お前、勇者じゃなくて……(2)
「一体なんですの!」
リチルが乗るコボルボも、熱線が飛び交う地獄の中を走り抜けていた。
荒れ狂う熱線。
かすめ跳ぶ熱線をコボルボが蛇行し、よけていく。
その反動で、後部座席に乗るリチルの体が天井にぶつかった。
さすがの高級車コボルボであっても、さすがに揺れる。
というか、後部座席でもシートベルトは締めようね。
リチルの背後の窓から赤き熱線が至る方向に飛びかっているのが見えた。
コボルボのフロントガラスには地獄の光景が映っていた。
悲鳴をあげ逃げ惑う人々の影が、その熱線で溶け去った。
ネズミの如く逃げ惑うモンスターたちも、一瞬で黒焦げに。
生きとし生けるものが燃えていく。
そう、それはまさに火炎地獄。
地獄の魔王の襲来かと思えるほど、悲惨な状態。いや、いくら魔王でもここまでの非道は行うまい。
もしかしたら、観覧車の地下に設置した爆弾の爆発の方が、被害が少なかったのではないだろうか。いや、絶対にそうに違いない。
「ここまでやりますか! 普通!」
リチルは恨めしそうに、コボルボの後ろを振り返った。
その瞬間、リチルの視界が赤く染まった。
そう、ヤドンの熱線がコボルボをとらえたのだ。
瞬時に燃え上がるコボルボ。
燃料に引火。
爆発したコボルボは、木っ端微塵。
しかし、さす頑丈なコボルボ。コバルト合金で囲まれた後部座席は中の人間を守ることについては鉄壁の強さを誇っていた。
飛んでいく後部座席。
「なんですの……これじゃ、プアールの方がひどいじゃないですかぁぁぁぁぁ!」
真っ黒こげになりながらもリチルを乗せた後部座席は、どこか遠くに飛んで行ってしまったのだ。
この後、この炎は7日間燃え続けたという。まさに、火の7日間! そして、この世界ヤカンドレルの地図から、チバラギという街が消えたのであった。
後の人は口々に語る。
俗にいう『窮鼠変態に噛まれてビックバン!』事件である。
ヒュイィィィィン
やっと、ヤドンの目からオリハルコンビームが止まったようである。
「な! できただろ!」
バキ
優子のげんこつがヤドンの頭をクリーンヒットした。
「このおバカ! 周りを見なさいよ! 周りを!」
辺り一面は火の海であった。
まさに破壊の魔王!
ヤドン! これから、お前、勇者を名乗るのやめて魔王を名乗れ!
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【スキルを獲得しました】
氏名 ヤドン
年齢 902歳
職業 変態勇者?魔王?
レベル 99(回復中)
体力 199→200
力 180
魔力 150
知力 6
素早 40
耐久 50
器用 40
運 3
固有スキル オリハルコンビーーーム!(残弾12)
死亡回数 0
右手装備 性剣セ●クス・カリ・バー
左手装備 性剣セ●クス・カリ・バー
頭装備 ネズミの耳のカチューシャ(ムンネとおそろい♡)
上半身装備 勇者の鎧(自称)
下半身装備 ブリーフパンツ
靴装備 なし
攻撃力 156
守備力 171
所持金 102,999,892
パーティ 優子
婚約 ムンネ




