お母さん! ただいま!(1)
「周りを燃やしてどうするのよ!」
「でも、俺たち助かっただろ!」
「一体何なのよあのビーム!」
「よくぞ聞いてくれた! あれは勇者の必殺技! オリハルコンビームって言ってな、優子が俺の体に打ち込んだオリハルコンドリルミサイルを、胃で消化した時に発生したエネルギーを放出したモノなんだ」
ヤドンが得意げに語った。
「さすが! 旦那様!」
オリハルコンドリルミサイルって、物語の最初に優子が、ドラゴンであったヤドンにぶち込んだミサイルの事ですか? あれって、体の中で爆発したのでは? いやいや、オリハルコンはとても固い金属。爆発ぐらいでは壊れません。と言うことは、今の今まで、ヤドンの体の中に残っていたってこと?
「もしかして、まだ、体の中に身際の破片が残っているってこと」
「そうだよ。ウ●コにして出したらもったいないだろ」
「……ミサイルをウ●コで出せるのもすごいですけど」
「だから、あと残り使えるの12回だけなんだ、大切にしないとな」
いやいや、この威力、あと12回も使ったら世界が亡ぶわ!
熱風吹きすさぶネズミ―ランド。
ゴンドラの中からアイちゃんがゆっくりと顔を出した。
一体何がおこったのか分からない様子である。
いや、ゾンビだから何がおこったのか、そもそも分かっていないか。
ああぁぁぁ
ゴンドラの中から出られないのか、アイちゃんが手を伸ばした。
「仕方ないわね」
優子がアイちゃんを抱き上げて、ゴンドラから担ぎ出す。
地面にアイちゃんを降ろした瞬間、アイちゃんは駆け出した。
そうか! 人ごみの中に母親を見つけたからなのだろうな。
飛びつくアイちゃん。
ガシガシとプアールの頭をかじっている。
アイちゃん、そんなにプアールの頭が好きなんだね。そうだね。カエルみたいなにおいがするもんね。
「アイ……アイなのね……」
一人の女が力なく歩み寄ってくる。
そう、アイちゃんの母親チャイ子であった。
目の前に、娘のアイがいる。
死んだと思っていたはずの娘がいる。
チャイ子の目は涙で潤んでいた。
アイに駆け寄るチャイ子の足は早まった。
プアールにかじりつくアイ抱き上げると、ギュッと抱きしめた。
優子の目にも涙が浮かんだ
「アイちゃん……やっと、お母さんのところに帰れたんだ」
これで、アイちゃんもお母さんと一緒に家に帰ることができる。
そう、次は私の番だ!
――私も必ず家に帰る!
そして、お母さんにただいまって言うんだ!
強く抱き合うチャイ子とアイちゃんを見ながら優子は決意した。
あぁぁぁぁ




