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オタンコナッシー(2)

 周囲の町の住人たちの視線が一斉にヤドンに向いた。いや、ある程度はすでに変態ヤドンに目を向けてはいたのだけど、それ以外の人々の視線もヤドンへと集まったのだ。


 視線の先には、天空の太陽に向けて純白のブリーフを広げ仁王立ちのヤドンがいた。


 もう、何なのこの光景!

 優子は、早くこの場から離れたいと思っていたはずである。

 しかし、優子には、それができなかった。

 なぜなら、ヤドンの近くにいたアラサーの女の人が涙を流しながら、膝まづいたのである。

 ただそれだけで? いやいや、その変な行動をしたのは、その女の人、一人だけではなかったのだ。

 女に呼応するかのように周囲の人々が、次々とひざまずいていく。

 ヤドンの周りには、膝まづいた人々で大きな円ができていた。

 人々が静かに厳かに首を垂れる先には、天にブリーフをかかげるヤドンの神々しい姿。


 なにこれ?


 ヤドンの横で周囲をきょろきょろと見る優子には、この状況が全く訳が分からない……

 この町は、もしかしたら変態をあがめる町なのかしら?

 ちょっとまずくない……このままだと、私、目立たないじゃない!

 キラキラの女子高生は商品価値が低いっていうの……そんなことはない! 女子高生の価値はプライスレス!

 私も何かした方がいいのかしら?

 女子高生の変態ならヤドンを超えられるかもしれない。


 優子はおもむろにスカートの中に手を突っ込むと、自分の下着をずり降ろし始めた。

 そして、足をあげ、パンツを掴むと。

 天に掲げる。


「女子高生の生パーーーーン!」


 どうだと言わんばかりに、優子はほほ笑んでいた。

 脱ぎたててである。

 その筋に売れば、おそらく数万の価値はするだろう。

 まっさらなブリーフなどその足元にも及ばない。

 優子は自分の勝利を確信した。

 ヤドン……ごめんね。あぁ、私って、罪深い女。


 自分に酔いしれている優子の後頭部に何かが当たった。

 それは次第に数を増してくる。

 優子は自分の額に手を当てた。

 手にはべったりと赤い血が。


「なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」


 どうやら、投げられた石で、額にケガを負ったようである。

 優子めがけて石が飛ぶ。

 四方八方から石が飛ぶ。


「この変態女!」

「勇者様の神との交信を邪魔するな!」

「この年増! パンツは女子中学生までだ!」

 いわれもない罵詈雑言が、優子を襲う。


 なんでよ! なんで、私の生パンはダメなのよ。

 高校生はダメなの、中学生じゃないと。

 やっぱり、ここは変態の町なのね……

 優子は力なくその場に崩れ落ちた。

「だけど、涙が出ちゃう、女の子だもん……」

 優子の頬を一筋涙が伝っていく。


 そんな優子を無視するかのように、一人の老人がヤドンの前へと歩み寄ってきた。

 ヤドンの前で膝まづくと、声をかけた。


「勇者様……天の神はなんと申されておりますでしょうか?」


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