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担当女神は貧乏神(3)

 登校限界まであと30秒! 28、27、26、25


 優子はトーストをくわえ、スクールバックをひっつかみ廊下へと飛び出した。

 ドア越しに美しい女の声がさっきよりもはっきり聞こえた。

「かしこまりました」

 これって、ゲームの声?


 ただ、優子は立ち止まる余裕はなかった。

 階段を駆け下りると、そのまま玄関へレッツゴー!

 そして、通学用のスニーカーに足を突っ込んだかと思うと、玄関から飛び出した。


 広がる草原!

 澄み渡る青空!

 今日も晴れのようである。

 優子の口から咥えていたパンがポロリと落ちた。


 ここは一体どこなのよ……


 立ち尽くす優子の横顔を乾いた風がなでていく。


 なぜ草原……


 本来であれば、アスファルトの細い道路とブロック塀が見えないといけないはずであった。

 そう、玄関を出れば、黒い道路に沿って体を傾け勢いよく曲がり、そのまま下り坂を駆けおりる。

 そして、いつの時か、くだった先の交差点で、素敵な彼とぶつかるの。

 そのために、毎日毎日パンをくわえて走ってきたのだから。


 しかし、ココには下り坂などありゃしない。

 どこまでいってもただただ広い草原なのだ……


 優子は、夢だと思った。いや、夢だということにした。


 もう一度寝よ!


 そう決めると、くるっとドアの方向へと向きを変えた。

 しかし、そこにあるはずの家のドアがない。

 さっき開けたばかりの家のドアがない。

 優子の周りは全て草原であった。


「何なのよ! ここわぁ!!!!!!」


 優子は叫んだ。


 ただ、優子の叫び声は、広大な草原にむなしく散っていくだけだった。


 草原の向こうから小さな土ぼこりが見えた。

 それは徐々に徐々にと近づいてくる。


 土ぼこりが大きくなったかと思うと、その先端に、必死の形相をした女の顔が見て取れた。

 女は、ママチャリを漕いでいる。一生懸命にこいでいる。

 地平線が丸く見えるこのはるかな草原を、ママチャリを必死に漕いできたのであろう。


「お……お……お待たせ……しました。ハァハァハァ……」

 女はとぎれとぎれに息をしながら優子に挨拶をした。


「一体誰ですか……」


 優子はそのママチャリの女に恐る恐る声をかけた。まぁ、それ以外にすることもないしね。


「わ……わ……私は……女神……プアール……です。ハァハァハァ……」


「女神さま?」


「はい……ちょっとお水持ってないですかハァハァハァ……」


「お水は……パンならあるけど食べる?」


「いえ……パンはいいです。パンは……」

「あっそう……人の行為を無にして!」


「いやいや、パンは喉乾くでしょう……見てわかりません? いま、相当疲れているのが?」

「えっ? それって私に関係あるの?」


「大ありですよ! よりにもよって、こんな辺ぴなところに転移したんですか?」

「転移?」


「そうです。ここはmegazonのゲーム『女神と転生』の世界です。知らないんですか?」

「知らないわよ!」


「えーっ! それならどうやってこのゲームへの転生権利を得たんですか?」

「だから分からないわよ。私ゲームなんてしないし」


「まぁ、理由は分かりませんが、とにかく、ここは『女神と転生』というゲーム世界で、私があなたの担当女神です」

「担当女神?」


「はい、私プアールがあなたと共に、この『女神と転生』のクリアーを目指します」

「クリアーするとどうなるの?」


「megazonがなんでも願いを叶えてくれます」

「なんでも?」


「はい、世界中のイケメンとイチャイチャしたいという願いから、世界のトップアイドルになりたいという願いまでなんでもござれデス」


「ということは、家に帰りたいというのも……」


「当然です!」


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