう死んでいることに気づいていたんだろうけど、それでも喜んで走り回ったんだ。存在しない空気を思い切り吸い込んでね。

  どれくらい走ったか分からないけど、超能力を得たみたいに、知らない場所を駆け巡った。そのうちに、何かしらの未練を思い出して、私は自分を悼むための花を探そうと思ったんだ。

  その花のことは、もうよく覚えていないけど、白い花びらだけは記憶に刻まれている。それから私は花を探し始めた。都市や海を越え、山や平原を走り抜けて、そして湾岸の端であなたに出会った。」

  「みっともない姿だったね。」

  少女は笑った。確かに、彼女はとても面白い冗談を言った。だから、私も一緒になって自分を笑った。どれくらいの間、私たちは黙り込んでいたのだろう。まるで、何かしらの無言の約束があるかのように、私たちは同時にお互いに哀しみを感じていた。

  「その花、もう見つけたよ。」

  彼女は自分の墓を指差した。私もその方向に目を向けた。そこには、腐った花束に混じって、すでに枯れ果てた「花」が挟まっていた。それは死んだような黒色に覆われ、ねじれた姿が私を絶望させた。

  「それは葬花じゃない。それはもう死んでいる。白い花びらがないじゃないか。」

  「白い花びらがなくても、これが葬花なんだよ。事実だから。」

  少女は生きている人のようにしゃがみ込み、そのやせ細った花を手で掴もうとしたが、彼女の手はまっすぐ土の中を通り抜けてしまった。

  「やった、私の願いが叶った。」

  それは、もはや人間だったもの、あるいは今の幽霊から発せられる声ではなかった。彼女はすっかり人間ではなくなり、その希望や思考も、この場所のすべてと一緒に死んでしまった。彼女はもはや絶望すら感じていなかった。彼女はただ、私の目の前で死んだ。

  私の目の前には、何もなかった。

  ここには小さな少女などいなかった。

  ここには何もなかった。

  ——

  私は石欄に寄りかかる動作をしていた。

  わずかな温もりがゆっくりと足元に忍び寄っていた。私はそれを責めなかった。ただ、虚ろな目でビルに映る夕日を見つめていた。

  もう歩けない。私の精神は疲れ果て、これ以上、私を苦しめるものを見たくはなかった。それでも私は死んでおらず、私の思考はなおも痛みを伴って働き続け、私の求める死は何一つとして実現しなかった。

  私は自分の思考を手にかけて殺す必要があった。

  私の足は再び歩き始めた。それなら歩こう。私は自ら都市や海を越え、かつてと未来を歩き抜けよう。私は安息の地を目指す。神の住処に辿り着くまで歩き続けよう——もしその場所が本当にあるなら、そこに足を踏み入れて、神の前に立ち、その衣を掴んで叩きのめしてやるんだ。

  もう祈りはしない。私は自分の目を神から取り戻す。神が私の思考を殺せないなら、私自身がそれを破壊しよう。自分で、自分の思考を破壊するんだ。

  さあ、歩こう。

  

  “詩人”

  

  彼はまるで全てを詩に捧げようとしているかのようだった。

  ランガイスの湾岸に立ち、沈む夕日のすべての光を受け入れていた。時に悲しみ、時に憤り、彼の思考は潮のように自由に湧き上がり、そして壮絶に砕け散っていった。

  彼は海を熱烈に賛美しながらも、率直に海を非難した。しかし結局、彼は海を賛美していた。彼の言葉も思考も矛盾していた。

  私は彼に近づき、その奇妙な行為に困惑していた。

  「何をしているの?」

  「詩を作っているんだ。」

  「死んだのか?」

  「たぶんね、死んだ。」

  彼は依然として海を見下ろし、まるで自分がこの海やこの土地の創造主であるかのように振る舞っていた。彼の憤怒は力強く、彼の罵倒は響き渡っていた。彼は死を蔑み、生者も含めてすべてを軽蔑していた。

  私は彼の隣に立ち、彼が空虚な腕を振り回すのを見つめていた。やがて、海すら見えなくなり、彼の詩にはただ怒り、怒り、怒りしか残らなかった。

  ——

  「やっと分かった、私が憧れ、賛美していたものが何だったのか!この愚鈍さが、私の神経を震わせる!数十年もの間、恐怖に覆われていた真理が!?なんと馬鹿げている!なんと荒唐無稽なことか!

  だが、私は最も早くそれを抱きしめるだろう。私は神聖なる終焉の中で天使とヤハウェへ向かうんだ。私は脳髄とその汚れた腐敗を粉々に砕き、貪欲で無能な臆病者の心臓を絶望の中で死なせる!自己破壊の瞬間にこそ、私の希望と夢は実現されるんだ。どうしてこれが悲しみと言える!?

  お前たち全員、絶望と退屈な欲望と未来を抱えて死に行け!だが、こここそが本当の地獄だ。お前たちがどうしてこんなに甘美な結末を迎えることができる!?お前たちにどうして私のような熱い情熱があると言える!?お前たちの愚かな詩のどれが、私ほど広い心を持っている!?お前たち生き延びているゴミども!

  だが、私の死と救済を妨げる者がいるならば、そいつは地獄に堕ちるがいい!だが、こんな地獄より恥辱に満ちた場所がどこにある!?生きることこそが最大の苦しみ、拷問だ!それなのに、お前たちはそれを楽しみ、死ぬことをためらうとは!」

  ——

  彼は突然口を閉ざし、顔には夕潮のような穏やかさが広がった。だが、彼はもう詩を作らず、私は彼の心や思考を見つけることができなかった。

  そして彼は不意に私の方に顔を向け、じっと私を見つめた。

  「お前も死んだのか?」

  「……ああ。」

  「死ぬって、全然実感がないな。それに……死んでもこの青白い世界に留まらなきゃならないとは、悲しいな!悲しい!」

  私はもう彼の内面に興味を持たないことにした。

  「安らぎに行かないのか?」

  「どこに安らげばいい?」

  「自分の願いを果たせば、そこが安らぎの場所だ。」

  「願い?愚かだ!そんなもの、とっくに忘れてしまったよ。どうやって願いを果たせというんだ?」

  「歩いてみればいい。いつか見つかるさ。」

  私はこの名も知らぬ詩人に少し反感を抱いていたが、それでも彼を連れて都市や海を越えて歩き続けた。

  ——

  彼の目は広告看板や高層ビルに向かって迷い続けていた。まるでこれらの退屈な景色を初めて見るかのようだった。

  「どうして人間は自分を小さな箱に閉じ込めているんだ?」

  「そこが彼らの家であり、眠る場所だからさ。」

  「ここは生きている者たちの安息の場所だ。じゃあ、死んだ者は?」

  「墓だよ。」

  彼の口は再び洪水のように溢れ出した。「人間は死んでからも大金を払って小さな箱に自分を閉じ込めるんだ。悲しい!悲しい!」

  「でも君も人間だったんだろう?」

  「死んだ者はもう人間とは呼べない。」

  「どうして?」

  「彼らはもう死んでいるからだ。思考は死に、身体は死に、骨も死んで、蛆に食い尽くされるんだ。」

  「でも君も今は死んでいるんじゃないか?」

  「馬鹿げている!私はまだ生きている!まだ怒りがある!どうして死んでいると言える!?死とは、心臓が止まった人間に使う言葉だ。」

  私は彼が少し狂っていると感じ、もう彼の言葉に耳を傾けるのをやめた。

  ——

  「君はどうして死んだんだ?」

  冷たいコンクリートの道を歩いていると、彼の死因が気になった。

  「酒を飲みすぎて、『生きるのが辛いな、死のう』と思って、それでビルから落ちたんだ。」

  「自殺だったのか?」

  「当時の私は本当に自分だったのか分からない。どうして自分を臆病な自殺者だと定義できるんだ?」

  「自殺者はみんな臆病なのか?」

  「そうだ。自殺者はみんな臆病だ。」彼の目は再びビルの間を転がっていた。「彼らは世界を恐れて、すべての良いものと悪いものを捨てて、空気になって生き延びようとするんだ。」

  「じゃあ、君も臆病だったんだな。」

  「私は死ぬ理由すら見つからなかったよ。」

  「でも、君は『生きるのが辛い』と言ったじゃないか。」

  彼は一瞬戸惑った後、また口を開いて笑った。

  「ああ、生きるのは本当に辛いな。」

  私はこれが豪放な詩人の口から出ているとは信じられなかった。私には、生きることも、すべてのことも空虚であり、疲れさえ感じない。

  「願いは決まったか?」

  「まだだ。もう少し歩こう。」

  ——

  私たちは山を登り、崖を進んでいった。死者と色彩だけの世界を歩き続けた。彼はこの世界を賛美し、同時に罵倒していた。まるで本当に自分が創造主であるかのようだった。しかし私が尋ねると、彼はただ笑って手を振った。

