5年越しの想い
幼馴染みがいた。
家も近所で、親同士も仲がよく、一緒に居るのが当たり前だった。
でも――
ずっと続くと思っていた関係も、高校生になり、周りに囃し立てられたり、やっかみを受けたりするようになると、互いに互いを避けるようになって――
離れて初めて“好き”なんだって気付いた。
告白されて「好きな人がいる」と断ってたと聞くたび、複雑な気持ちになったが、自分から踏み出す勇気もなかった。
そんな微妙な関係が続く中、卒業式の前夜に、一通のメッセージが届く。
“卒業式の後、二人でタイムカプセル埋めない?”
何を急に……と思ったのも一瞬。
最後のチャンスかもしれないと感じて、了承のメッセージを返し、未来に向けた手紙を準備する事にした。
幼馴染みに渡したくて、バイトの給料を貯めて用意していた品と一緒に――
「そう言えば、海斗が仲良かった、花木さん家の芽依ちゃん元気なの?」
「さぁ。 長い事連絡取ってない」
大学卒業の後、就職して一人暮らしをしていた俺は、年末年始で実家に帰った際に、親の口から、懐かしい幼馴染みの名前を聞いて、思い出した。
5年前に埋めたタイムカプセル。
そして、結局渡せずに、「未来の自分に」等と、自身に言い訳しつつ、手紙と一緒に埋めた品と、自分の気持ちを……
久しぶりに連絡してみるか、と思って実家の自室で充電していたスマホを手に取った俺は、未読のメッセージに気付いた。
“今年も戻って来てるよね? タイムカプセル掘ろうよ。 待ってるね”
送り主は、幼馴染み。
タイムリーな、と思いつつ確認すると、丁度30分前に届いていた。
すぐに出掛ける準備をして、急いで家を出る。
なんとなく、“待ってる”って言葉が、返事を待ってるんじゃない気がしたのだ。
そして――
「あ、やっほー、海斗。 久しぶり」
そこでは、随分大人びて、美人になった芽依が――
「お前さぁ、俺がすぐ気付かなかったらどうすんだよ……」
「カイロ持ってるし、2~3時間なら大丈夫」
――俺の心配をよそに、あの頃と変わらない、大好きだった笑顔を浮かべる。
「さぁ、早速掘り返そっ」
そんな芽依を見て、あの頃から気持ちが変わっていない事を再確認した俺は、5年前に勇気が出せず、自分達へ宛てた手紙と共にタイムカプセルへ入れていた、安っぽい指輪を芽依に差し出した。
そして――
「遅くなって、ごめん」
泣き出してしまった芽依をそっと抱き締め――
「待っててくれて、ありがとう」
5年越しの想いを、告げるのだった。