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苦い薬はよく効く薬だ(1)

 パイオハザーに続く道。優子が力なくひざまずいている。

 涙ぐんだ優子の目の前に、おまわりさんが近づいてきた。

 抱きかかえるアイちゃんの体がやけに冷たく感じる。


 なんで私だけがこんなことになるのよ……

 いつもいつも……

 私、関係ないじゃん……

 あぁ、これで私は殺人犯……

 取調室で身ぐるみはがされて、あれやこれやとされちゃうわけですね……

 そして、裁判所で涙ながらに訴えるの……冤罪ですって!

 でも、誰も信じてくれない……殺人犯とのヤジが飛ぶ!

 そして私は、絞首台の階段を昇っていく。

 こうして17歳という私の短い人生が終わりを告げるのね……


 優子の涙が頬をつたってアイちゃんの冷たい肌へと落ちていく。

 おまわりさんの手がアイちゃんの腕を掴もうとした。


 その瞬間、森の奥から叫び声がとどろいた。

「お待たせしましたぁァァぁァァぁァァ!」

 激しい砂埃をたて、一台のママチャリが駆けつける。

 キキキキィーーー!

 優子の横で急ブレーキ

 ママチャリはジャックナイフのように後輪を高く上空にあげたかと思うと、ドスンという音と共に後輪を地につけ停止した。

 そのママチャリの前では、おまわりさんが尻もちをつき、大きく目を見開いていた。


「ハァハァハァ……優子さん、ご注文の品お届けに参りました」

「遅いわよ……」

 プアールは逃げたんじゃなかったんだ。

 配達をしにmegazonに帰っていただけなのね。

 さすがは私の女神!

 優子は涙ぐんでいた。

「だって、優子さん、注文の品が多いんですよ。なんでこんなに頼んだんですか? 取りそろえる方の身にもなってくださいよ……本当に!」

「しょうがないでしょ! megazonネット! 1日5分なんだから! そんなことより、例のものを早く!」

「あっ! そうですね!……えっと……確か、この下に……あった! あった! 優子さんどうぞ!」

「サンキュー!」

 優子は受け取った蘇生薬を箱から出すと、そのキャップをくるりと回す。

 アイちゃんの口をもう一つの手で無理やりこじ開けると、ゴボッと小瓶を突っ込んだ。

 茶色のガラス越しに中の液体がコポコポという音を立てながら、そのカサをなくしていくのが分かる。

「優子さん……それ効くんですか?」

「大丈夫よ! トップページに載っていたんだから。確か腐った死体も、飲んだ瞬間に生き返る! 超強力蘇生薬だったかしら」

「腐った死体が生き返ったらどうなるんですかね」

「知らないわよ。腐ったおっさんにでもなるんじゃない」

「なんだ! それだったら電車の中に一杯いましたよ! みんな悪臭を漂わせて……」

「あんた、世のおじさま方を敵に回すわよ……」

「大丈夫ですよ! ここは異世界ですから!」

「私は一応、日本に帰る予定なんですけど……」


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