  「どうして私が創造主になれるんだ?私はただ口で大言壮語を言っているだけさ。」

  「生きているときも、そうやって詩を作っていたのか?」

  「もちろんだ。でも私はそれを発表しなかった。全部ゴミ箱に捨てたんだ。」

  私はこの詩人が少しだけ普通の人間らしく感じられるようになった。

  「どこに住んでいた?」

  「ランガイスのそばの家に。私も大都市のように自分を小さな箱に閉じ込めていた。でも、大都市の人たちほど退屈じゃない。私は海と夕日を見ることができたからね。」

  「君の詩は全部海についてなのか?」

  「私の詩は全部、海への愛の告白だ。」

  彼は歩きながら、目を閉じて心地よい旋律を口ずさみ始めた。そして、振り向いて私を見た。まるで私が彼の詩を称賛するのを期待しているかのように。私はただ、微笑みを無理に作り出すだけだった。

  「でもさっき、私は考えを変えたんだ。自然の方が海よりも多くの色彩を持っているからね。」

  「でも、君は海についてたくさん詩を書いたんじゃないか?」

  「でも私が手に入れたのは、怒りに満ちた波だけだった。」

  私の軽い魂は急に重くなった。いや、私たちの魂に触れる空気が重くなった。私の思考も、私の悲しみも、すべてが押しつぶされていった。私は足を止め、絶望の恐怖から逃れるために話題を変えた。

  「どうして大都市に行ったんだ?」

  「誰かが言ったんだ。私の生活は他の人間たちと大きくずれているって。それで行くことを考えたんだ。でも、無感覚な人々を見た後、すぐに死ぬことができてよかったと思ってるよ。」

  「君は自分の死を後悔していないのか?死んでしまえば詩はもう書けない。」

  「私の思考はここにある。今、私は詩を作っているんだ。どうしてこれが死と言える?」

  これ以上話しても意味がないだろう。彼と一緒に、この特別な日差しをただ楽しんだ方がいい。

  ——

  私たちは長い間歩き続け、夕日の中を歩いていた。彼は草を踏みしめ、風の翼を撫で、自然の言葉を囁いていた。私は彼の詩を聞き取れず、ただ彼が死後の自由を楽しんでいるのを見ていた。

  「どうして君は木のように突っ立っているんだ?こっちに来て、自然と戯れようよ。」

  「いや、私はいい。」

  私は自然が嫌いというわけではないが、生前の私は風や光が部屋に入るのをすべて阻んでいた。——まるで暗闇に住むネズミのように。

  彼はふと何かを思い出したかのように言った。「死んだ者の願いを叶えるのが君の義務なのか?」

  私は戸惑った。義務?これは私の義務なのか?あるいは、これが義務に見えるのか?生きていたときも死んだ後も、義務という曖昧な存在を理解することはできなかった。しかし今、私は「義務」というものを背負わされたような気がしていた。

  「たぶん、そうだろう。」

  「でも、願いがない私は君に迷惑をかけるだろうな。」

  「ああ。」

  「だから、さっき私は自分の願いを知ったんだ。」

  彼は両腕を広げ、私は刺すような日差しの中で、彼がまるで天使に肩を並べているかのような偉大さを感じた。

  ——

  「もし再び私を訪ねるなら

  賛美せよ、賛美せよ

  私はすべての憎しみと嫌悪を捨てた

  熱い太陽神に愛を捧げるために」

  「賛美せよ、賛美せよ

  私の腐敗を砕き尽くせ

  そして、私の魂を哀悼することなかれ

  私は安息の揺りかごに向かっているのだから」

  「賛美せよ、賛美せよ

  もしまた私の前に来たなら

  私の花を天に捧げる炎に捧げよ

  私は美しさと咲き誇る姿を見るだろう」

  ——

  その瞬間、世に詩人は消え去った。

  彼は日光を浴びて、その魂が燃え上がるかのように見えた。しかし、彼の足元には花が咲き始めた。風は彼の頬を撫で、まるで綿毛のように、彼の魂をそっと吹き飛ばし、木陰や草の中へと運んでいった。

  草は彼に感動し、鳥は彼を讃えて歌った。彼は自然の中で壮絶に死に、私もまた彼の偉大な死を自然と共に哀しんだ。燃え尽きた彼の魂は一片も残らず、時の流れに溶け込み、彼の海と自然への愛が、知られざる歴史に刻まれていった。

  彼の死は、世界に贈られた最後の壮大な贈り物だった。

  ——

  私は草原に横たわり、夕日を楽しんでいた。

  その盛大な葬儀の後には、果てしない静寂が広がっていた。鳥でさえ鳴き声を上げることなく、私をこの退屈な死の世界から解放することはなかった。

  だが、まあいい。衰えゆく夕日が私を焼き続けるがいい。私の魂を鞭打ち、私の思考を引き裂くがいい。それすらもできないなら、もうしばらくこの世界に留まってくれればいい。

  ——私はいつの間にか、あの傲慢なバカと同じになっていたようだ。

  

  “パイロット”

  

  彼を初めて見たとき、彼はまだ少し戸惑っているようだった。

  「ここはどこだ?私は死んだのか?」

  「死んだよ。ここは生者の世界だ。」

  彼は、安堵するように微笑んだ。「死んだのか。私は死んだのか。」

  「何か願いはあるのか?」

  「いや、これが最良の結末だよ。」彼は遠くの街を見つめながら言った。「私には何も願いはない。」

  「未練は?」

  彼はそれ以上何も言わなかった。

  「未練が、君の願いだよ。」

  「それは、まったく取るに足らないものだな。」

  ——

  彼は愛する人に会いたいと言い、私は彼と共に終わりの道を歩き始めた。

  「君はどこのパイロットだったんだ?」

  「ランガイス港区に属していた。私はそこでパイロットをしていた。」

  「ランガイスは今ではラン城と呼ばれているよ。」

  「どうでもいいさ。もう私はパイロットじゃないから。」

  彼の顔には、まるで潮が引いたように灰色の笑みが広がり、彼の目は死者と何ら変わりなかった。彼が何を経験してこんなに絶望したのか、私には分からなかったが、それでも彼と一緒に空と海を越えて歩いた。

  「君はどの戦いで死んだんだ?」

  「主権戦争だ。玖仑沙の残党との最後の戦いで死んだ。たぶん。」

  それは確かに過酷な戦争だった。私たちは死者の魂の上を歩き、彼らの頭蓋骨や遺体を踏みしめた。英雄であれ、庶民であれ、私たちの魂は彼らの魂を踏んで進んでいた。

  「君の愛する人はどこにいる?」

  「海辺にいる。」

  それで私は彼と共に海辺へ向かった。そこには灯台、低い壁、そして廃車となった鉄屑があった。

  「ここが君たちの家か?」

  「今はもう違う。ここには壁しかない。」

  「君の妻は?」

  「彼女はここにはいないだろう。庭で探してみよう。」

  私たちは庭へ向かった。そこには荒れ地と小道、そして文字がかすれた石碑があった。

  「ここが君たちの庭か?」

  「これは誰の庭でもない。もう花は咲いていない。」

  私たちは歩き続けた。まるで博物館を歩くかのように、時間に殺されたすべてのものが展示されているかのようだった。唯一残っているのは、怒涛の存在だけだ。それは、虚無の展示物をすべて打ち砕こうと、いまだに生者と死者の世界に向かって怒りをぶちまけていた。

  「なぜパイロットになりたかったんだ?」

  「妻がかつてパイロットだった。林州戦役で行方不明になったんだ。彼女の代わりに私が戦場に出た。彼女が、生きていても死んでいても、必ず戻ってくると言っていたから。」

  「彼女に会えるかどうか、分からないよ。」

  「必ず会える。彼女は私を待っている。」

  「君は死後、ずっと彼女を探していたのか?」

  「いや、長い間眠っていたようだ。ある日、突然目が覚めて、歩き始めたんだ。」

  「長い間歩いていたんだな。」

  「そうかもしれない。もう時間の感覚はない。」

  戦争は人間を徹底的に破壊する。足元から始まり、すべての尊厳と生きる意志を剥ぎ取り、最後には真っ赤な心臓を掴んで粉々に砕いてしまう。彼もまた、破壊された人間の一人に過ぎなかった。

