アイちゃん(1)
今日も、バカみたいに天気がいい。
土がむき出しの道を優子はとぼとぼと歩いていた。
左手にうっそうとした森が茂り、中から鳥たちの楽しげな愛のささやきが聞こえてくる。
優子の後ろにヤドンがぶつぶつ言いながら続いていた。
ヤドンの腕には、ムンネの腕が絡みつき、頬をこすりつけている。
本当にもう、うっとうしい愛のささやきを、ずーーっと呟きまくっていているのだ。
しかし、ムンネの装いはまるでハネムーン。
一体どこからその衣装を持ってきたのであろうか。
純白のウエディングドレスに身を包み。
後生大事にブーケまで握っている。
そして、ムンネの右手の薬指には黒く輝く婚約指輪があった。
いつヤドンはムンネに買い与えたというのであろうか?
というか、ヤドンは婚約指輪と言うものを知っていたのであろうか。
いや、やっぱりあいつはドラゴンだ。
そんなもの知らないと思う。
だって、その指輪……こんにゃくだもん。
森の中へと続く小さな脇道が優子の左側に一本伸びていた。
そして、真正面の道なりには、次の町パイオハザーが小さくその姿を見せている。
ヤドンは、ムンネの頭を邪魔そうに押しのけた。
「優子、今日の分のブリーフは、どうなった?」
「はぁ! スクールバックが使用停止なのは知っているでしょ!」
「いや、それとコレとは別問題だ!」
「いや、いや、いや。出せないもの出せないんだって」
「約束は約束だろ! そこを何とかするのがお前の役割じゃないのか」
何とかするってどないするんじや! megazonに詫びでも入れろと言うですかね! ホントに!
ムンネが助け舟を出した。
「旦那さまのブリーフなら、私が一生懸命に洗いますわ。どんなにカピカピになってようと、それを洗うのが妻の努め。すでに使い古したブリーフは、ここにありますわ」
ビニールの袋に詰められたヤドンの2枚のブリーフ。
そのすぼめた袋の口にムンネが鼻をくっつけると、一気に中の空気を吸い込んだ。
みるみるとビニール袋がしぼんでいく。
ムンネは思う。
1回しか使用していないブリーフも確かに悪くはない。
しかし、やはりブリーフは年季を重ねた方が断然いい……そう、私みたいに。
それも何度も何度も使っていくと、しっくりとした黄ばみを帯びていき、芳醇な香りを漂わせることだろう。
そう……それはまるで熟女!
遂に、ビニール袋が干からびたバナナのようにしわくちゃになって、ビローンと延びると、ムンネはやっとビニールから鼻を外し、顔をあげた。
「か・い・か・ん」
なぜか恍惚な表情を浮かべている。
ビニール袋を片手に、空を見上げるムンネは明らかにラリっていた。
優子とヤドンはラリっているムンネを見つめた。
おそらく、二人は同じことを考えていたのだろう。
この女……とてつもなく変態だ。
いやいや、ブリーフ姿の勇者とパンツをかかげる女子高生には言われたくはないだろう。
しかし、そのブリーフには何がついているのであろか?
もしかしたらドラゴンの体液には幻覚作用でもあるのであろうか。
エヘヘヘヘ
にやけるムンネの足に、背後から一人の6歳ほどのツインテールの少女がぶつかった。
尻もちをついた拍子に少女の赤いスカートがぱっとめくれると、可愛いうさぎのイラストがウィンクしているのが見えた。
その反動で少女の手から、紙袋が落ちる。
紙袋は、地面に落ちた衝撃で破れ、中に詰まっていた粒上の丸いものが散らばった。
色とりどりの錠剤。
こんなにたくさんどうするのであろうか?
よほどの重病人?
それとも、まさか! この少女、ヤクの売人なのであろうか?
ムンネもまた、ラリっていた最中に、急にぶつけられたため、手に持つビニール袋を落してしまった。
ビニール袋もまた、地面に落ちるとともに、中身のブリーフを外にこぼしていた。
2枚のブリーフ。
しかし、このブリーフをどうしようと言うのであろうか?
よほどの変態?
それとも、まさか! この女、ココから子種を取り出すつもりなのか?
もう、どうでもいいわ!
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【婚約おめでとう!】
氏名 ムンネディカ
年齢 35歳
職業 変態魔女
レベル 88
体力 104,007
力 501
魔力 857
知力 22
素早 400
耐久 400
器用 60
運 100
固有スキル 婚活!→婚約!
死亡回数 0
右手装備 こんにゃく指輪
左手装備 ブーケ
頭装備 ティアラ
上半身装備 ウェディングドレス
下半身装備 ウェディングドレス
靴装備 白いヒール
攻撃力 552
守備力 431
所持金 2,530
婚約 ヤドン




