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お母さん! ただいま!(4)

 赤く焼けただれた世界に、呆然と立ち尽くす一人の男がいた。

 その手には、ソフトクリームが二つ。

 しかし、熱のためなのか、ソフトクリームは原型をとどめず、ぼてぼてと溶け落ちていた。

「一体、何が起きたんだ……」

 チャイ子に頼まれソフトクリームを買いにいったホストが戻ってきたのであった。


「なんでもう死んでいるんだよ! まだ、お前、ソフトクリーム食べてないだろ!」

 男の悲痛な叫び声が聞こえた。


――何も聞こえない! 何も聞こえない!

 優子とプアールはそそくさと足を速める。


 きゃぁぁぁぁ! 人殺し!

 遠くから、どこぞのご婦人の悲鳴が聞こえてきた。


「俺じゃない! 俺の毒が入ったソフトクリームは、まだ食ってないんだ! だから俺じゃない!」


 そうである。このホストはチャイ子の命を狙っていたのであった。

 ホストは、保険金が入る入ると口だけで、いっこうに金を持ってこないチャイ子に嫌気がさしていた。口を開ければ、幸せになりたいと眠たいことを言うばかり。お前の幸せなんぞどうでもいいわい! お前のせいで俺はホストクラブのオーナーである京さんに追われる日々だ。さっさとチャイ子を片付けて、京さんに詫び入れて出直すんだ。

 そう考えたホストは一計を案じた。ネズミ―ランドで殺してしまおう。夢の国で幸せに眠るように死ぬことができれば本望だろうと。そこでソフトクリームの中に毒薬を仕込んだのである。


 えっ!?

――もしかして、アイツ、アイちゃんの母親を殺そうとしていた? 

 足を止める優子とプアール


 振り返り、全力でホストに駆け寄った。


「コイツでーす! こいつがこの人を毒殺しました!」

 優子とプアールはホストの手を取り叫んだ。


 かけつけた警察に連行されていくホスト。

「俺はただ自由になりたかっただけなんだ」

 ホストは、がっくり肩を落としながらつぶやいた。


「こいつは、お金があるって言っても口ばっかり……全くの無一文。その上に、夢の国で夢の世界に行きましょうって言う始末。俺は、まだ生きたかったんだ」

 お巡りさんは、ホストの手に手錠をかけた。

 ホストは天を見上げて叫んだ。

「お母ぁさーーーーん!」

「ただいま! 5時35分! 殺人の容疑であなたを逮捕します!」


 しかし、この世界の警察も真面目である。

 辺り一面火の海の状態で、毒殺犯一人を逮捕していくとは。

 その目の前には、この地獄の世界を作り出した張本人の変態魔王、もとい変態勇者がいるというのに。



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