  ただ、それだけのことだ。

  「でも、君の妻がまだ君を待っているとは限らない。」

  「彼女は待っているよ。私は分かっている。」

  それで私たちは墓地へ向かった。そこには枯れた花と枯れた魂があり、私たちは石碑の間を歩きながら、彼の妻の名前を探した。

  しかし、無数に並ぶ墓碑の中には、彼の妻の名前はなかった。彼が思い焦がれていた愛する人は、時間の中で既に死んでいた。

  「君の妻の墓碑はここにはない。」

  「彼女には墓碑なんていらない。彼女が生きていたことを証明する必要なんてない。もしかしたら、港に行けば彼女がまだ眠っているかもしれない。」

  それで私たちはランガイスの港へ向かった。ここはかつて主権戦争の主戦場だった。今でも、そこには死んだ戦闘機が散らばっていた。彼らはかつて多くの戦士たちの象徴だったが、今では波に晒され、その魂を清められていた。

  「戦士たちは死に、兵器は廃棄され、流れた血は時の中で乾き、口にした信念はかすれていく。これが戦争のすべてだ。」

  「でも私たちは血を銃にして戦い、戦争の中で暁の星となった。私は自分がしたことを後悔していない。」

  「では、なぜ絶望するのか?」

  「黎明はもう過ぎ去ったからだ。誰も暁の星の名を覚えていない。」

  潮が私たちの足元を覆い、戦士たちの涙をそっと拭った。それが、世界が彼らのためにできる唯一のことだった。

  「もしかしたら、妻はもう死んでいるかもしれない。」

  「どうして?」

  「彼女も他の人と同じように忘れられてしまうだろう。忘却こそが最大の死だ。」

  「いや、君が彼女を覚えているじゃないか。」

  「そうか、そういうことか。」

  私は彼が再び太陽を見つめるのを見た。太陽は私たちの魂を焼き尽くすかのように輝いていた。私たちの足跡は砂浜に残らなかった。それらは波に飲み込まれ、時間の川に流れ込んでいった。

  時間の終わりは海ではなく、その波打つ川がすべての忘れ去られたものを粗暴に飲み込んでいく。しかし、私の魂はまだ生きていた。それはおそらく、まだ私を覚えている誰かがいるからだろう。

  私を忘れてくれ。私を殺してくれ。

  ——

  私たちはコンクリートの森を歩き、鉄で作られた川を歩いた。林州はすでにランガイスの中心都市となっていた。誰もかつて血で染まった叫びや、導かれない亡霊たちを覚えていない。あるのは、ビルに落ちる夕陽が、死者たちの顔に刻まれているだけだった。

  「ここが林州か?」

  「ああ、そうだ。」

  「ここには生の気配がまるでないな。」

  「そうだな。」

  私たちは同時に笑い出した。

  ここには生の気配がない。コンクリートの密林の中で、人々はかろうじて生き延びている。誰もが迷いながら進んでいる。泣く者、血を流す者、狂う者がいるが、私たちのように自分の魂を追い求める者は一人もいなかった。

  私たちはこの死の街の中で、失われた魂を探し続けた。この街の至る所には、かつて血の雨が降り注いだ。私は彼の語る過去の悲惨さと栄光に耳を傾けていた。

  「主権戦争は林州戦役よりも残酷だった。あのとき、玖伦沙の残党はすでに現代戦争の軍事力を持っていた。私も多くの戦友もそこで死んだ。」

  「それなら、君の妻はまだ生き延びて、普通の生活を送っているかもしれない。」

  「そうだといいな。」

  しかし、あの戦役からすでに半世紀が過ぎており、彼の妻もすでに墓に入ろうとしているだろう。

  私たちは林州で二日間探したが、何も見つからなかった。

  「彼女はカシュロフ城にいるかもしれない。戦争を嫌った人々がそこで安息の地を求めている。」

  それで私たちはカシュロフ城へ向かった。この街は戦争時代に信念を持った人々によって作られた街で、今もほとんど変わっていなかった。この街では、至る所に墓地があり、過去の時代の遺物が埋葬されていた。兵士や子供たち、生き延びたすべての霊魂がここに生き埋めにされ、誰かが彼らを解放するのを待っていた。

  私たちは墓地の前で一つ一つを見回り、庭園の前を歩き回り、何もしない霊魂たちと同じように彷徨っていた。

  「人類の悲しみの街だな。」

  言葉が自然と口から漏れた。

  私たちは長い間歩き続けた。低い壁のそばを歩き、高いビルの横を歩き、迫撃砲が設置された土壁を撫で、半世紀前の叫び声を聞いていた。

  「私の妻は、パイロットになることを夢見ていた。」

  私は彼女に尋ねた。「君は死が怖いか?」

  彼女は答えた。「怖いわ。」

  「私はただ、彼女と良い日々を過ごしたかった。いつか彼女の亡骸を抱いて泣くようなことはしたくなかった。」

  私は彼女に尋ねた。「なぜパイロットになりたいんだ?」

  彼女は笑って、何も言わなかった。

  「彼女は入隊して三年四ヶ月後に行方不明になった。その後、私も急いで入隊した。彼女を探すために、私は泣きそうだった。」

  「そして、君は主権戦役で死んだ。」

  「ああ。死んだ後は、そんなに怖くなかったよ。」

  私たちは墓石をそっと撫でた。土がぼんやりとした名前の間に埋まっていた。いつの間にか、黒い猫が現れ、私たちをじっと見つめていた。パイロットが一歩前に出ようとすると、その猫は身を弓なりにして私たちに一喝し、闇の中へと駆け去った。

  「私の妻は猫が好きだった。」

  「君たちは猫を飼っていたのか?」

  「一匹飼っていたよ。でも私がパイロットになってからは世話をしなかった。」

  もしかしたら、猫は彼の妻と同じように、もう死んでしまったのかもしれない。

  「君は彼女が死んだことを分かっているんだろう。」私は言った。

  「そうだな。たぶん、まだ自分を騙しているんだ。」

  ——

  私たちは公墓にたどり着いた。

  地面はきれいに整えられ、墓碑には少しばかりの埃が積もっていた。それらは整然と並び、一列に立ち、すべての墓碑に戦士の名前、出生と没年、そして所属部隊が刻まれていた。

  パイロットは腰をかがめ、まるで七十歳の老人のように、何度も名前を確認していた。そして、三列目の七番目で立ち止まり、魂を失ったように呆然と立ち尽くしていた。

  余孤人、ベルリン11年からベルリン37年、空軍。

  彼はその名前を何度も何度も口にしていた。まるで、それが彼の知っている言葉ではないかのように。

  「孤人……。」

  私は一瞬、彼を抱きしめたい衝動に駆られたが、考えた末に、この最後の抱擁は彼の愛する人だけに属するものだと気づいた。彼の体は、夕日の下でしおれていくように見え、泣き崩れる動作だけを繰り返していた。私はただ、こう答えるしかなかった。

  「もう、彼女の亡骸を抱いて泣く必要はないよ。」

  「でも、彼女が私に残したのは、この小さな墓碑だけだ。」

  それは、まるで何十年もの間蓄えられた雷鳴が響き渡るようだった。彼は何十年も麻痺していた悲しみを噴き出し、夕陽が彼の魂と涙を追い出し、彼を墓碑ごと死へと導こうとしていた。私はただ、彼の魂が砕け散るのを見つめていた。彼の涙は重く、彼の体を折り曲げていった。

  「孤人、私は君を愛している。」

  ——

  私は永遠の夜を歩いていた。私の足元には安息の場所はなかった。

  私は走り、逃げ、黒を終わらせる暁の星を探していたが、手に入れたのはコンクリートの間でちらつく光だけだった。

  おそらく、もう自分が何者なのか分からなくなっていた。

  私はついに、自分の解放を見つけることができなかった。

  私は目を閉じた。この世界は、私にとって唯一の闇を照らす灯火を消してくれた。


  “戦士”

  

  私は彼が剣を振る動作をしているのを見た。

  彼の顔は恐ろしく歪み、長い髪の間から鋭い角が突き出ていた。目から溢れ出す怒りは彼の剣とともに広がり、荒れ果てた大地に火をつけた。彼の背後には、無数の兵士たちがいて、彼と一緒に剣を振り下ろしていた。

