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パンツァーヘクセ ~魔法使いが戦車で旅する末期感ファンタジー~  作者: 御佐機帝都
一章 金色の断末魔(Battle of Colony)」
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戦車講座 五号戦車Rizel

五号戦車リゼルL型

車体装甲厚(前/側/後):30/30/30

砲塔装甲厚(前/側/後):60/30/30

戦闘重量:23トン

乗員:4名

エンジン:4ストロークV型12気筒液冷ガソリン550hp/3600rpm

最高速度:57m/h

戦車砲:7.5cm KwK100 (48口径)

副武装:7.92mm MG94×2



概要

 五号戦車リゼルは大戦中盤までベルカ陸軍戦車部隊の主力を務めた中戦車である。

 火力と機動力を重視した長距離侵攻用の戦車であり、互いに無線で連携した戦車が集団戦を行い、機動力を生かして敵陣を突破するという画期的な戦術は大戦初期の快進撃の原動力となった。


来歴

 三〇年代後半、東方生存圏確保の計画を始めたベルカ軍は、侵攻作戦において装甲部隊の主力となる中戦車の開発仕様書をライヒスメタル、フォルケット、リンエネガー、メイウェルビンに提示。四社はそれぞれ設計案を提出し競争試作を行うこととなった。

 開発仕様書においてはBMW(ベルカマイスターズ工房)製のエンジンと、ライヒスメタル製7.5cm対戦車砲を改修した戦車砲が指定されており、重量は既存の戦車運搬用トレーラーで輸送できるよう22トン以下に抑えることが要求された。

 期日までに試作車両を完成させたのはライヒスメタルとフォルケットであり、性能面では甲乙付け難かったが、より生産性に優れたライヒスメタルのものが採用された。

 なお、試作四号車はライヒスメタルと兵器局の意向により、父親が寝たきりとなって落ち込んでいたレーネを励ますべく、誕生日プレゼントとして納品されている。


設計

 車体、砲塔共に均質圧延装甲板を組み合わせた溶接構造となっており、特に車体は国内で導入が進んでいた自動溶接を最大限活かすべく、張り出しを設けない箱型となっている。

 一方で数多くの新機軸も盛り込まれており、横置きトーションバーサスペンションは走行性を格段に向上させ、プリセレクター式変速機は油圧式補助機構が付いており優れた操縦性を確保した。

 航続距離も重視しており、備品はできるだけ履帯カバー上に設置された雑具箱に収め、燃料タンクの容積を稼いでいる。


攻撃力

 既に量産配備中の7.5cm対戦車砲を改修し、薬莢を短くして車内での取り回しを良くした戦車砲を搭載している。

 実戦投入時点で必要十分な火力を有しており、大戦後期に入っても敵戦車に有効だった。


防御力

 リゼルの防御力は初陣の時点で不足していた。

 砲塔正面は何度か強化が図られたが車体装甲は変化が無く、大戦中期に生産が打ち切られる最大の理由となった。


機動性

 機動性こそがリゼル最大の武器である。

 出力重量比は20を超えており、いかなる悪路も難なく走破して迅速な攻勢を可能とした。

 また車両運搬が可能という点も戦略的機動性を大きく高めており、後方からの増援も故障して回収される車両もトレーラー1台で迅速に輸送できた。


バリエーション

A~D型

 新技術の実験および卵生連合からの軍事視察に対応するために生産された。

 相互軍備条約を順守していた時期であり生産数は少ない。


E型

 コニファール侵攻戦が決定した四一年一月から生産が始まった本格量産型。

 A~D型の性能試験で得た知見が反映されており、リゼルの基本構成は後の型式でも変わらない。

 リゼルの完成度は同世代の他国の戦車と比べて抜きん出ており、機動力と砲性能は敵戦車を大きく凌駕していた。

 一方で防御力の不足については初陣の段階から問題視された。

 先陣を切るリゼルはコニファール軍の40mm対戦車砲や75mm野砲から集中砲火を受け、特に砲塔は千メートルでも貫通された。

 戦術面での優位性もあって各地で敵軍を圧倒したが、突出した戦車部隊は味方の支援を十分に受けられないため、損害もまた想定を上回った。

 これ以降、リゼルは砲塔防御の強化を繰り返していくこととなる。


F型

 砲塔正面に20mmの中空式追加装甲を取り付け可能とした。なお、この追加装甲はE型にも整備などの際に取り付けられている。

 また戦車砲が48口径長のものに更新された。

 それ以外にも、ターレットリングに跳弾板の追加。砲架をトーションバー式平衡機へ変更などが行われている。

 コニファール共和国の降伏直前に量産が始まり、E型共々東方侵攻戦に投入されたが、追加装甲は暫定的な処置であり生産ラインはすぐにJ型へと切り替えられた。


J型

 砲塔は後面が一枚板となった新型を採用。砲塔前面には30mmの追加装甲をボルト留めしている。

 砲塔旋回速度が上がったほか、車体前上面にブレーキ冷却口を設置している。逆にターレットリング保護用の跳弾板は廃止された。

 生産が始まってからしばらくの間温存され、ミネル連邦侵攻戦にて実戦投入された。そしてこの戦いがリゼルの運命を決定づけることとなる。

 ミネル石軍の主力戦車であるT-40に対し総合力では上回っていたものの、足を止めての撃ち合いでは決定的な優位性は無く、自慢の機動力を生かそうにも突出した瞬間に対戦車砲や師団砲の集中砲火を浴びることになり、もはや運用上の工夫ではどうにもならないほど防御力が不足していることが明らかになった。

 これらの戦闘を経た用兵側の要望は、正面装甲は傾斜込みで100mm以上。側面装甲も50mmは欲しいというもので、これは暗にリゼルでは主力戦車の役割を果たせないという事を意味していた。

 なお、続くL型は量産開始時点で生産ラインの縮小に入っていたため、リゼルの生産数はJ型が最多である。


L型

 四二年春から生産が始まったリゼルの決定版。

 無線手を廃し、空いたスペースに弾薬庫を追加。弾薬搭載量は殆ど増えておらず、代わりに燃料タンクを増設することで航続距離を延ばしている。

 これに伴い操縦手席右横に存在した固定機関銃は廃止。正面装甲は単純な一枚板となり、無線機は新型のものに更新しつつ砲塔後部に移設された。

 砲塔も新規設計のものに変わっており、防盾を60mmの一枚板に変更。上面に装填手用ハッチが追加された代わりに、側面のハッチは廃止されている。

 この乗員配置は後のベルカ軍戦車にも引き継がれる事となった。

 その他にも車長用キューポラに機関銃用のガイドレールを追加。生産途中からマフラーに整流板が取り付けられ、車体側面脱出ハッチも廃止された。

 これ以外に車体および砲塔側面に追加装甲を装備するという案もあったが、機動性の低下と引き換えにするほどの効果は無いとして却下されている。

 すなわちリゼルはこれ以上延命させても意味が無いという判断である。

 卵生連合の生産力は想定以上であり、ベルカ軍では兵器の質的優位を重視すべきという意見が大半を占めていた。

 そのため更なる強化型は開発されず、L型がリゼル最後の生産型となった。

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