アイちゃん(4)
優子は限られた5分で懸命にスマホをスワイプする。
タップに次ぐタップ。
次々と商品をカートに入れていく。
――時間がない……ここまでか!
すかさず会計に進む。
瞬間! ブラックアウト!
『一日使用量に達しました。現在、オフラインです。明日のご利用、お待ちしております megazonネット』
お決まりの文言が表示されている。
スマホを見つめる優子は動かない。
微動だにしない優子の手の中で、スマホだけがかすかに震えている。
間に合ったのか……
確かにお会計ボタンはタップした。
しかし、画面が消えるのとどっちが早かったのだろうか。
優子の手が震えていた。
その様子をおびえるような目でプアールが眺めていた。
プアールはアイちゃんの亡骸をそっと地面に置くと、すくっと立ち上がり、ママチャリへとまたがった。
「ちょっと、どこに行くのよ」
優子がプアールを呼び止めた。
「すぐ戻ってきますよ」
プアールは乾いた笑顔で答えた。
次の瞬間、怒涛の勢いでママチャリを漕ぎ、森の中へと駆け込んだ。
その後にはもうもうと立ち上る砂埃だけが残っていた。
その突然の出来事に呆然とする優子。
――もしかして……逃げた?
あの女、逃げおった! アイちゃんの亡骸をその場において、逃げおった!
はっと気づく優子
――もしかして、これはまずいんじゃない……この状況どう考えても、アイちゃんを殺したのは私たちじゃない……
優子はヤドンの方へと振り向いた。
しかし、すでに優子の背後にいたはずのヤドンはいない。
――あいつ! どこに行ったんだ!
辺りを懸命に見渡す優子の目は猟犬のように血走っていた。
隣町パイオハザーへとつづく一本道に小さくなりゆくヤドンの姿を見つけた。
ムンネと腕を組みラブラブのを装うヤドン。
その背中から、俺は無関係! あとはよろしくと言いているのが見て取れた。
――あいつらも逃げおった!
優子は、アイちゃんの亡骸に目を落す。
先ほどまで元気に笑っていたアイちゃんは、今は笑わない。
冷たくなっていくその体に握られたビニール袋は母に届くことはないのだろう。
優子は目頭を押さえた。
「私も逃げよ!」
ヤドンの後を追って走り出そうとした。
しかし、そう簡単には問屋は降ろさない。
大体こういう時に限って、誰かが現れるのである。
「きゃぁぁぁぁぁ! 人殺し!」
優子の背後から歩いてきたご婦人が声をあげた。
咄嗟に振り向く優子
しまった! 顔を見られた! このままでは、指名手配確実だ……どうする、私、どうする……
「いやだなぁ……死んでるわけないじゃないですか……寝てるだけですよ」
優子は咄嗟にアイちゃん体を抱き起す。
力が抜けたアイちゃんの体は、頭と腕をだらんと垂らす。
「どう見ても死んでるじゃない!」
まぁ、口から血を流して、上目を向いていれば、そう見えるかな……
優子は咄嗟にアイちゃんの腕を取り、勢い良く振ってみた。
「ワタシ! アイチャン! ワタシ! ゲンキヨ!」
腹話術でもしようと言うのか。
しかし、腹話術などできない優子の口は、パクパクと動いている。
「何言ってるの、あなたがしゃべっているじゃない!」
どう見ても優子がしゃべっているのは丸わかりであった。
――ばれたか……
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【アイちゃん、もしかして死んじゃった?】
氏名 アイちゃん
年齢 6歳
職業 小学1年生
レベル 3 (死亡中)
体力 40→0
力 8→0
魔力 1→0
知力 30→0
素早 5→0
耐久 5→0
器用 5→0
運 3→0
固有スキル 親孝行→親より先立つ親不孝
死亡回数 0→1
右手装備 ビニール袋
左手装備 なし
頭装備 ツインテール
上半身装備 赤い服
下半身装備 赤いスカート
靴装備 赤い靴
攻撃力 10→0
守備力 20→0
所持金 100
パーティ なし