  私は彼の長剣を見つめながら近づいた。すると、彼も、背後の兵士たちも、剣を振るのを止めた。

  「イロスタン・カリン。そなたは何者だ?」

  「羽島だ。私は剣光と怒りを追ってここに来た。」

  彼は大剣を地面に突き立て、たくましい体がその威厳を誇示していた。

  「お前は死んでいるのか?剣を振る動作をしているのを見た。」

  「たぶん、死んでいる。だが私は、兵士たちと共に祖国を侵す敵を探し出し、殺すのだ!敵を殺す!」

  彼の背後にいる無数の兵士たちも、同じ言葉を叫び、掲げた剣が不思議な光を放っていた。

  「何年剣を振っているんだ?」

  「3265年だ。」

  なんと粘り強い戦士だ。しかし、死後の敵探しには意味がない。私は彼と共に安息の地を探しに行くことにした。

  ——

  彼は大地を震わせるかのようだった。

  彼の歩む場所は、この世のすべての生物を恐怖に陥れるかのようだった。

  私は彼とともに、バラが咲き誇る道を歩いた。それはまるで裕福な家の娘のように美しかった。彼は周囲を見渡し、この世界を初めて見たかのようにしていた。

  「どうやって死んだんだ?」

  「長槍が私の剣の脇から鎧を貫いた。その時、私は太陽になったのだ。」

  「死んだ者は皆、太陽になるのか?」

  「いや、臆病者はならない!奴らはただ、暗い道に潜む虫になるだけだ。」

  ならば、私は二度と太陽にはなれないだろう。私は彼と共に終わりのない道を歩き、彼と一緒に狂風に打たれた。風はあまりにも強く、私の魂が吹き飛ばされ、思想や尊厳までもが蹂躙されてしまいそうだった。しかし彼は大剣を大地に突き立て、風を無力にした。

  「お前の魂は重いようだな。」

  「いつもそうだ。」

  「お前は何と戦ったのだ?」

  「敵だ。」

  「その敵とは?」

  「私の愛する者を侵す者だ。」

  「だが、お前が守ろうとした民はすでに死んでいる。」

  「ならば、私は彼らの魂を守る。私の魂が砕け散るまで。」

  彼はあまりにも偉大に見え、その尊厳ある顔は生き生きとしていた。なぜ彼がこれほど強大であり得るのか、私は考えた。彼が守ろうとする民のためだけに、これほどまでに強くなれるのか?

  それとも、ただ我々の善と悪が純粋さを欠いているからなのかもしれない。

  ——

  「私はかつて戦士だった。」

  彼は戦士だった。しかし、彼はまるで神話に存在するかのようだった。イロスタンには二本の角があり、一つは銀色で、天に向かって突き立ち、太陽にその鋭さを示していた。もう一つは半ばで折れ、彼はそれがカンエル・カナとの戦いで敵に斬られたものだと言った。

  「それは私が唯一生きていた時の敗北だ。」

  「それまで、一度も負けたことはなかったのか。」

  「私は常に勝利の栄光を享受していた。」

  その大剣は、私が今まで見た中で最も奇妙な武器だった。剣には澄んだ緑の宝石がはめ込まれており、その周りには粗い亀裂が広がっていた。剣の片面はしなやかで、水のように流れるようだった。もう一面は鋭く、風や水さえも切り裂けるほどの鋭さだった。私は、この完璧な戦士がなぜそんな剣を手にしているのか、不思議でならなかった。

  「その剣はお前が自ら作ったのか?」

  「この剣は、私は国中を巡り、すべての老練な職人に手を加えさせ、鍛え上げたものだ。これは人民の剣だ。」

  「だからこの剣でお前の民を守ったのか。」

  「私は敵を粉々に斬り裂く。」

  私は彼の瞳を見つめた。その青い目には怒りと欲望が宿っていた。

  彼は、何かを求めて再び戦いたいと思っているようだった。

  私たちは、勝利と栄光の歌の中を歩き、墓碑と亡骸から始まる悲鳴の中を歩いた。彼は一言も笑わず、左手で大剣を常に握りしめていた。彼はまるで動く巨石のようで、誰も彼を動かすことができなかった。私は彼を見上げて尋ねた。

  「お前はどこへ行き、敵を探すのだ?」

  イロスタンは一歩も引くことなく答えた。

  「私は敵の土地を隅々まで歩き、彼らを故郷から追い出す。」

  ——

  私は彼と共にランガイスの故郷を歩いた。そこには、かつての大戦で死んだ無数の魂たちが手を合わせ、胸前の神に向かって安息を祈っていた。イロスタンは大剣を抜こうとしていた。彼は行き場のない魂たちを皆殺しにしようとしていたが、私は彼らの手が一つまた一つと地面に落ち、彼らが膝をついて崩れ落ちるのを見ていた。

  「どうして、迷いなく斬ることができるんだ?」

  「生き延びる魂は病んでいる。」

  「だが、彼らにもまだ叶えられなかった願いがある。」

  「ならば、お前は自ら彼らを解放してやるのか?」

  「……私は渡し守ではない。」

  イロスタンは大剣を鞘に納め、その冷たい目で私の魂を貫くように見つめた。

  「ならば、彼らを斬ることも彼らを解放することになる。」

  私は口を閉ざし、何も言えなかった。憐れみこそ、この世で最大の罪だ。私は迷える魂たちをすべて解放することはできないが、彼らに対して無意味な憐れみを抱いてしまう。

  この偉大な戦士の背後で、私は言葉を失っていた。

  私たちは跪く魂たちの前を歩き、彼らが胸前の神に祈るのを見守った。たとえ信じる神が違っていても、彼らは誰かが必ず安息の地へと導いてくれると信じていた。私は前を歩き、彼は後ろで斬り、私たちは合掌した手を次々と斬り落としていった。

  「これらの魂は墓碑を持たず、自らの体の前で跪き、その骨を腐らせている。彼らの体は自然の循環に溶け込んでいくが、魂は何一つとして解放されることはない。」

  「これが戦争のもたらす苦しみだ。」

  「イロスタンよ、なぜお前は戦士として、剣に血を染めたのだ?」

  イロスタンの目は依然として前を見据え、微塵の怠りもなかった。

  「私はすでに千古の罪人だ。私は無数の罪を背負って、民の安寧を守った。」

  「後悔しているのか?」

  イロスタンは立ち止まり、その磐石のような足を止めた。

  「……おそらく。だからこそ、私はすべての敵を斬り尽くし、彼らの魂を終わらせるのだ。」

  私たちは歩き続けた。どれくらいの時間が経ったのか、分からない。一週間か、一ヶ月か、一年か?私はただ彼が冷たい剣を振り上げ、その剣の下で涙を流す手を見ていた。

  「お前はどれだけの魂を斬った?」

  「六千十七だ。」

  「いつまで斬り続けるのだ?」

  「分からない。」

  私たちは歩き続けた。私はその剣が何度魂の血と涙を吸ったのか、もう数えることができなくなっていた。イロスタンはただ斬り続けていた。

  「疲れていないのか?」

  「疲れている。」

  「ならば、少し休んではどうだ?」

  「私は、眠りについたらもう二度と目覚めないかもしれないことが怖い。」

  私は彼の足跡を追い、彼は自分の影を追っていた。長い時間が経ち、私はついに意を決して言った。

  「イロスタン・カリン、私はお前と取引をしたい。」

  イロスタンは立ち止まり、振り返り、その疲れ切った目で私を見つめた。

  「見知らぬ者よ、何の取引だ?」

  「私は、自ら墓碑を失った魂たちを一つ一つ解放し、彼らを千年の安息の地へと導く。私はお前の疲れた剣となろう。その代わりに、お前は私と共に自らの安息の地を探し、剣を振り上げ、栄光と太陽を迎えるのだ。」

  私はこの重い約束が、私の魂を永遠に縛ることになると理解していた。それでも、イロスタンはこのまま剣を振り続けるしかないのだ。

  イロスタンは長い間、考え込んでいた。

  ついに、彼は口を開いた。

  「お前は、私の罪を代わりに償うのか?」

  「そうだ。」

  ——

  私たちは無数の墓碑の中を歩き、弱者たちの血に染まった道を歩いた。彼は大剣を携え、私のために狂風を斬り裂き、剣光で夜明けを迎えていた。私は彼の後ろで、彼が作り出した避風港を享受していた。

