表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

鍵の行方

作者: 獅堂平

 康介こうすけ美咲みさきの出会いは、共通の友人である由紀子ゆきこの紹介だった。

 二人は瞬く間に意気投合し、連絡先を交換する。知り合って一ヶ月後に、康介の告白に美咲が頷き、交際がスタートした。


 恋人関係になり、半年が経った時。

『今日、仕事休みでしょ? いまから会いに行くよ』

 美咲からメッセージアプリで連絡がきた。普段は予定通りに行動する彼女だが、珍しく唐突の申し出だ。

『いいよ』

 康介は即答した。


 最寄り駅まで迎えに行った。康介と美咲は近くのスーパーマーケットに寄り、ディナー用の食材を購入した。康介の右手には買い物袋、左手は美咲と手を繋ぎ、自宅アパートまで歩く。

 アパートの屋根が見え始めると、康介は挙動不審になる。

「あれ、ない」

「なにが?」

 美咲が聞いた。

 康介はズボンのポケットをまさぐり、うろたえる。

「ポケットに入れたはずの部屋の鍵が、なくなっている……」

「どこに落としたか、心当たりある?」

 美咲の問いに、康介は左手を顎にあてがい思案する。

「わからない。スーパーかな? それとも、電車の中?」

「ここにいても、どうしようもないから、とりあえずスーパーあたりまで戻ってみよう。鍵がどこに落ちているかも」

 美咲の提案に乗り、二人は踵を返した。


 アパートからスーパーマーケットまでの道のりを戻る。時間をかけて確認したが、道路に鍵は落ちていなかった。

「ごめんね。こんなことになって」

 康介は頭を下げ、謝罪した。

「しょうがないよ」

 美咲は同情した。

 康介は眉を顰め、申し訳なさそうに言う。

「悪いんだけど、今日は帰ってもらっていいかな。もう一度、道路を探してみて、なかったら交番所で手続きしてくるよ。家の中は、管理する不動産屋にいって、スペアキーがないか聞いてみるよ」

「わかった。気にしないでね」

「本当にごめん。駅まで送るよ」

「うん」

 二人は最寄り駅に向かった。


 *


 *


 *


「ただいま」

 鍵を開け、康介は部屋に入った。

「おかえりなさい」

 由紀子が康介に抱きつく。

「おう。イイ子にしていたか」

 康介は由紀子の頭を撫でた。

「しかし、あなたも悪い人よね」

 由紀子は康介にキスをする。

「私と美咲で、二股しているなんて」

「今回は驚いたよ。まさか、由紀子と会う日に、美咲が押し掛けてくるとはね。鍵をなくしたふりして、うまく誤魔化したけど」

「ふふ。本当に悪い人」

 由紀子は不敵に笑った。


 *


 *


 *


「やっぱり、そういうことだったのね」

 美咲はすべての会話を聴いていた。

 盗聴器の存在に二人が気づくのは、一週間後のことだ。


いつもありがとうございます。

ポイント(評価)、ブックマーク、感想は大変励みになります。


よろしければ、お手隙の際に下記の☆をご確認ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

同作者の次の小説もオススメです。

七角館の殺人 ~存在を消された少年~

孤島にある七角館では、イジメの加害者メンバーが集まってバカンスを楽しんでいた。 一方、本土ではイジメの被害者の兄が、弟を心配して海岸に佇んでいた。怒涛の展開の短編ミステリ。

憂鬱

自称作家はコンビニ店員に一目惚れした。
店員と客の関係が思わぬ方向へ転がっていくサスペンス&ヒューマンドラマ。

同作者のシリーズ一覧

+ポイントについて(評価について)+

ポイントは、作者のモチベーションに繋がります。積極的に入れていただけるとありがたいです。
★1でも喜びます。


+感想について+

すべての項目を入れる必要はありません。「一言」だけでも充分です。


+お気に入りユーザー登録について+

お気に入りにすると、作者の新作や更新が通知され、便利です。

script?guid=on
― 新着の感想 ―
[一言] この3人の男女に、1週間後何が起きるのか。 想像するとハラハラしますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