  「お前は依然として剣を鞘に収めたままだ。誰を討とうとしているのだ?」

  「最後に、私の愛する者を傷つけた者を討つ。」

  「だが、お前の民はすでに死んでいる。彼らの魂は生者の世界で迷い、民の民もまた死んでいく。彼らはすべて、時間の流れに飲み込まれてしまうだろう。」

  「ならば、太陽神だけが永遠なのだ。太陽は今も星々の中に高々と立っている。」

  「ああ、そうかもしれない。」

  「ならば、太陽を討とう。」

  死が常態となった時、永遠もまた罪となる。

  それで彼は剣を掲げ、強靭な手綱を握りしめ、胸を熱くする誓いを叫んだ。千軍万馬が風に乗り、恐れを知らぬ太陽神を討つために進軍していった。

  「太陽を殺せ!太陽を殺せ!」

  後ろの兵士たちも一斉に叫んだ。彼らは皆大剣を掲げ、戦士と共に太陽の熱き冠を受けた。鉄壁のような魂が燃え尽きるまで、彼らは剣を掲げ続け、最後には戦士一人だけが残った。彼の衣服は灼け、魂は突き刺されたが、それでも彼は進み続けた。彼の魂は太陽に近づいていった。もう少し、もう少しで剣が太陽に届き、威厳ある永遠を討ち取ろうとしていた。

  しかし、太陽神は彼の剣さえも飲み込み、灼熱の鉄が彼の魂を焼き尽くした。それでも彼は進み続けた。たとえ血が流れ尽くし、太陽神が彼のすべてを飲み込んでも、彼はついに輝かしい安息を迎えたのだった。

  彼は太陽を打ち倒した。

  ——

  民は安息を得て、戦士は解放された。魂が燃え尽きる最後の瞬間に、自らを超え、神話となった。すべてが美しい悲劇によって完成された。

  私は戦士の背中を見つめていた。

  長い、長い間。

  そして私は歩き始めた。私の思考は、もはや怠ることを許してはくれなかった。

  私はただ、歩き続けた。

  

  “愛人”

  

  私はある場所に立っていて、別の場所から私の名前が呼ばれるのを聞いた。

  いや、それは私の偽名ではなく、本当の名前だ。私が生きていたときの、あの真実の名前。

  振り向くと、見覚えのある女性が遠くから私に手を振っていた。

  その瞬間、私は無限の悲しみに襲われた。生きていた記憶を失っていたにもかかわらず、彼女の死に対して深い哀悼の念を抱いたのだ。

  死んだ私が、死んだ彼女を悼んでいる。

  ——

  「久しぶりね。」

  「君は死んだのか?」

  「ええ、あなたと同じよ。自殺したの。」

  「君は報道を見たんだね。」

  「ずっとあなたのことを気にしていたわ。」

  「僕のために死んだのか?」

  「違うわ。私は、あなたのいない世界に疲れ果てただけ。」

  「さっき、僕は君のことを悼んでいたよ。」

  「私を悼まないで。それをしたら、あなたは孤独になってしまうわ。」

  「お互いに悼むことはできないのか?」

  「死んだ者同士が、どうして死んだ者を悼むことができるの?」

  彼女は私を愛していた。生きていた私は彼女の愛を感じていたが、愛への恐怖から彼女の求愛を避けていた。今、彼女は私に付き従い、死を共にした。私たちは共に生きる心臓を失った。

  私たちは無言で歩き始めた。広大な平原を、怒涛の海を。世界は依然としてその怒りを吐き出していたが、私たち聴衆は別の角度からその怒りを感じていた。

  「何か願いはあるか?」

  私は尋ねた。いつものように。

  「ないわね。もうあなたに会えたから。」

  「ごめん。」

  「どうして謝るの?」

  「君を死に追いやったから。」

  「それはあなたのせいじゃないわ。私もあの世界が怖くなっただけ。」

  私たちは笑い合った。生者の世界が怖くなったのは、同じだったからだ。

  ——

  江沉。

  私は目を開けた。

  「江沉……」

  私の名前を知っているのは、家族と愛する人だけだ。

  「今日も絵を描いているの?」

  「うん。」

  私は汚れたキャンバスの前に座っていた。朝日がカーテンの隙間から顔に差し込み、私は思わず手のひらで目を覆った。私は、この太陽を見たくなかった。

  キャンバスには草原と窓、花束と孤独な背中が描かれていた。もう少しで完成しそうだったが、最後の色付けがまだだった。

  隣から音が聞こえ、金属の箱が木に当たる音がした。

  「今日は豆のご飯よ。」

  「ありがとう。」

  その声は冷たくなく、優しくて温かみがあった。私は隣を見ると、揺れるスカートと清潔な弁当箱があった。それは、この醜い部屋には不釣り合いだった。私は弁当箱を開け、箸を取って食べ始めた。まるでプログラムされた機械のように、咀嚼しているのは私の口ではないように感じた。

  「今月はいくら払えばいい?」

  「いらないわ。父が亡くなったから、家を売って借金を返済したの。」

  「それなら、君にはもう私を支える義務はないよ。」

  「でも、まだしばらくあなたの家に住まわせてもらうわ。」

  カーテンがそっと開かれ、部屋に光が差し込んだが、私はもうその光を嫌悪しなかった。

  食事を終えると、彼女が言った。

  「外に散歩に行かない?」

  「うん。」

  ——

  私たちは、かつてよく訪れた公園に行った。そこには、過去の薄暗い記憶が残っていた。

  「覚えている?私たち、ここを一緒に歩いたの。」

  「うん。」

  私たちはここを歩き、それぞれの思いを風に解き放っていた。今も、私たちの魂がここを歩き、死んだ私たちの思考は風に解き放たれていた。

  私は風の中で生きていた彼女を思い出した。彼女が私を愛していたことは、私にとってどれほど幸福だったことか。その幸福があまりにも恐ろしくて、私はその幸福に触れるのを恐れた。私の汚れた手がその幸福を傷つけるのではないかと。しかし今、その幸福は彼女と共に墓に葬られ、私はついに深い解放を得ることができた。

  だが、私は忘れていた。私の思考はまだ生きていた。私が恐れていたその瞬間は、今も私を離れていない。そのことに気づいた瞬間、私は震え上がった。

  人々の声、風の音、この公園は変わらない。母親と子供たちは草原を駆け回り、サラリーマンはベンチで解放感に浸り、物乞いは地面に跪き、傷ついた魂たちはお互いを抱きしめ、その体の欠片でお互いを傷つけ合っていた。

  彼女はしゃがみ込み、見えない手で花を撫で、花の魂を摘んで私に差し出した。それはまるで、私が自殺したときのようだった。

  「これがあなたの好きな花かしら?」

  「ただの道端の野花だ。名前もない。でも今から愛することはできるよ。君が僕を愛し始めたのと同じように。」

  「でも、愛することは傷を増やすだけだわ。」

  「だから君の愛を避けたんだ。傷つくのが怖かったから。それなのに、なぜ今、傷つくことを選んだのだろう?」

  「だって、私はもう死んでいる。死んだ者は傷つかない。」

  「でも、君の思考は死んでいないよ。」

  私は急に泣きたくなり、嗚咽を漏らしながら泣き出した。生きているものは何も持っていないのに、それでも私は赤ん坊のように泣き続けた。彼女は私を抱きしめ、私は彼女を抱きしめ、私たちはお互いに哀悼の意を捧げた。

  ごめんね。

  ごめん……。

  ……

  ——

  ランガイスには冬が訪れた。

  きらめく雪が狂風とともに地面に舞い落ち、木々は白い葉を生やしていた。彼女はカーテンを開け、私は筆を手に取った。

  「ねえ、肖像画は描ける?」

  「少しだけね。」

  彼女は窓辺に歩み寄り、長い髪をかき上げた。その美しい顔は、凛とした冬の風景とともに私の目に映った。

  「窓の外を見て。正面は自信がないから。」

  私はこの粗雑な手で彼女の美しさを描く勇気がなかったので、下手な言い訳をして彼女の顔を避けた。彼女は私の願い通りに、白い木々と芝生を見つめ、画布に映し出された微笑みが生き生きと輝いていた。二時間後、私は画布を外し、彼女の前に立ち、両手で彼女に差し出した。

  「とても素敵ね。お金を払う必要がある?」

  「昔のお礼と思って、受け取ってくれればいい。」

  「それでは足りないわ。」

  彼女は立ち上がり、私の顔に手を添え、そっとキスをした。その柔らかな唇の感触に、私は耳まで赤くなった。私たちの唇がゆっくり離れると、私は夢のような感触を確かめるために、手を唇に当てた。

  「どうして僕なんかに……」

  私は思わず尋ねた。

  「だって、あなたが好きだから。」

  ——

  私たちはいくつもの場所を歩いた。

  沈む夕陽の中、海辺を歩いた。私たちは無言で歩き続け、生前の無感覚な生活を振り返りながら、誰も自分の死を後悔していなかった。

  「死の瞬間は、本当に怖かったわ。」

  「そうか?」

  「ビルから落ちたとき、首が折れるんじゃないかと怖かった。黒い血が清掃員を困らせるんじゃないかと怖かった。自分が醜く死ぬのが怖かった。」

  「僕は誰もいない海辺で死んだ。」

  「私もあなたみたいに楽に死にたかったわ。」

  死は確かに恐ろしいが、死んだ後になると、その一時の感情はどうでもいいことのように思える。

  私たちは海辺にたどり着き、波が何度も私たちの足元を打ち寄せた。それはまるで、大海が私の死体を奪い去ったようだった。初陽が海から昇り、私たちの砕け散った魂に光を注いでいた。

  「死後の魂は永遠なのかな?」

  「たぶんね。」

  「何もしなくていい。ただ歩き続けるだけ。」

  彼女の横顔は初陽の中でぼやけ、まるで空気のように淡く消えていきそうだった。私は手を伸ばし、その横顔に触れようとしたが、当然のように何も掴めなかった。

  突然、私は大きな悲しみに襲われ、その場に跪いて泣きたくなった。しかし、私は必死に耐えて立ち続け、私の目には、生きていたとき以上に強い希望が溢れていた。

  私は彼女の言葉に反論した。

  「死んだ魂は……生きているとは言えない。どうしてそれが永遠だと言えるんだ。」

  「それじゃあ、死はこの世で最大の絶望なの?」

  「……」

  この世で最大の絶望は、幸福だ。

  私はもう一言も言えなかった。彼女が生きていた幸福のように、私の前で死んでしまうのではないかと恐れたからだ。私は幸福というものに打ちのめされ、全身傷だらけになっていた。その憎たらしくも愛おしい絶望が、私が死んだ後も首を絞め、窒息しそうなめまいを感じさせた。私の思考はもうすぐ狂ってしまいそうで、この恐ろしい幸福に壊されそうだった。

  「私の願いが、もうすぐ叶うわ。」

  彼女の言葉は、私をその幸福という拷問から引き戻した。私は彼女の横顔を見つめ、そして遠くに昇る初陽を見た。

  「好きな人と一緒に、日の出を見ること。」

  彼女の魂はますます透明になり、柔らかな光の中に溶け込もうとしていた。私は彼女を掴み、抱きしめたかったが、どうしてもそれは叶わなかった。

  「行かないでくれ。」

  「もう遅いのよ、江沉。死んだ者が死んだ者に求愛できないように、死んだ者は死んだ者を悼むこともできないわ。」

  彼女の魂は、ますます多くの光を浴びて、その横顔は崩れ始めていた。私は祈らずにはいられなかった。もし彼女の魂を連れ去るなら、その前に私を殺してくれ。もう苦しみたくない。この大いなる裏切りに傷つくのは嫌だ。誰でもいいから、私の目を刺し、私の魂を引き裂いてくれ。私は自分の思考が私の体と同じように粉々になることを切望していた。

  私は小さく祈った。まるで、他の生者たちのように。再び目を開けると、私の前には彼女の壊れかけた魂だけが残っていた。

  「江沉、私、行くわね。」

  「行かないで……お願いだから……」

  私の情けなさに、私は吐き気を覚えた。

  「死後の世界には永遠はない。だから私たちは死後の世界に執着できないのよ。」

  「やめてくれ……」

  「……たまには自分の願いを考えてみなさい。」

  彼女が去った瞬間、私は崩れ落ちるように泣き叫んだ。まるで生きているかのように、周りには私の惨めな泣き声が響き渡っていた。私は、自分の心臓が地面に飛び散るのを感じた。それを拾い集めようとしたが、自分がすでに死んでいることに気づいた。私はただ泣く動作をしているだけだった。

  私は顔を上げ、太陽の光が存在しない目に突き刺さった。私の魂は燃え上がるようで、再び太陽に憎しみを抱いた。太陽は、この世界の永夜を終わらせ、私の思考に拷問を与えていたからだ。

  ——

  この世で最大の絶望は幸福だ。それはあまりにも脆く、私は恐怖を覚えるが、それでも生きることへの切実な希望を感じさせる。だが、その幸福が本当に壊れた瞬間、その儚い希望が私の心臓を自ら粉々に砕いてしまうのだ。

  そして、私は先ほど、この絶望に打ちのめされていた。

  私の心は、すでに死んでいた。

  私の内臓は、地面に飛び散っていた。

  だが、私の思考は、まだ生きていた。

  ……

  「たまには自分の願いを考えてみなさい。」

  そう言われて、私は再び立ち上がり、また歩き始めた。

  

  “愛と死を乞う”

  

  私。

  太陽。

  鏡。

  スクリーン。

  花。

  拳銃。

  私は曖昧な詩篇を歩み、冷たい陽光の中を進む。私は鋭い刃を虚無の心臓に突き刺し、歩く自分の死体を殺した。

  世界は灰色に染まり、至る所に鏡がある。鏡の中には私の恐怖、怒り、悲しみが映っている。太陽が死んだ後の世界は暗黒で、月はただ灼熱の余韻を引き継いでいるに過ぎない。

  そして私はただ歩き続ける。薄明の中、残光の中、鏡面の上を歩き続け、足元では死んだ心臓が引き裂かれていく。

  私はこの世界を罵倒したくなる。この残酷な世界を心底憎んでいる。胸前の神すらも憎んでいる。彼はこの世界を使って私を鞭打ち、傷だらけにしたのだ。

  私の無力、私の怒り、私の死は、私が望んだ通りだった。

  私。

  ――

  私は墓地にたどり着いた。

  灰色の世界。墓石、花。記憶はここにかつて少女の死体があったと教えてくれる。彼女の魂はここに座っていたことがあった。

  だがもう少女ではない。ここには死人同然の墓守がいる。彼も私と同じく死んだ魂であると確信し、彼に自分を殺してもらおうと頼みに行った。

  私は彼の肩を叩いた。

  彼は振り返り、私を見ているかのようだった。

  「お願いだ、私を殺してくれ。」

  その言葉は結局、口に出すことはなかった。しかし、私は本当に彼が私の助けを聞き取ってくれることを願っていた。どうか、解放してくれ。

  だが、彼はただ私の体をすり抜け、この墓地を見回しているだけだった。彼はただの墓守で、生きている人々と同じように騒がしい存在だった。私は怒りが込み上げ、叫びたくなり、何かを壊したくなった。その怒りは魂の隅々まで広がり、私は自分自身を憎んだ。

  なぜ?なぜ私だけが死ぬに値しないのか?私は何を罪を犯したのか?

  私は臆病に死んだ。鉄器で生きていた自分を終わらせた。そして、貪欲にも一束の花を自分の死体に捧げるために持ち込んだ。

  なぜ?私は多くの魂と共に、生者の大廈や草屋を通り過ぎてきた。彼らの魂をその死体と共に死なせた。私は失われた魂を渡し終えたが、誰が私を渡してくれるのか?

  私は自分自身を渡すしかない。

  「あなたは死んだのか?」

  振り返ると、墓守がそう言った。

  「おそらく。でも、私の思考はまだ生きている。そして私は苦しみ続けている。」

  「もし生きることが苦しみだというなら、この世は地獄に他ならない。」

  ああ、そういうことだったのか。

  理解が一気に押し寄せた後、無限の恥と悔いが胸に湧き上がった。私の肉体は既に死んでいるのに、生きている人々はこの世の拷問を絶えず受け続けているのだ。なのに私はここで怒り、すべてを神とその創造物のせいにしていた。こんな単純なことすら、誰かに指摘されるまで気づかないなんて、なんと情けない。

  「死を望んでいるのか?」

  「私はいつでも、自分の思考が肉体と共に死ぬことを望んでいる。」

  墓守はそれ以上何も言わず、私はその時間の裂け目の中で、彼が生きているのか死んでいるのかわからないまま観察していた。彼は現代の人間ではないように見えた。彼の軍服はまるで前世紀のもので、ぼろぼろになって今にも崩れ落ちそうで、自然の循環に戻りかけているようだった。だがそれ以外、彼は死人とほとんど変わらなかった。白んだ瞳、死体のような顔立ち、そして言葉に染み込んだ絶望。

  「あなたも死んだのか?」

  「いや。」

  「なぜ軍服を着ている?あなたは軍人なのか?」

  「今は違う。私はここで墓守をしている。」

  「なぜ私が見える?」

  「わからない。たぶん私も死んでいるからだ。」

  「あなたは死んでいない。」

  「私の思考は既に死んでいる。私はただ肉体の腐敗を待っている。」

  「何年この墓守をしているんだ?」

  「67年だ。」

  だが、彼には老いの皺もなければ、白髪もなかった。67年間も墓守をしているというのに、一体彼はどれほどの苦しみをこの世で味わったのだろうか?

  「あなたには墓碑があるのか?」

  「そんなものはない。自分で自分をランゲース湾に埋めたのだ。」

  そのとき、私は彼の軍服に前世紀の紋章があることに気づいた。それはあの飛行士と同じ、港湾の軍閥に属するものだった。

  「どの戦役に参加していた?」

  「数え切れない。ほとんど忘れてしまった。」

  私は彼と共に、残された願いを探し、彼を安息の彼岸へ送ることができるのではないかと考えた。

  「……あなたには願いがあるのか?」

  「君と同じだ。」

  「後悔は?」

  「……」

  やはり、軍人たちの魂は狂風に吹き散らされ、強靭な殻の中には満ち満ちた後悔だけが残っているのだろう。

  そして私は彼と共に歩き続けた、歩き続けた。

  ――

  私たちは朽ちた木の上を歩き、鉄の流れの中を歩いた。ランゲースの湾を渡り、冤魂の乱葬地を歩いた。

  「生前、君の名前はなんだった?」

  意外にも、今度は墓守が私に問いかけてきた。

  「羽島。」

  「それは本当の名前か?」

  「……」

  私は黙った。それが本名ではないことは明らかだった。しかし彼は私の嘘を簡単に見抜いてしまった。

  「その名前は、私が人間社会に生きていた象徴だ。その名前を失ったら私は何者でもない。」

  「だが、それは君の本当の名前ではない。本当の名前を持たない者には墓碑もない。」

  「それでも、そんなものは必要ない。」

  私たちは昔の公園を歩き、野草や花の上を踏みしめた。魂には重さがないはずなのに、どこかに重く沈んだ心臓があるのを感じた。

  「ここはどこだ?」

  「生前、愛する人と過ごした庭だ。彼女はここで私に愛を告白してくれた。」

  私は墓守と共に、生者の庭を歩いた。朽ちた魂だけが、過去の記憶を懐かしんでいる。

  「君の愛する人は?」

  「彼女は願いを叶え、主に連れて行かれた。」

  「では、なぜここにいる?」

  「おそらく主の罰を受け、この世で苦しむためだろう。」

  「私も同じか?」

  「君はまだ果たしていない願いがあるだけだ。」

  「だが、私を愛した者も憎んだ者もすでに死んだ。愛した人も憎んだ人も、死の後を追っていった。私のすべての後悔も怒りも信仰も願いも、時間の中で死んでしまった。なぜ私はまだ死ねないのだ?」

  「わからない。」

  誰にもわからない。

  ――

  「私は君が好きだ。」

  「うん。」

  「でも君は私のことを好きではないの?」

  私は彼女とベンチに座り、彼女が言い、私が答えた。

  「いや、ただこの感情をどう扱っていいかわからないだけだ。」

  「ただ受け入れるだけでいいのに。」

  だが私はその感情が怖かった。私は常に傷つくことを恐れていた。この感情には棘があり、私のような卑しい者には、この菊のような美しさは不相応だ。

  「ごめん。」

  「大丈夫、私は待ってるから。」

  彼女は手で野草を撫で、一輪の白い花を摘んだ。彼女の指先からは鮮血が滲んでいた。

  「その血、野草に切られたのか?」

  「うん。」

  血が指から滴り落ち、土と野草に染み込んでいった。私はぼんやりとそれを見つめていた、ただ見つめていた。

  「包帯を巻いた方がいいかもな。」

  「いいのよ、私の心にはこれよりずっと大きな裂け目があるんだから、この程度の傷なんてどうってことないわ。」

  彼女はまるで思いつきで言ったかのように、あるいは私を激しく責めているかのように語った。その言葉を聞いて、私は突然、めまいを感じた。

  「ごめん。」

  ごめん。

  ――

  私は墓守と共にランゲース湾を歩いていた。潮が洗うこの場所を、私はいったい何度人と共に歩いただろうか。私の愛する人、私を渡した人、そして私自身も、この湾で死んだ。彼は海の向こうを見つめていた。そこには時間の河があり、すべてが恐ろしいその河に流れ込む。

  「私はかつてここで自殺を試みたことがある。」

  墓守は言いながら歩いていく。私はその後を追って歩いていた。

  「だが、私は波に向かって弾丸を撃った。自殺する勇気がなかったのだ。」

  「だが君の愛した人も憎んだ人も、すでに時間の中で死んだはずだ。君は何も残っていない。」

  「私は愛する人に生き続けることを誓ったのだ。」

  「それでも君は死を求めている。」

  「その誓いはあまりにも重すぎて、私を圧迫し、息もできなくなった。だから私は肉体の死をただ待つしかない。」

  「だが君は肉体の終焉を待てないだろう。君は一体、どれほど生きるつもりだ?」

  「わからない。そんなこと誰が知るものか、二百年後かもしれないし、明日かもしれない。しかしどうでもいい、もう二度と太陽を見たくない。」

  「君は多くのものを背負っている。」

  「おそらく、それが私が生きている理由だ。」

  そして私は彼と共に初陽と残暮を歩き、彼は自分について語った。私はただその話を聞く者でしかなかった。

  「君の名前は?」

  「忘れた。」

  「君は神の子かもしれない。」

  「誰が私を生んだか知らない。私にはただ戦争の記憶しかない。」

  私たちは話し、語り合い、まるでこの世が私たちに与えた苦行について挨拶を交わしているかのようだった。違う時代に生きていても、私たちはこの世界が与えた愛と憎しみを共に受けていた。

  「君は多くの死者の魂を導き、彼らを安息の地へ送り届けた。」

  「私はただ、彼らと共に自分の願いを探していただけだ。足元が彼らの安息の地だった。」

  「では、君にはどんな願いがある?」

  私は口をつぐんだ。死んだ私にはただ目的もなく歩くことしかできない。死者を渡すことなど、私の無意識の行為でしかない。私は自分の願いについて考えたこともなかった。

  「……」

  ――

  私は墓守と共に墓地へ戻った。残光が今も遠くのビルの上で輝き、波のきらめきを照らしている。

  「では、死者を導くことが君の務めなのか?」

  「違う。」

  「だが君は多くの者を安息の彼岸へ導いた。」

  「そうであっても、私は渡し守ではない。」

  風が彼の衣を揺らし、死んだ思考が私に語りかけた。

  「では、苦しみを受けろ。魂の体で山川や河を渡り、空の足で初陽と残暮を踏みしめ、迷える魂を導くために苦しみを受けろ。」

  「自らの苦難に愛を求め、自らの死神に死を求め、この世の者たちに告白し、自らの魂をもって彼らの苦しみを分かち合え。」

  愛を求め、死を求めろ。

  ――

  私は歩く動作をしながら、歩き続けた。私は骨を削るような森の中を歩き、群れ動く魂の中を歩いていた。

  私は何をするつもりなのだろうか?

  私はこの世界のために苦しむつもりだ。

  私はこの世界の苦しみを語るつもりだ。

  愛し合う者たちよ、いずれは別れが来る。

  私は歩き続け、ふと何かを思い出したように彼を振り返った。

  「君の後悔は何だ?」

  私は尋ねた。

  「次に会う時に教えてやろう。」

  彼は微笑んだ。

  

  “海”

  

  江沉は、いくつもの場所を歩いてきた。

  どれほどの歳月が経ったのだろう? 江沉にはもう覚えていない。ただ、灯台のそばに植えられたあの大きな木が枯れたことだけは知っている。そして、オフィスビルを見守っていたあの墓地が荒れ果てたことも。彼は重さのない手でいくつの魂を撫で、混濁した眼でいくつの死を見つめたのか、数えきれない。

  江沉はただ、歩く動作をしていただけだ。疲れ果てた大地を踏みしめ、大地は抱きしめることのできない人々であふれていた。

  江沉は歩き続ける、ただ歩き続ける。

  ——

  海は、私が見える少女だった。私はランゲースを何年も彷徨っていた。ある日、私は角にうずくまっていた少女に呼び止められた。

  「あなた、誰?」

  私は振り返り、彼女に問い返した。

  「あなた、死んでいるの?」

  「死んでなんかいないさ。それに、君は学校の人間じゃないだろう?」

  海は濡れたままのカバンを抱え、制服は穴だらけで泥まみれだった。そのとき、海は15歳だった。

  「どうして君には私が見えるんだ?」

  「……だって、あなたがここに立ってるからでしょ?」

  以前に私が見えた人間は、肉体と共にその思想も死んでいた。私は彼女のそばへ歩み寄り、彼女の目の中にある嫌悪と警戒心を簡単に読み取ることができた。

  「どうしたんだ?」

  海は黙っていた。

  「君の名前は?」

  「海。」

  ——

  私は毎日、午後6時45分に学校の門前に立っていた。その時刻には、残照が頭上の木の葉によって細い糸のように分断され、アスファルトの道にこぼれ落ちていた。

  最初の下校のベルが鳴ると、私は振り返った。小柄で、顔中にそばかすのある少女がうつむきながら一歩一歩進んでいく。彼女は時折、私の方をちらりと見た。彼女には、自分が他の人に見えないものを見ていることがわかっていた。それゆえに、同級生からのいじめがさらにひどくなることも知っていたが、それでも彼女は毎日午後6時45分の放課後を楽しみにしていた。彼女だけの特別な時間がそこにあった。

  「あなたは死神?」

  「違う。」

  「じゃあ、いったい何なの?」

  「誰にもわからない。」

  海は、誰かが自分の話を聞いてくれるこの時間を楽しんでいた。高い壁を通り過ぎると、その向こうにはランゲースの波があった。

  「どうしてあなたは私の話を聞いてくれるの?」

  「私は誰の話でも聞くさ。」

  「でも、誰も私の話を聞いてくれない。」

  微かな波がまたもや壊れた湾を打ち寄せていた。その波はいつ疲れ果てるのだろうか?

  おそらく、それは私と同じように、この世界が終わるまで続くだろう。

  海は学校で好かれていなかった。どの時代、どの階級でも、人が人をいじめる現象は暗いところで育ち続ける。海は学校で苦い悪夢を見ていたが、家に帰ると、玄関口に倒れて酔い潰れている父親をまたいで入らなければならなかった。

  ランゲースの秋、海は大海の見えるアスファルトの道で私に言った。

  「あなた、死んだ後の魂なの?」

  「たぶんね。」

  「私が死んだら、私もこうなるの?」

  「うん。誰もが死ぬ瞬間、その魂は体から抜け出す。そして私は彼らの手を取って、安息の地へ導く。」

  「魂が眠る場所って、どこなの?」

  私は振り返り、彼女の深い青色の瞳を見つめた。

  「私は彼らが生きている間の願いを叶えるために導く。願いが叶ったとき、足元が安息の地となる。」

  海は何かを思い始めたようだったが、私はそのとき、彼女が私という死霊に対して病的な憧れを抱き始めていたことに気づいていなかった。彼女は私の手を握り、私は彼女の手を握り返したが、どちらの手にも重みは感じられなかった。

  ——

  海は毎日の放課後、私と一緒に帰る時間を待ち望んでいるようだった。

  なぜだかはわからない。おそらくは、二つの孤独な魂が、ある瞬間にお互いを引き寄せるのだろう。まるで二つのブラックホールが互いに回転し、飲み込み合い、そして最後には崩壊するかのように。

  海の学校生活は相変わらずだったが、彼女の足取りは少し軽やかになった。私は彼女の隣を歩き、かつて迷える魂たちを安息の地へ導いたように彼女を導いていた。違うのは、私は生きている人間の手を握り、彼女は色のない私の目を見つめていたことだった。

  「あなたの名前は?」

  「羽島。」

  「それ、本当にあなたの名前?」

  「たぶんね。」

  「なんだか、嘘くさい名前ね。」

  私は微笑み、言葉を返さなかった。かつて、別の少女にも同じことを言われたことがある。

  「ねえ、あなたは生前、どんな人だったの?」

  「たぶん、君と同じようなものだろう。私は人間の特徴を持ち、生きている考えを描いていた。今は、私は死に、死んだ思想を歩んでいる。」

  「あなたは画家だったの?」

  「かもしれない。もう覚えていない。」

  土塀が海を遮り、夕陽は見えなくなった。

  「死んだ世界、それは永遠の命なの?」

  「違う。死んだ世界には安息の地がある。私はすべての魂をその場所へ導く。」

  「もし私が死んだら、あなたも私を安息の場所へ導いてくれる?」

  「そうだ、必ず導くよ。」

  私は彼女の乱れた髪を見下ろした。

  「君の願いは何だい?」

  「そのときが来たら教えてあげるよ。」

  ——

  海は入院し、左手を骨折していた。

  私は病院の入り口に立ち、左から数えて7番目、3列目の窓を見つめた。そこが海の病室だった。教師が一人、生徒が二人、男が一人、やがて全員が海の前から消えた。

  私は病室のドアの前に立ち、海はベッドに横たわり、窓の外を見つめていた。

  「遅かったじゃないか、死神。」

  「私は死神じゃないよ。」

  私は海の隣に座った。海は沈む陽の前に横たわっていた。

  「わかってる? 私はもうこんな生活にうんざりしてるんだ。」

  「わかってるよ。」

  「毎日、クラスメートのいじめに耐えなければならないし、先生は見て見ぬふりをする。家に帰れば、どうしようもない父親が待っている。」

  「それで、死後の世界に憧れているのか?」

  「そうかもね。」

  私は言葉を失った。ずっと封じ込めていた思いが、暴力的に開かれそうだった。私は重みのない手を取り、彼女の額を撫でた。

  「死後の世界は生者が憧れるものではない。死を求めて死に急ぐのはやめなさい。」

  「それなら、江沉、なぜあなたは自殺したの?」

  数年前の銃弾が再び私のこめかみを貫き、私は魂にふさわしい言葉を見つけることができなかった。なぜ私は自殺したのだろう? そもそも、私は自殺してから何年経ったのだろう?

  「43年前、グロックでランゲース湾で自殺した画家、それはあなたでしょ、江沉。」

  ……

  海は私を見ず、目尻に涙が一筋流れた。私は彼女の涙を拭ってやりたかったが、形のない自分の手を憎むしかなかった。

  「わかってたよ。江沉、私の手が治ったら、旧墓地の前のビルの屋上で待ってるよ。そのとき、少し付き合ってくれる?」

  「……うん。」

  ——

  43年の時を経た魂が、長い間失われていた時間を再び拾い上げた。私は少し、戸惑いを覚えた。おそらく3ヶ月後、私は陽光に照らされた錆びた鉄の階段を登り、今まで一度も足を踏み入れたことのないオフィスビルの屋上に立った。

  最上階で、私は海を見つけた。彼女は最も美しいドレスを着て、彼女にまったく似合わない化粧をして、コンクリートと空が交わる場所に立っていた。これは、生から死への一歩だった。

  「海。」

  海は振り返り、私の目を見つめた。

  「海、君はただ死を憧れていただけでなく、私にも憧れていたのか?」

  「誰にもわからないよ。」

  「君は嘘をつくのが上手になったな。」

  「そうしなければ、あなたは私を受け入れてくれた?」

  「私は迷った魂すべてを受け入れる。」

  「その迷った魂には、私も含まれる?」

  「含まれるさ。」

  私は迷わず答えた。

  海は細い手を腰の後ろで組み、今にも結婚式を迎える花嫁のように美しかった。私は怖かった。彼女が後悔するのではないかと恐れた。しかし、私自身が自殺した身で、彼女を叱る資格はなかった。

  「海、君は私の過去を知っているか?」

  「そんなことはどうでもいい。」

  「私は愛する人を送り、失われた神を送り、そして自分の約束を送らなければならない。この世界のすべての苦しみを受けなければならない。それでも、君は後悔しないのか?」

  「気にしないわ。江沉、私はそんなささいな恋愛のためにここにいるんじゃない。」

  海は私の方へ歩み寄り、つま先立ちをして、生きている腕で私の首を抱きしめた。

  「江沉、私は生きているこの世界が怖いの。だから、どんな苦しみが待っていても、私を受け入れて。」

  そして、私は彼女の手を取り、彼女と共にコンクリートと空の境界に立った。私たちは生と死の境界を越えようとしていた。

  「海、君はまだ私を死神だと思っているのか?」

  「もしあなたが死神なら、私はあなたを救う天使よ。」

  私は笑った。43年ぶりに、私は笑った。そして海も笑った。私たちはこの生者の世界を一緒に嘲笑した。

  「それでは、天使様。」

  行こう。

  ——

  あの日から、私はもう一人ではなくなった。

  笑え、笑い飛ばせ、この獣たちで満ちた地獄を。

  血と心臓の破片を受け入れ、私たちの魂は肉体から抜け出した。

  私と共に苦しみを受け、墓を失った魂を導いてくれ。

  この後悔と残光に満ちた世界に、最後の舞を捧げよう。

  (完了)

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